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101話 外伝 王女と旅立ち

ひきこもりエルフの都市国家


滅多に開く事のないその外周城壁の正門が、重い扉を開ける。


総勢200名のハーフエルフの騎士団が、陣形を整えながら西へと進軍していた。


その中央には、王女殿下を乗せた1台の馬車。

私は物思いにふけながら、窓の外を眺めていた。


……

………


数日前


政治の間へと呼ばれた私は、事前会議をしていた部屋へと入る。


前回とは違い部屋の中には、父上である国王と兄上である第一王子、第二王子、そして筆頭宮中伯のみであった。


事の重要性を即座に理解し、椅子へと座る。


「西の都市国家ラクバールへ、行ってもらう」


父上である国王が、私へと告げた。

兄上達は、何も言わない。


つまり決定事項…という事なのであろうか。


「王よ、もう少し詳細に聞いても宜しいか?」


私の言葉に、国王は筆頭宮中伯に目配せをする。


「ガレオン子爵の軍が、砂漠の国へと進軍中との事は、王女殿下もご存知のとおりかと思います。かの国は砂の王が徘徊する砂漠の中にある為、詳細な情報収集は非常に難しいのですが、判明した時には雌雄は決しているでありましょう」


筆頭宮中伯の言葉に、私は黙ってうなづく。


「ガレオン子爵、ひいてはアルマ王国が敗れれば良し、そうでなければ…」

「こちらに、進路を向けるか」


私の言葉に、筆頭宮中伯はうなづいた。


「もちろん、更に北に進軍する可能性もございますが、それが判明する時には、手を打てるようにしておきたいかと」

「そうであろうな」


我らの種族に、降伏という選択肢はない。

僅かな可能性さえあれば、そこに向かって戦うまでなのだ。


「さて、そこで西の都市国家ラクバールでございますが、ここより西に広がる都市国家の中でも、いくつもの従属都市国家を持つ、人族の国でございます」


筆頭宮中伯は、旧ゼロス同盟の地図を広げ、示す。

ここから海岸沿いに北西へと向かった、中央に位置する都市国家だ。


都市国家ラクバールより南は、数多くの都市国家が広がっているが、東…つまり我が都市国家方面の海岸沿いは、ラクバールの勢力圏が広がっていた。


ラクバールより北は、我らが眷属であるエルフの都市国家が広がっている。


「ここ2年の間で、外交官が何度か行き来しましたが、彼らは我が種族に好意的な者もおりまして…」


そこまで言って、筆頭宮中伯の表情が曇る。


「なるほど。私に、嫁いでこいと言うのだな?」

「いえ、王女殿下がお越しになれば、より友好的な関係を結べるだろうと…」


戦場に出る事も許されず、政治の道具になれと言われた気がして、思わず怒気がこもる。


筆頭宮中伯が、困ったように国王へと視線を向けると、


「何百年も途絶えていた、王家の女の務めを果たせと申しておるのだ、我が娘よ」


父上が、静かに口を開いた。


「父上、北のエルフの都市国家はいかがか?」


第一王子が、地図を指差し、疑問を投げかける。

どうやら兄上も、この話は初耳だったらしい。


「殿下、エルフの国がこちらに兵を向けるには、ラクバールを筆頭に人族の都市国家を抜かねばなりませぬ。またエルフの国は、旧ゼロス同盟を含めて争いには、まったく興味がないようでして…」


外交を試みた事を、筆頭宮中伯が告げた。


「ここに傭兵の街とあるが、どうなんだい?」


第二王子が、のんびりとした口調で、都市国家ラクバールの少し西に位置する場所を指す。


「各地に派遣しているようで、常駐する兵力の把握が難しいのと、主軍と考えるには戦力不足のようです」


筆頭宮中伯の説明に、兄上達が同情した目を私に向けた。


……

………


騎士達に囲まれた馬車は進む。

窓の外には、遠くに村が見えていた。


「あれは、人族の村か?」


憂鬱な気分の私は、気晴らしになるかと従者に問いかける。


「あれはハーフエルフの村です。その…都市で何かしら不手際をした者が、追放されて作った村かと」 「つまらぬ事を聞いたな」


王家の庇護を、受けれない者達がいるという事なのだ。


王家の女の務めという言葉が、あの情景と共に何度も繰り返される。


フレイラは自分を自由な剣士だと、満足そうに答えていた。


「戦場で死ねると、考えていたのだがな…」


私の憂鬱に、答える者はいなかった。


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