クリスマス番外編.あなたに愛のプレゼント(前編)
第一部の時間軸です。
前編は男の子ズのクリスマスプレゼントのお話、後編はヴィンセントとエリザベスのお話。
冬至祭。
それは一年でもっとも長い夜をこえたことを喜び、家族や友人に感謝する祭りだ。家族で食事をともにし、祝いを述べながら贈り物をしあうのが慣習で、特に近ごろ王都民のあいだでは恋人の日ということにもなっている。
身分ある者が人出のある日にほいほいとデートをするわけにはいかないが、せめて贈り物だけでも、というのが想い人を持つ若き子息令嬢たちの願いであった。
もちろんオレもそうだ。オレは毎年エリザベスへの贈り物をひと月以上かけて念入りに考える。
知らなかったがきっとハロルドもマーガレット嬢に渾身の贈りものをしていたに違いない。
そして今年は、渾身の贈りものをしたい男がもう一人。
「ユリシーちゃんに何をあげたらいいと思う~?」
頬杖をついて情けない声をあげているのは学園一の遊び人と呼ばれたはずの男、ラファエル。
「お前、贈り物なんかお手のものじゃないのか?」
「そんなことないよ。女性にプレゼントなんて、母上と妹以外したことない」
みんながボクのことを忘れられなくなったら困るでしょ? ともっともらしい顔でのたまう姿にイラッときたので無視した。
「とりあえず要点だけ教えてやる。相手の気持ちになって考えること。これを贈ったとき、箱を開けて相手がどんな顔をするか……それをよく考えるんだ。まぁエリザベスは殿下が選んでくださったものでしたらなんでも嬉しいです♡ と言ってくれるんだけどな」
「それが言いたかっただけですね?」
エリザベスの笑顔を思い出していたらハロルドに冷めた視線を向けられた。しかしそのハロルドも顎に手を当てて真面目に悩んでいるようだ。
マーガレット嬢が喜ぶもの、と考えかけて、ハッと気づく。ハロルドも同じ考えに至ったらしくじっとオレを見た。
「殿下、マーガレットがもっとも喜ぶことといえば……」
「エリザベスだな!? お前オレとマーガレット嬢どっちが大切なん――いや待て真剣に考えようとするなオレが悪かった答えなくていい」
マーガレット嬢のためならラ・モンリーヴル公爵家に働きかけて晩餐会をひらきましょうとでも言いそうなハロルドを止める。当日には無理だとしても直接エリザベスに会って贈り物を渡したい。招待がカチあうのは困る。
「マーガレット嬢への贈り物は『エリザベスと一緒にいられる権利』以外にしてくれ」
「承知いたしました」
「うん、なるほどね」
ラファエルがぽんと手を打った。そういえば一瞬この男を忘れていた。しかしうんうんとうなずいている様子を見るに、勝手に一人で合点がいったらしい。
「受けとったときのユリシーちゃんの反応を想像して物を選ぶ。ボクが普段やってるのと同じことじゃないか。つまり悩まなくていいってことさ☆」
満面の笑みを浮かべるラファエルに「お前ユリシー嬢が怯えまくっててもガン無視だっただろ」とつっこみたくなったが、ハロルドが首を振っているのを見て気づいた。
こいつ、ユリシー嬢のリアクションを考えたうえで、喜ばせる気ゼロだ。
……うん、その点についてわざわざ掘り下げるのはやめておこう。
そういえばラファエルはユリシー嬢を自家に住まわせているから、当日にも会うことができるんだな。
ウキウキとした足取りで帰っていくラファエルを、オレとハロルドは無の表情で見送った。
祝いの夜、ユリシー嬢に幸あれ……。
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お手にとってくださった皆様ありがとうございます(´;ω;`)






