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第1話 休載宣言したらヒロインが降臨してきました

短編を長編化しました。

当分出すつもりはなかったのですが、『理乃ちゃんが可愛い第7話』のためだけに上げることにしました。

ですのでそこまでは続けて更新します。

『氷河三世紀』

それが俺、高校2年生である西条輝之のネット小説での作者名だ。


ネット小説は楽しい。

読むは好きだが書くのはもっと好きだ。


しかしありきたりじゃないものを目指しすぎたせいか、ちょいちょいエロいせいか人気は今一つ。


ランキングには入っても書籍化しないくらいのレベルだ。



そして最近は連載を増やしすぎた。


理由は思い付いたらすぐ書いて投稿してしまうせい。

だってネタを暖めておいたら誰かが先に同じようなネタを書くかもしれないからね。


「どうしよう?どれか休載すべきかな?」


でも減らすどころか短編にも『連載希望!』なんて感想来ているし。


うーん

うーん

うーん


とりあえず頭を空にしてみよう。


そう思ってとりあえず全ての連載小説の後書きにこう書いた。


『しばらく休載します』


それが事件の始まりだった。




「西条輝之さんは居られませんか?」

授業が終わって帰る支度をしていた俺が教室の入り口を見るとそこには同学年の井上亜紀さんが居た。


「あ、はい」

「ちょっと用事があるので来てもらえますか?」


ザワザワ


「『完璧な女王パーフェクトクイーン』井上さんが西条に用事?」

「まさか告白?」

「いや、あり得んだろ。学校一の美少女と陰キャの西条だぞ」


そんな声を聞きながら井上さんのあとに付いていく。



着いた場所は屋上。


これは本当に告白か?!

それは無いな。話したこともないし。


あるいは罰ゲームとかで俺に無理矢理告白させられるとか?


あとは…思い付かないけど、小説のネタになるなら良し!


さあ、何でもこい!


「あのね、実はお願いがあるの」


すごく可愛らしい表情でそう言う井上さん。


お願いって何だろう?

彼女は勉強はトップクラスで運動もできるし人望もある。


美少女で何でも出来るところからついた渾名が『完璧な女王パーフェクトクイーン』。


成績普通で部活にも入っていなくて人望もない俺に頼み事って何だろ?



「早く連載を再開してほしいの!」


は?


「『クラスメイトの美少女が実はポンコツなので俺が毎日通いづまをしています』が休載になったでしょう?あのまま終わる気なの?お願いだから再開して更新して!」


びっくりした。


いったいどこで俺が作者とわかったのだろうか?


この学校には友達が居ないせいもあるけど、そういう話って学校でしたこと無いし、学校で執筆したことも無いけどな。


「どうして俺が氷河三世紀って知ってるの?」

「どうしてって、わからないの?私よ、私!」

「井上さんだよね?」

「理乃ちゃんだよ!」


はあ?!


理乃は『クラスメイトの美少女が実はポンコツなので俺が毎日通いづまをしています』通称『ポンづま』のヒロインの名前だ。


まさか俺の小説に感情移入しすぎて、自分が小説のヒロインと錯覚してる?


それはそれで嬉しいけど、俺の正体を知っている理由にはならないよな。


「じゃあ私が理乃だと証明するために理乃らしいことをするね」

「え?」

「また助けてもらっちゃったね。じゃあ、お礼に耳掃除しようか?ここに頭を乗せて」


屋上のベンチに座って膝の上を勧めてくる井上さん。


「はやくう」


その台詞だけでなく表情や仕草はまさに俺が想像する理乃のものだった。

読者なのにそんなに理乃になりきってくれるなんて…あれ?


くるくるくる


理乃が髪の毛を指でくるくるさせている。


これって…まだ公開していない『設定資料』の中の理乃のくせ?!


「理乃、お姉ちゃんの名前は?」

「由乃だよ」


それも公開していない設定資料の内容だ。

すると…


「本物の理乃?!」

「だからそう言ってるのに」


ぷうと膨れっ面をする理乃が可愛すぎる。

いや、井上さんなんだけど。






理乃の話によれば、井上さんは『ポンづま』が大好きすぎて作品のヒロインにすごく感情移入していたらしく、理乃がその体に乗り移ることができるようになったらしい。


「どうしてまた急に?」

「知らない。でも、これで直接お願いできるよね!」

「連載再開のこと?」

「うん!」

「もう少し待ってくれるかな?今、どれを優先的に連載していくかとか、そのペースを決めている所なんだ」

「輝之は私の事嫌いなの?」


そ、そんな上目遣いで言われるとドキドキするじゃないか!


