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123話 東へ

辺りが薄暗くなってきた頃、ルルが荷馬車を引き連れて戻ってきた。


商人が使わなくなった馬車を買い取ったのか、年季の入った外観に、雨露を避ける程度の屋根がついている。


ただ、その割に荷馬車を引く馬は、立派な体格をしていた。


「馬車に似合わない良い馬ですね?」

「今日、仕入れたばかりみたいなのです」


思わずこぼした疑問に、ルルが答える。


「準備はできました。どうします?」


ルルが、王女殿下に問いかけた。


どうします?とは、このまま夜道を旅立つか、一度休んで旅立つかという事なのだろう。


「騎士団と、鉢合わせたくないのでな。このまま行こう」


そう言うと王女殿下は荷台に手をかけ、優雅に飛び乗った。


そして、それに続くように眠そうに目をこするフィーナが、不器用な動作で、少し背の高い荷台に身体を乗せる。


私は、長く世話になった傭兵ギルドの建物を、振り返った。


入口には、マキナが立っていた。


お互いに何も言わず、ただ振り上げた手と手が別れを示す。


……

………


夜の闇に静まり返っていた街道に、ガタガタと手入れのされていない荷馬車が、進む。


御者の席にはルルが座り、どこで身につけたのか、器用に馬を操っている。


布の屋根で覆われた荷台には、私と王女殿下とフィーナが、思い思いの場所に座っていた。


「ルルは自己紹介から、始めるのが良いと提案します」


静寂に耐えかねたルルが、口を開いた。

暇そうに視線を泳がせていたフィーナが、うなづく。


「では、改めてクリスティーナ・エルム・フォン・アインザームである」

「ただのルルです」

「…フィーナ」

「アリスかな?」


それぞれが名を名乗ると、眠そうなフィーナに王女殿下は、


「フィーナ殿は、何か雰囲気が違うように感じられるが?」

「それは話すと長くなりますが、アレはフィーナに憑いている守護霊みたいなものですよ」

「…くーちゃんは、フィーナを守ってくれる」


悪霊のような気もするがとは、フィーナの前では言わない。


「あの者は、くーちゃんと言うのか」


私の説明に疑問を顔に浮かべながら、王女殿下は呟いた。


「では、私の事はクリスと呼ぶがよい」

「道中、王女様と呼ぶのは良くないと、ルルは同意します」

「…クリスちゃん」


フィーナが確認するように呟くと、王女殿下は、とても嬉しそうな笑顔を見せた。


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