ハーフオーガのアリシア79 ― 執行部Ⅰ ―
教授さんたちが、お嬢様に会いにきた次の日に、また馬に乗った伝令の人がやってきた。
それで、伝令の人が持ってきてくれていた手紙をトラーチェさんに取り次いだのだけれど、その日は、何人もの違う伝令の人が何度もやってきた。
アリシアはいつものように庭の隅で、演習のときに狩った獲物を、お嬢様の荷物袋の異能から出してもらって、それを解体したり精肉したりしながら、過ごしていて、それで伝令の人がやってきたら応対に出ていたわけだけれど、あんまり伝令の人が多いので、昼食の時に
「今日はいっぱい伝令の人が来ますね」
とトラーチェさんに話を振ってみたら、トラーチェさんは渋い顔になって
「今度のお茶会は、執行部の皆様となんですが、最初は私たちが出向く予定になってたのが、変更になって執行部の皆様がこっちに来ることになっちゃいまして……それで連絡の伝令の人がいっぱい来たんですよ」
と教えてくれた。
アリシアは、執行部ってなんだろう? と少し疑問に思いはしたけれど、あんまり興味もなかったので
「そうなんですね」と簡単に返事をする。
つまりこっちが出かけていく予定だったのに、お客さんのほうから来てくれることになったから、色々ごたついているらしいということで、アリシアとしては、それで納得して興味を失ったからだ。
でもトラーチェさんは
「執行部ってのいうのはですね。この学園都市の行政をする……つまり王様や領主様のかわりみたいなもんですね。この学園でいちばん強くて偉い人たちくらいに覚えておけばいいです。
まあお嬢様のほうがどうも、ダントツで一番強いらしいので、今はお嬢様を除けば一番強くて偉い人たちということになるんでしょうけど」
と追加で教えてくれる。
それで「確かにお嬢様ってちょっと普通じゃないですよね」
と、アリシアもなんとなく相槌をうつ。
大きな岩を何十個も投げつけて、でっかい天竜を一瞬で二頭も討伐したり、その天竜に踏まれて体が半分なくなってしまったような人でも元通りにしてしまう。もう明らかにすごい。
「お嬢様の戦力評価がすごく高くなりそうだから、こちらが出向いて、執行部が呼びつけたみたいになるとまずいんだそうで、だから執行部の皆さまから来てくださるというような、そんな話の流れらしいんですが、来てくださると、それはそれで掃除をしなきゃならないし、もてなしも気を遣うから、実際のところは来てくださるよりは行くほうが楽ですよね」
とトラーチェさんはげんなりした顔でぶつぶつ言っている。
それで今回は来る人が多いので、応接間じゃなくて、大食堂のほうを使うんだそうで
「今日は午後から掃除をしましょう!」とトラーチェさんは号令をかけたのだった。
◆
大食堂は、この家に初めてきたときとか、あとは一回か二回くらい足を踏み入れたことがあるかもしれないというくらいで、普段は全然使っていない。
足を踏み入れてみると、そこは百人だって入れそうなくらいに、すごく大きな部屋で、見上げるくらい高い天井から、やたらとでっかいシャンデリアがいくつも下がっている。
部屋の中にはすごく立派で大きな長いテーブルと、それを囲むように椅子がぐるりと置いてあった。
それは良いのだけれど、長く使ってない部屋だから、中は、床もテーブルも椅子も、どこもかしこも埃だらけで、けっこう掃除もホネがおれそうに見える。
ちょっとうんざりしそうな感じだったけれど、皆で相談して掃除の手順を決めて、まずは長テーブルと椅子を拭いてきれいにする。
あっというまに布巾が真っ黒になったけれども、とりあえずきれいにはなった。
次に、部屋の端の壁際のほうを掃き清めてから、そこに長テーブルや椅子を寄せると、ふわりと高く、手にハタキを持ったお嬢様が浮かび上がって、シャンデリアの上まで浮かび上がって、ハタキでパタパタとやってシャンデリアの埃を落としてくださる。
