Significance
いつもの海岸に箱崎さん…いや、瑠麗がいた。
「いいかげん名前で呼んでよ」
と言われたばっかりだったから、気をつけないといけない。
瑠麗はものすごく(本当に!)かわいいし気配りもできる完璧な人間だから、なぜ今カップルとして成立しているのかは正直言って自分にもよくわからない。
さらに瑠麗は時折、どこかをぼんやり見つめるような目をする。何を見ているのか、何を考えているかは瑠麗しか知らない。でも僕はときどきそれを確かめたくて聞いてしまう時がある。今だって…
「どした?何か考え事?」
返事はわかりきっている。
「ううん、何でもない。」
こちらとしてはさらに聞きたくなるのだが、根ほり葉ほり聞くのも良くない。考えた挙げ句、
「またそうやって言うんだから、全然大丈夫じゃないくせに…」
と言ってみた。
瑠麗は取り繕うようにわたわたしながら、
「そ、そんなことないの!やっぱりキミってよくわかんないよ。」
「そうかなぁ…」ついため息が出てしまう。
瑠麗の一挙手一投足を見ているのが本当に好きだ。可愛いのはもちろんのこと、完璧に見えて意外とおっちょこちょいなところも含めて全部好きだ。でもそれが瑠麗の全てか、と言われるとわからない。誰にも見せたくない何かがあるのかもしれない、いやあるだろう。それに踏み込むのは彼氏という立場でやっていいのだろうか?
不意に瑠麗が、
「海、きれいだね」
返事を考える間もなく、
「ああ」と言った。
「…ねえ、キミは、私が死んだら泣いてくれる?」
なんてことを聞くんだ。答えは決まっている。絶対に、瑠麗だけは失いたくない。
「…泣くよ」
すかさず瑠麗は、
「本当?」と言ってきた。
「嘘はつかない」
瑠麗はほっとしたような表情で、
「…そっか」
とつぶやいた。