断たれた糸
あの日から、2ヶ月が経った。
瑠麗は海岸に姿を現さないし、クラスでもぼーっとしていることが多い。ずっと、自らの双子を探しているのだろう。
それは重々承知なのだが、どうしても寂しい。
「別れたい」
たった一言が、僕と瑠麗を細く細く繋いでいた糸をぷつりと切ってしまったようで。
もう僕は瑠麗の近くにいることが許されないようで。
何ともいえない喪失感をここ最近、抱いていた。
その後に残るのは、後悔だ。
あの日、最後にもう少し気の利いたことを言ってあげられれば良かっただろうか。
でも、それに疲れているのは誰の目にも明らかだ。何とかしてあげたい。そう思い、できることは協力したいと思うようになった。
思い切って、昼休みベンチでぼーっとしている瑠麗に話しかけてみた。
「瑠麗さん、疲れてない?」
「そんなことないよ。大丈夫」
「またそうやって言うんだから、全然大丈夫じゃないくせに…」
「あ、おんなじこと前言ってた」
瑠麗はくすくすと笑った。
そうだ、この顔が見たかったんだ。
「何か協力できることがあるなら何でも言ってよ。頼って欲しい」
「ううん、これは私一人で頑張るから。私が見つけなきゃいけない…そんな感じがするの」
「わかった。全力で応援するよ。頑張ってね」
「ありがとう。じゃあね」
そう言って、瑠麗はベンチから立ち去った。
でも、僕はまだ知らなかった。
彼女の気持ちを、或いは彼女自身も気づいていなかったもののじわじわと詰まりつつあった彼女の限界を。
多分僕と話した頃の彼女は相当思い詰めていたのだろう。少なくとも今考えればそうだと思う。
まさか僕の元カノが、箱崎瑠麗が飛び降り自殺するなんて。
誰も思っていなかった。