空を飛べるというのは実に便利だ。
それで、落ちてきた埃も含めて床を全体的に掃いて、長テーブルと椅子をもとに戻す。
広い部屋だから、かなり大変な作業で、確かにトラーチェさんの言うとおり、来てもらうより出向くほうが楽かもしれない。
お嬢様に足を運ばせると悪いからということで、執行部とやらの人たちが来てくれるということらしいけど、足を運ばなくていいかわりに掃除をしなきゃならないなら、そっちのほうが大変だ。
◆
そして掃除をした日の翌日に、お茶会の当日になったんだけれども、その予定の時間よりだいぶん前に、診療部のローラさんたちがやってきた。
いつものように診療部の部長さんの、長い黒髪のランナさんや、金髪のおかっぱのウビカちゃんも一緒に来てくれている。
でも今日はさらに後ろにもう一台馬車がいた。
御者台には黒いドレスと、レースの入ったきれいな白いエプロンに大きなヘッドドレスを付けたメイドさんが二人座っている。
何だろうと思っていたら、馬車の扉が開くと、同じ格好をしたメイドさんがさらに四人も出てきた。
「今日は人数が多いはずだから、応援のメイド達をうちから連れてきたわよ。今日は給仕とかの人数がちょっと足りないでしょう」
と、出迎えに漂ってきたお嬢様を抱っこしたローラさんが言ってくれる。
「あっ、助かります、ありがとうございます!」
と、なんか緊張しているのか疲れた様子のトラーチェさんが言って
「ありがとお!」と、お嬢様もローラさんの腕の中からお礼を言った。
「ふふ、どういたしましてよ」
ローラさんは嬉しそうな顔でそう言って、お嬢様の頭にキスを落とす。
それから
「どうせあなたたちのことだから、給仕とかも寄子の皆で手分けしてやろうとか思ってたんでしょう」
と、ちょっと咎めるような調子で言った。
「はい、臨時雇いの人を屋敷に入れるのは嫌だったので……」
「それはそうだけど、今日は来客がいっぱいなのにアリスタちゃんの側の寄子の席がスカスカになるのは感心しないわ。ただでさえアリスタちゃんは寄子の数が少ないのに。
私も今日は執行部として座ってる予定だから、アリスタちゃんのほうに座るわけにもいかないし」
「ローラはしんりょうぶじゃないの?」
と、お嬢様が不思議そうな顔で聞いた。
確かにローラさんは診療部の副部長さんだったはずだよね、とアリシアも考えていると
「執行部は強い人を入れる場所みたいなところがあるから、私みたいな他の部に籍がある人が兼務で入ることも多いのよ。
私もアリスタちゃんほどじゃないけど、戦力評価はけっこうあるんだからね」
とローラさんはおどけたような表情で言った。
◆
やがて馬車が続々と到着しはじめて、どんどんとお客さんがやってくる。
この間の治癒のほうの教授さんたちとか、診療部のローラさんたちとか、このお屋敷にお客さんが来たことは何度かあるけれど、いつも馬車一台に収まるくらいで、こんなにいっぱい来るのは初めてだった。
お爺さんのクリーガさんと二人で玄関前で対応して、玄関ホールまでお客さんを案内して連れて入ると、そこにローラさんが連れてきてくれたメイドさんたちが待っていて、お客さんの外套を引き取ってクロークに持っていったり、大食堂のほうに案内したりしてくれる。
なんか手慣れている感じがあるし、アリシアたちだけだと手が足りなかっただろうから、とっても助かった。
しばらくすると、お客さんがもうこれで全員らしいとミーナちゃんが言いに、玄関のほうにやってきてくれたので、アリシアもクリーガさんと一緒に玄関を離れて大食堂のほうへ向かう。
◆
大食堂の中は、長いテーブルの長辺の真ん中あたりにお嬢様がいて、その左右に寄子のみんなの席があって、その向かい側にお客さんたちが座っていた。
