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遺されたメッセージ

あの霧雨の日から数週間後、「瑠麗さん」の番号から着信があった。嫌な予感はあったが、後悔もしたくなかったので大きく深呼吸して受話器をとった。


「もしもし、溝口です」


電話主、多分彼女の母だろう――はひどく混乱していて話が飛び飛びだったが、短くまとめると

「瑠麗の遺書が見つかった。そこにあなた宛ての手紙もあったから今から家に来てほしい」 というものだった。


外は既にほの暗くなっていたが、「急な用事ができた」と家族にいって家を飛び出した。さっき聞いた道筋を頭に描きながらひたすら走る。着いたころには日もとっぷり暮れていた。扉を開けるとげっそりと痩せたように見える両親に出迎えられ、仏壇に案内された。

「ごめんね、何回も何回も呼び出して。」

「いや、いいんです。俺も瑠麗さんのことちゃんと知りたいですから。」

「それで、これがあなた宛ての手紙。どうぞ、読んで。」


俺は恐る恐る封のされていない封筒を開き、中の紙を取り出した。


「溝口くん、久しぶり。お話できるのがこれで最後なのは、本当にごめんなさい。私はこれから飛び降ります。たぶん死ぬと思う。私なりに他に方法がないか考えてみたけど、もう手遅れだった。一番みんなが幸せになるにはこうするしかなかったから。もっとお話したかったし、あの海岸にいたかった。それは私も同じ気持ち。私のことは忘れていいから、それだけは忘れないで、これから幸せに生きてください。じゃあ、さようなら。」


読み終わっても涙が出なかった、いや、出せなかった。俺の中で瑠麗は生きたままだから。あの海岸でずっと微笑んでいるから。


ちょうど線香が切れていたらしく、母親は「ちょっと待っててね」と言ってその場を離れた。机の上には俺が読んだ遺書と…あともう一つ。

「まさか、な…」


結論から言おう。

そのまさかだったのだ。

そう、彼女の両親宛ての遺書が入っていた。


「お父さん、お母さん。迷惑と心配ばかりかけてごめんなさい。こうするしかなかったの。何か方法がないか一生懸命考えたけど、だめだった。全部話すことは出来ないけど、伝えられることは全部書くから読んで欲しい。でも一つお願いがあるんだ。

ここから後は他の人に見せないで。理由は読んで貰えばわかると思う。」


勿論瑠麗の意向に添わないことはわかっている。でも読まずにはいられなかった。

そして俺は、無機質な便箋をぺらり、とめくった。

次回で完結です!遅れてしまい申し訳ありません。

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