115話 受付嬢と王女殿下
呑気なアンナを置いて、城門の方へと進む。
傭兵達は、面倒ごとは御免とばかりに、城門から距離を離していっていた。
灰色のローブの人が、騎馬兵に追われているのですかね?
20人ほどの騎馬兵は、城門の先まで迫ってきていた。
だが、それより早く灰色のローブは城門を駆け抜けると、辺りを見渡し、私の方へと駆け寄ってきた。
なぜこちらに来る?という疑問は、すぐに解かれる。
呑気に野次馬をしていたのは、私だけになっていたのだ。
さすが傭兵達、逃げ足も早いようで…。
「巻き込んですまぬが、傭兵ギルドはどこであろうか?」
よく透き通った声は、どことなく気品と威厳をまとっていた。
そして、同時に女性である事に気づき、深く被ったローブの奥と目が合う。
吸い込まれそうなくらい、美しい顔立ちであった。
初めてフィーナを見た時以上の衝撃に、呆気にとられていると、
「殿下、やっと追いつきましたよ」
私達は陣形を組んだ騎馬兵に、囲まれてしまっていた。
「巻き込んで、すまない」
馬から降りる騎士達を見て、殿下と呼ばれた女性は私に詫びる。
「問題ありませんよ。お探しの傭兵ギルドなら、あっちなんですけど、今日は休日です」
「そうであるか…いや、問題しかないと思うのだが?」
そう言って、騎士の方を見る。
「そこの町娘、邪魔をすれば斬るぞ」
帯剣している私を見て、騎士が剣を抜いた。
後ろでアンナが、私の名を叫ぶ。
「面白い冗談ですね?」
私は久々に全力で地を蹴り、視線の合わない騎士の首筋に抜刀した。
…ガチン!?
「なっ!?」
首筋に当たった剣が、光に弾かれて跳ね返る。
思わず声をあげてしまった。
だが、衝撃を吸収できなかったのか、光は砕かれたように飛び散ると同時に、騎士は城門の壁へと吹き飛ぶ。
「なんだと!?」
そして、一瞬の間を置いて、視界から消えた私と仲間が吹き飛んだ状況に、騎士達は驚きの声をあげた。
「今のは…魔法でしょうか?」
私の質問に、騎士達は困惑の表情を浮かべる。
それを見て、もう一つの可能性が頭に浮かんだ時、私と騎士達の間に、眩しい光の塊が現れた。
光の塊は、すぐに人型に形を変えると、
「警告シマス…双方争イヲ停止シナサイ」
抑揚のない声が、人型から放たれる。
同時にこの場にいる全ての者が、光の蔓に身体を拘束された。
「くーちゃんみたいな魔法を使いますね」
人型に語りかけるが、返事はない。
だが、
「原理は一緒じゃな。それより魂魄魔法の応用で、このようなものを作るとは興味深いの」
振り向くと、そこには六芒星の灯るクロードがいた。