それはいいのだけれど、お客さん側の数がやたら多いから、場所が足りないみたいで、お客さん側の長辺は、びっしり詰めて人が座っていて、全部で三十人ほどもいるくらいになっていた。
ちゃんとローラさんの姿もある。
それと比べるとお嬢様の座っている側の長辺はスカスカで、これは確かに寄子の数が少ないかもとアリシアも思ったのだった。
アリシアの大きな椅子が、お嬢様の座っているお子様用の椅子の左側に置かれていたので、アリシアはそこに座る。
お嬢様の隣なのがうれしい。お嬢様の右隣はトラーチェさんだった。
それからアリシアに一瞬遅れてお爺さんのクリーガさんが、トラーチェさんのさらに隣の席につくと、皆がそろったらしく、トラーチェさんがお嬢様に何事か耳打ちした。
すると、お嬢様が
「きょうはきてくれてうれしいわ。きょうのてんきは……ふゆだからさむいけど、まだすごしやすいほうよね」
と、唐突にどうでもいいような天気の話を始めてから黙った。
すると、お客さんのうちの一人、長テーブルのお客さんの側の真ん中に座っていた人が立ち上がって話を始める。
なんかどこかで見たような顔の人で、銀縁の眼鏡をかけていて、この人は確か、学園の入学式とか、魔獣討伐演習のときとか、演習から帰ってきたときの式典とかで、前に出て話してた偉い人じゃなかったかなとアリシアは思いだした。
「私は執行部首席をやっているブレイル・ミット・シルヴェイレムという。
ファルブロール殿ならびにその寄子の皆さんとも、入学式や魔獣討伐演習のときなどに何度も会っているからお互い顔は知っているが、よく考えたら名乗ったことがなかったので、この機会に名乗っておく。
さて、今日はファルブロール殿にこうしてお招きいただいて嬉しく思う。
急に予定を変更にして押し掛けるような形になってすまない」
「いいのよ。じゃあおやつとのみものをだして」
お嬢様がそう言うと、ローラさんが連れてきてくれたメイドさんたちと、あとミーナちゃんがワゴンを押して入ってくる。
そして皆の前に、それぞれサンドイッチの乗ったお皿、クロワッサンとケーキとクッキーが三枚乗ったお皿、それに珈琲のカップに、硝子のコップと、たぶん砂糖壺と、あと膝の上に拡げるようのナプキンを置いてくれる。
サンドイッチはパンの隙間から見えてる感じだと、たぶんキュウリとクリームチーズにハーブを挟んだもの、それとサーモンと玉葱の薄切りにハーブを挟んだもの、あとローストした肉の薄切りに山葵を挟んだものと三種類もあった。
ケーキは何かチョコレート系のやつに粉砂糖がいっぱいかかっている。
クロワッサンは真ん中に切れ目が入れてあって、ホイップクリームと柑橘のジャムが添えられているように見えた。
それからたぶんジンジャーとか紅茶の葉が入ったのとか、クッキーが何枚もある。
最後に暖かい珈琲がカップに、お水が硝子のコップに、それぞれ注がれて用意が完璧に整った。
とっても豪華で、アリシアはとっても嬉しい。
「どうぞ、めしあがれ」とお嬢様が皆に言ってくれたから、アリシアはうきうきで手を付ける。
「やあ、こりゃあおいしそうだ」
とか銀縁眼鏡のブレイル?さんだかが言っていたけれど、本当にそう思う。
今日は好きなものから先にいこうと決めて、大好きなサーモンのサンドイッチに齧りつくと、サーモンに脂がのっていて異常においしい。たまらない。
「演習のときに、ファルブロール殿には食事のほうでも、たいへん世話になったが、今日もとても美味しいな」
「そう? よかったわ」
お嬢様があまり興味なさげに返事をする。
「そうだ。我々はとても助かった。
論功行賞においても、貴女が功第一とされたし、実際に討伐演習旅団の皆が世話になった。
演習に出た者で貴女の世話になっていない者は一人もいない。
貴女は攻撃、補給、治癒、いずれの面においてもその偉力を示した。また非常な寛大さをも。
