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 14話 銀貨の価値 後編 改稿

交易都市クーヨン


外周城壁が四角く囲い、その内側の城壁は円を描くように一周している。

内周城壁には東西南北と4つの門があり、南門から伸びるメインストリートは、商店街となっていた。


北門から伸びる大通りは、騎士や兵士の詰所であり、東西は住宅街が広がっている。

そして、俺は四つの大通りが交差する中心部の広場にいた。


広場には噴水があり、憩いの場になっているようで、多くの人々で賑わっている。

そんな人々の喧騒の中、芝生に座りこむと空を見上げた。


そこには、空高く舞う鳥の群れの姿。


…銅貨はあと95枚、まだまだ余裕があるな。


鳥達は城壁など無いかの如く、優雅に飛び回っていた。


「…俺は何をやってるんだろうな」


右手を空に掲げる。

日光に照らされた奴隷紋が、青く輝いていた。


エリー様に買われてから、一ヶ月と少し。

俺は自分の居場所を守る為、環境を受け入れた。

この世界に来たばかりの孤独感と、飢え死にしそうな絶望はもう御免だからだ。


「…悪くはないんだけどな」


彼女は深く干渉してこないし、薄着で寝る無防備なご主人様を起こす日課は、ある意味ご褒美のようなものだ。


——エリー様、胸が…


——ああ、そう


はだけた乳房を気にする事もなく、ベッドから起き上がると、俺を見つめるのである。


…悪くはない。


ただあの鳥達を見ていると、自由に羽ばたきたくなるのだ。


「…ああ」


力が欲しいのだ。

…この世界を駆けれる力が。


瞳を閉じる。


脳裏に浮かぶのは、城壁のない世界だ。

あの時見た景色なのだ。


「…まずは、この都市に慣れないとな」


ただ流されて過ごす為の銀貨一枚じゃない。

いつか自由になる為の知識に投資するのだ。


そう覚悟を決めると、芝生から立ち上がる。

空を見上げれば、鳥達の姿はなく、ただ青空だけが広がっていた。


「帰るか…」


そう思い、最後に景色を眺めるように周囲を見渡した時だった。

広場の一角に、他よりも高く豪華な建物が目に入った。

旗がなびいており、紋章が描かれている。


「…なんだ?」


それが気になり、建物の入口へと向かう。


——月乃亭


入口には、看板が掲げられている。

宿屋のようだと思いながら、興味本位で扉を開く。


中に入ると広々としたロビーがあり、赤い絨毯が床に敷かれていた。

そんな広間の中央に立つ受付嬢は、笑顔で声をかけてくる。


「どちらの貴族様の遣いでしょうか?」


赤髪のショートヘアーが、良く似合う美女だった。

20代前半に見えるその容姿は、どこか幼さを残しつつも、大人の魅力を感じさせる。


その落ち着いた物腰からは20代の若々しさと同時に、大人の艶やかさを感じたのだった。

そんな女性が丁寧にお辞儀をする。

 

その仕草一つ一つも、気品に満ち溢れていた。

俺もそれに合わせるように、小さく会釈をする。


さて…。


どうやって誤解を解こうかと、思案するのであった。


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