「そ、それにネタも探したいし」

「あのね、この体の井上亜紀さんって、理乃みたいになりたくて忘れ物しようとしてるのよ」


そこまで感情移入してくれるとか嬉しいを通り越して怖くなってくるな。


「でもね、勇気がなくて忘れ物ができないの」


そりゃあ『完璧な女王(パーフェクトクイーン)』の井上さんが忘れ物して怒られるとかあり得ないだろうしな。


「だからね、はいこれ」


手渡されたのは生徒手帳。


「明日持ち物検査あるから、その前にこの子に返してあげてね」

「待て!急に俺が返したら盗んだみたいじゃないか!」

「落ちていて拾ったとか言えばいいよね」

「いや、それでもだな」

「あっ…そろそろ時間みたい。じゃあね」


時間?じゃあね?


すっと目を閉じた理乃はゆっくり目を開くと、目の前に居る俺を見て凄い勢いで後ずさった。


「ど、どうして目の前に男の人が?!それにここ屋上?いつの間に来たの?」

「もしかして元に戻ったのか」

「あっ!それ私の生徒手帳!」


何でわかるんだ?

あっ、名前が見えたのか。

いい視力しているんだな。


「どうして私の生徒手帳をあなたが持っているの?」


俺は自分の脳みそをフル回転させた。

即興話とか得意な方だからこういう時の言い訳は造作もない。


「何言ってるんだよ。井上さんの生徒手帳を拾ったから放課後に俺の教室に取りに来てって言ったら、屋上でこっそり渡してほしいって言ったんじゃないか」

「え?そんな覚えないけど…」

「じゃあ、うちのクラスの誰かに聞いたら?井上さんが俺を呼びに来たんだよ」

「だって覚えていないし…そんな素敵なことが(・・・・・・)あったら忘れるわけ無いし…」


ぴろん


テキストチャットのCHAIN(チェイン)の通知音がしてスマホを取り出す井上さん。


「うそ?教室に私が誘いに来たって?!」


どうやら俺のクラスにいる彼女の友人から『急に彼を誘ってどうしたの?』とでも聞かれたのだろう。

ナイスタイミングだ。


「ごめんね、本当にみたい。でも、どうして忘れちゃったんだろ」

「とりあえずこれ返すね」

「うん、ありがとう。そ、それとね。お願いがあるの」


まるでさっきの理乃のような表情でお願いしてくる井上さん。


「落し物をしたことは誰にも言わないで。そんなそそっかしい人ってみんなに思われたくないの」


これって小説内の理乃のセリフ


『忘れ物をしたことは誰にも言わないで。そんなそそっかしい人ってみんなに思われたくないの』


って言うのとほとんど同じじゃないか!


「うん、いいよ」

「良かった!」


ともあれあの井上さんと秘密が共有できたぞ!

これはもしや恋愛フラグか?!


「ところで…」

「何?」

「あなたの名前を教えてもらえる?佑香のCHAIN(チェイン)に名前が書いてなくって」

「…」


どうやら俺の事を知りもしない人だったらしい。


あと、俺のクラスの箕田佑香は俺の名前の替わりに『あの陰キャ』とでも書いたんだな。

別にそのくらいいいけどさ。


恋愛フラグは無さそうだけど、いい体験ができたから良かったとするかな。



「じゃあ」

「うん、ありがとう」


井上さんとは住む世界が違うから、もう話すことなんてないとその時の俺は思っていた。



○亜紀視点○


うっかり失敗してその秘密を二人っきりで共有できるとか、本当に『ポンづま』のヒロインみたい!


もっと私がポンコツなところを見せたら西条くんが色々助けてくれて、うちに食事を作りに来てくれたりするかな?


そんなのお話の中だけよね。


そうだわ。

『ポンづま』の更新は止まっているけどせっかくだから最初から読み直しましょう。


勉強の続きはそれからでいいわよね。


ああ、やっぱり理乃がうらやましいわ!

私もこんな風に男の人と二人だけの秘密をたくさん共有して…



「理乃ちゃん降臨っ!ふふっ、ここが井上さんのおうちね。よし、このノートに」



かりかり


「ん?私いつの間にか寝ちゃったのかしら?」


そういえば宿題がまだ途中だったわ。


ノートを見るとそこには…


『西条くんのこと好きかも』


ええっ?!


だ、誰が書いたの?!

って私の筆跡よね。


うとうとするまでそんなこと書いてなかったはずだし。


…まさか無意識に?


屋上に行ったのも記憶無かったし。


私、どうしちゃったの?!


慌ててその文字を消し…その前に彼の名前をなぞってみる。


もしかして、小説みたいな恋が始まってるのかな?

理乃ちゃんにもっと降臨してほしい方は下のボタンを押してください。

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