そうであれば我々は、貴女が今後どうするつもりなのかを聞いておかねばならない」
「どうする、ってなにを?」
「例えば貴女がこの学園で大いに名を揚げて、後々にはこの帝国においてその階梯を登りつめようとするなら、まずはこの学園の執行部に入り、そこで私に代わって首席となる、というのも選択肢のひとつだろう」
「……いみがよくわかんない」
「つまり、この帝国でさらに出世したいなら、今のうちからこの学園で偉くならないかってことだな」
「えらくなるとかそういうのはべつにいいかな」
「そうなのか。派手にやってたからそういう意図もあるのかと思っていた」
「そんなのないよ。わたしたちだけおいしいものをたべてたらよくないかなっておもっただけだもん」
「そうか……では、とりあえずは私に取って代わって執行部の首席になりたいとか、そういうのはないんだな?」
「そんなのかんがえたこともないよ! なんでそんなことわたしにいうの?」
「それは君がとても強いからだ。
もう近々に発表となるので、この際言ってしまうが、学院議会の戦力評価会議の結果、君の戦力評価はおおむね五十四万となった。
内訳は投射令術力が二十五万、荷物袋の異能で二十万、治癒令術力が八万、それに君は空を飛べるので、それが一万、合計で五十四万だな」
「そうなの? よくわかんない」
「これはもう圧倒的に強い。
君がこの学園に来るまで、一番強かったのは私だが、その私の戦力評価は七万一千なのでな。
君の戦力評価が圧倒的だというのが分かるだろう。
そしてこの戦力評価は、そのまま学院議会における投票権ともなる。
ちなみに今年の学院議会の総票数は三百九万三千余となっているから、つまり君ひとりで総票数の一割七分以上を握っていることになるのだな。
それに君にだって友人はいるだろう。
食料購買局のソーモ君なんかは、君への支持を公言して憚らないし、他には我が執行部の部員にして診療部のローラ君とも仲良くしてると聞いたぞ。
彼らの寄子や友人たちと、それから私が執行部首席であることが気に入らない人たち、それに君が合力すれば私を解任して新たに君が執行部首席となることが可能なわけだが、もしそうしたいというのが君の希望だとしたら、先に話し合いをしておいて、円滑に執行部首席の交代をしなくもないということだよ」
「そんなきぼうはぜんぜんないわ。
しっこうぶしゅせきなんてきょうはじめてきいたし」
「そうか、政治の方面にはあまり関心がないというところだな。わかった。
ではそれはそれでいいとして……君が学園で何をしたいかとか、どんなふうに過ごしたいかとか、何か希望があれば少し聞いておきたいと思う。
君が不満を抱いて、それがトラブルの原因になるくらいなら、最初から色々配慮しておきたいからな」
「そんなこといわれても……とくにないわ」
「それもどうなんだ。何かしたいこととか、ないのかな?」
お嬢様は、うーん、と首を傾げてからしばらく考え込んで、それから
「おとうさまとおかあさまはね、わたしにがくえんでちょっとあそんできなさいっていったの」
と言った。
「……ふむ。『勉強してきなさい』とかではなく?」
「そうなの。わたしがりょうちにいたら、ちりょうとかではたらかせすぎるから、とおくのがくえんにやるんだっていったわ。
だからべんきょうもしたかったらしたらいいけど、てきとうでいいし、ゆっくりして、すきなようにあそんできなさいっていったのよ」
「なるほど。そういう事情なのだな。
まあ、優秀な治療者は休む間が無くなるとも聞く。大変だったな」
首席さんにそう言われたお嬢様は、しばらく黙り込んだ。
それで、どうしたのかなと思ってアリシアが、お嬢様の顔を覗き込むと、お嬢様は
「……たいへんとはおもっていなかったの」と、ぽつりと言った。
「でも、ご両親が働かせすぎたとおっしゃったんだろう?」
