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120話 王女殿下と奴隷紋

闘技場からの帰り道


「そなたは報酬に、何を望む?」


王女殿下の何気ない一言に、頭を悩ます。


傭兵らしく単純な金銭というのも、面白みがない。

なぜなら、金銭など王女殿下相手でなくても稼げるのだ。


王族からしか得られない、特別なもの。

そんな打算的な事を考えていると、


「そなたは、無欲であるのか?」

「いえ、そんな事はありませんよ」


もっとギリギリのとんでもない要求をしようと考えていたとは言えず、苦笑いで返す。


「そうですね。私に相応しい価値があるものを、王女殿下が与えるというのは、いかがですか?」


とは言うものの思いつかなかったので、相手に選択権を投げてみた。


「相応しい価値であるか…」


王女殿下は足を止めると、こちらを見て思慮にふける。


「ならば、私のものになるがよい」


闘技場の時に見せたように目を輝かせて、怪しい言葉を放つ。


…あなた、私のものになりなさい…


遠い昔のマリオンの言葉が、頭をよぎる。


「やはり貴族も王族も、変態が多いようですね…」


思わず後退り、本音が漏れる。


「そなたは貴族や王族に、何か重大な偏見を持っているようだな?」

「ええ、昔、貴族様の趣向を少し垣間見まして…」


そんな私の言葉に、何か気づいたようで、


「ああ、その紋様は、アルマ王国の奴隷である証であったか」

「この紋様を、知っているのです?」

「我が国には最近、アルマ王国から人が流れてくるようになったのでな。奴隷紋専用の魔術師を、紹介された事がある」


なるほどと考えていると、


「そなた、騎士物語を知らぬのか?」

「どの騎士物語か、わからないのですが?」


私の言葉に、王女殿下はショックを受けたようで、


「我が国で騎士物語と言えば、誰もが知っているが、そうかそうであったか」


何やら一人で納得し、


「先程の、私のものになるがよいというセリフは、騎士物語で有名な一文なのだ。私の騎士になるがよいという意味なのだぞ?」


いつか言ってみたいと思っていたセリフなのに、通じなかったのかと、いじける王女殿下。


「文化の違いですかね。王女殿下の性癖を、疑いましたよ」

「同性に興味を持つ、歪んだ性癖を持ち合わせてはいないぞ」


ああ、やはり誤解はそこから始まるのですねと思い、いつもの一言を告げるのであった。


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