ハーフオーガのアリシア76 ― 商工会Ⅲ ―
お嬢様が、穀物商のゲトライーダさんと話し終わったところで、メイドさんや従僕さんたちが呼ばれて、アロガントさんが机をひっくり返したせいで割れたカップや、こぼれたお茶とかお菓子とかが片される。
そうやって部屋の中がきれいになったところで、会頭さんがお嬢様に
「ではファルブロール様も、お気になっておられましょうし、船着き場のほうへ行かれませんか?」
と、そう声をかけてきた。
「おちゃかいがとちゅうだけどいいの?」
「このようなことがあった後では、もうお茶会どころではありますまい。
それにアロガント顧問も公女様を待っておられましょう。
我々としても、気になってお茶会どころではございませんし、公女様がよろしければ今からでも船着き場に向かいましょう。我々もお供いたしますぞ」
「じゃあ、そうしようかしら」
そういうわけで、馬車に分乗したり歩いたりして、その場にいた皆で(部屋の中にいた人が全員ついてきた)ぞろぞろと船着き場に向かった。
◆
アリシアは山育ちだから、船にはあんまり馴染みがない。
ご領主様のお屋敷から、学園へ向かうまでの間に乗せてもらった運河船だって珍しく思ったくらいだった。
アリシアの故郷の村にある貸本屋で借りた小説に、帆船が出てきたことがあったので、そういうものが世の中にあることは知っているけれど、アリシアは実際に帆船の本物を見たことはない。
小説の中に、帆船が登場して、その帆船とやらがどういうものか、今ひとつよく分からなかったから、父親に頼んで、どういうものか分かるように、土の上に木の枝で簡単な絵を描いてもらって、それを見たことがあるきりだった。
だから大きな交易船で小麦を運んできてどう、とかアロガントさんが言っていたので、その船着き場とやらに行けば大きな帆船でも見られるかと期待していたけれど、実際に着いてみるとそんなものはなかった。
パリシオルムの街というのは、おおむね丸い形をしていて、その街の中心を貫くように大きな河が蛇行しながらはしっている。
そしてアリシアが、その船着き場とやらに着いてみると、そこは、運河でも掘るみたいにしたのか、街の中を走っている大きな河を枝分かれさせて、その枝から、櫛の歯みたいに、さらにいくつも枝分かれをさせた、というような造りをしていた。
その枝分かれさせた先は、行き止まりになっていて、河の下流と合流はしていないので、つまりは水溜まりにみたいになっていて流れがない。
そうして、そこには荷物を満載した小舟がひっきりなしにやってきては荷物を降ろし、あるいは何かの荷物を載せてから、また来た水路を戻って河の本流へ戻っていく。
つまり小舟がいっぱい、棹で操られたり、馬や人夫さんにロープでひっぱられたりしながらあっちこっちしているだけで、大きな帆船なんてものは影も形もなかったのだった。
それで、アテが外れたアリシアは、少しがっかりしつつ、豚鬼族のアイシャさんが、馬車から降りるのを、手をとって手伝う。
他の皆は、馬車くらいからなら自分でさっと降りられるけれど、アイシャさんだけはちょっと足下が怪しいからだ。
そうして、馬人族のウィッカさんが、自分の体から曳き具を外すのを待って、お嬢様が馬車を荷物袋の異能にしまってくださる。
それを眺めながら
「帆船がいないですね……」とアリシアが誰に言うともなくつぶやくと
「大きな船は河の中までは入ってこないんですよ。
河口のあたりで、大きな帆船から小さな舟に、艀っていうんですけど、それに荷物を積み替えて、そこから河を遡ってきますね」
と、アリシアのそばにいたトラーチェさんが教えてくれた。
そう言われてみればたしかに、河に大きな船が入ってきて、河岸にぶつかったら、船が壊れてしまうかもしれない。
