表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
161/402

151話 宮廷使用人

「2つの鐘が鳴ったら、登城するがよい」


クリスの言葉を思い出す、鐘の音が2つ。

仕事の時間だと思い、私は廊下に繋がる部屋の扉を見る。


「ここ、4階でしたねぇ」


私の呟きに、壁は相変わらず、沈黙を返してくる。

階段しかない建築様式の為、上の階ほど不人気なのだ。


そして、例外なく新入りの使用人は、上の階へと回される。


「まあ、私には関係ないですけどね」


窓に足を掛けて、私は四階から飛び降りた。

問題なく着地すると同時に、辺りを見回す。


…誰にも、見られてないようですね。


一昨日、登城しようとしていた使用人に見られ、驚かれたのだ。


どこか浮世離れしたその男性は、空と私を交互に見ながら、天使?と不思議そうな顔で、呟いていた。


そんな事を思い出しながら、王城へ続く道を歩く。


旧貴族街の道には、同じように登城する使用人達が歩いていた。


使用人の格好に似合わず、気品溢れる者。

逆に、庶民を感じさせる者と様々だ。


私はそれらの姿を眺めながら、王宮での一幕を思い出していた。


……

………


王女殿下の部屋


「あの者は、宮中伯の二女であるな」


扉の外に立つ女兵士の見た目の違和感を、クリスに問いかけた答えである。


「先程、紅茶を注いだ給仕も、貴族の娘であるぞ?」


首を傾げる私の反応を確かめるように、クリスは言う。


「使用人ですよね?」

「当たり前であろう?」


認識が違うのか、どうにも話が噛み合わない。


「使用人とは、庶民がつく職業ではないのです?」

「出自のわからぬ者が、王宮で働くのか?」


今度は逆にクリスの方が、首を傾げた。


「そういう国もあるのかもしれぬが、我が国では、宮廷使用人は名誉ある職業なのだ」


貴族の子女と才能の高い国民が、学ぶ場所であり、旧貴族街へ住む権利が与えられる憧れの職場らしい。


ちなみに王都エルムには、第三城壁内に住む国民と、その外に住む市民で区別されている。


国民から、宮中伯に破格の出世をする者もいれば、やらかして貴族から国民へ、転落する者もいるそうだ。


そして、国民がやらかせば、市民へと転落する。


「もっとも、物好きな貴族の中には、自分から国民へなる者もいるがな」

「なるほど」


ただのメイドだと思って、軽口を叩いたら伯爵様の娘さんという事が、普通にあり得るのか。


気をつけようと思いつつ、私って道化師らしいから別に許されるのかな?と、妄想するのであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