「ちゆをしなきゃならないひとはいっぱいいて、いそがしかったし、まいにちよるもおそかったけど、でもいやじゃなかったの。ほんとうよ」
「嫌じゃなかったとしても、君のような子供が夜遅くまで働くというのは、いささか不健全なように思えるけれどね」
「でも、でも、ひつようなことだったの」
「そりゃ治癒なんだから必要なことは必要なことだったんだろうけど、だからって君のような幼い子を働かせすぎるわけにはってことだろうけど、ご両親とは話し合ってきたんだろう?」
「おとうさまとおかあさまは……わたしがここにいたら、わたしがしあわせじゃなくなるっていったわ。
ちゆはぜんぶおかあさまがおしえてくれたのに、しんりょうじょのみんなとたのしくやってたのに、わたしがしあわせじゃなくなるって、いったの」
お嬢様はしゃくり上げて、それからぽろぽろと涙をこぼした。
アリシアはうろたえて、ハンカチを取り出して、お嬢様の涙を拭きにかかったけれど、お嬢様は泣き止まない。
アイシャさんが自分の席から立ち上がって、やって来て、お嬢様を抱き上げてくれたけれど、それでもお嬢様はイヤイヤをするようにかぶりをふって泣いている。
アリシアは本当にもうショックを受けてしまって、何か天地がひっくり返ったような、母親が泣いているのを見たときのような、不安な気分になってしまったのだった。
でも考えてみれば、お嬢様は幼児みたいな赤ちゃんみたいな見た目をしているから、もっとしょっちゅう泣いてもおかしくはないし、年齢通りだとしても十三歳の女の子なんだから、たまには泣いてもおかしくない。
それなのに、なんで自分はこんなに動揺してるんだろうと考えてみると、お嬢様がいつも立派で、きちんとしていて、気も遣ってくれるし、頼りになる、そういうお嬢様が突然泣き出したからなんだろうと思った。
けれども、赤ちゃんみたいに見える、歳だって自分より下の子供がそんなに立派なのはおかしいので、そうだとすると、やっぱり何かが変なんだろうと、ここまで細かく頭の中で言葉にできたわけではないけれど、アリシアは直感的にそう感じたのだった。
そのうちに、席を立ったローラさんが、テーブルを回って向こう側の席からやってくる。
ローラさんは、アイシャさんの隣まで来ると「こっちにいらっしゃい」と、お嬢様に優しく言って、お嬢様を抱き取って、胸に抱きすくめた。
「アリスタちゃんは悲しかったのね」
ローラさんに言われたお嬢様はかすかに頷く。
「でも私は、私はアリスタちゃんがここに来てくれてとっても嬉しいわ。それは本当、本当のことよ。
アリスタちゃんも私に会えて少しでも嬉しいと思ってくれたら、そしたら私が嬉しいわ」
「……ローラはすき」
お嬢様にそう言われたローラさんは破顔して、とっても嬉しいわと言った。
「私もね。もう四年前くらいになるのかしらね。
この学園に行くことになったときに、それが、そんなに楽しみだったわけじゃないわ。
故郷を離れるのは寂しいことだしね。領地を離れるのが心配でもあった。
でもね、ここは色々な人がいてね、良い人も悪い人も、変わった人もそうでない人も色々よ。
色々と楽しいこともあって、アリスタちゃんともこうやって会えたの。
だから私はここに来て良かったと思っているわ。だからね、アリスタちゃんにもこの学園できっと、きっと良いことがあると信じてるわ。
……もちろん未来なんて誰にも分からないけれど、でも私はそう思ってる」
そしてローラさんは手を伸ばして、アリシアの持っていたハンカチを取って、お嬢様の涙を拭いて
「だから、私とこの学園で何年か楽しくやってくれる? もちろん卒業後も仲良くしてくれると嬉しいけど」
と聞く。
お嬢様が「うん」と頷くと、ローラさんは「嬉しいわ」と言って、お嬢様の頭にひとつキスを落としたのだった。
長くなったので中途半端なとこですが、いったん切ります。