だから艀という小舟に積み替えるということか。
その艀とかいう小舟にも帆柱らしきものが付いているものは、ちょいちょいあるけれど、でもその帆柱に帆が張られているものはなくて、水路沿いにある脇の道から馬や人がロープでひっぱっていたり、あるいは艀に乗った人が、長い棹で河岸や河底をつついて動かしているのだった。
そうして、そういう船着き場のすぐ後ろには、三階建てくらいの石造りの倉庫らしき大きな建物がいっぱい並んでいて、そこへ荷車が出たり入ったりしている。
帆船から艀へ、艀から荷車へ、荷車から倉庫へ、とうまくできているものだ。
アリシアが感心していると
「おーい、こっちだ」
という声が聞こえてきて、見ると石造りの倉庫らしき建物の入り口のところで、さっきのアロガントさんが、お付きの人たちと一緒に立っていた。
お茶会の会場から付いてきた人たちも含めて、皆で一緒にぞろぞろとそちらに寄っていくと
「おー、おー、皆さんお揃いで」とアロガントさんは皮肉げに言う。
まあいいさ、と呟いて、それから身を翻し
「小麦を入れている倉庫は、あそこと、ここと、そこからそこまでと……」と倉庫を幾つも指差す。
アロガントさんがそうやって指差した倉庫のひとつに鍵を開けてもらって中に入ると、中には、人が二人か三人いないと持ち上げられなさそうな、とても大きな樽が一段ごとに板を噛ませながら、上から下までびっちりと積み上げられているのだった。
「これよくつんだわね。たいへんだったでしょ」
お嬢様にそう言われたアロガントさんは、はじめて嬉しそうな顔をして
「あんたほどじゃないんだろうが、俺だって荷物袋の異能も令術もちっとは使えるんだぞ。樽数個分しか入らなくても荷役作業には使えるもんさ」と言って鼻の下をこすった。
「いくつかぬきとってなかをみるわよ」
お嬢様はそう言って、令術で樽を動かして、奥の方の樽をひとつとって、樽の蓋を開けて中に小麦が入っているかどうか見る。
全部の倉庫でそんな確認をしてから、縦に何列、横に何列、奥に何列と計算をして、手早く樽の数を数えていく。
「おくにじゅうれつ、よこににじゅうれつ、たてにごれつでいっせんこね」
そんな感じで計算をしておられて、アリシアはお嬢様の頭の良さに感心すると同時に、掛け算ってあんなふうに役に立つんだなと感動を覚えた。
そうして「いちまんろくせんこちゃんとあるわね」と仰って、それから会頭さんたちのところに飛んでいって、小切手の束を渡した。
会頭さんが小切手を数えてくれて
「帝国金貨百枚の小切手が確かに百五十枚あります」と言って、それからお嬢様とアロガントさんに何か書かれた紙を一枚ずつ手渡した。
お嬢様の後ろから、その紙を覗きこむと【受取証】とタイトルが書いてあって、その下に色々と文章が書いてあった。
お嬢様はその【受取証】にサインをすると、アロガントさんに渡して、アロガントさんは自分が貰った紙にサインをしてお嬢様に渡す。
お嬢様が【受取証】を渡してかわりに貰った紙を見てみると、そこには【領収証】とタイトルが書いてあって、その下にいろいろと文章が書いてあって、最後にアロガントさんのサインがある。
それを見ると、会頭さんがアロガントさんに小切手の束を手渡して、アロガントさんはそれを数えて、数え終わると「確かに」と言って眉根を開いた。
まわりの人たちが息をつくのが聞こえる。
買い物も額が大きくなると大変なものだ。
……というか、小切手だけで支払いを済ませるんだったら、お嬢様がテーブルの上に積んで見せた、あの金貨の山はなんだったんだろうとアリシアは思わなくもない。
それからお嬢様が、倉庫の中の小麦の入った樽をあっという間に荷物袋の異能に全部吸い取って
「じゃあかえりましょうか」とアリシアたちにおっしゃった。
他の人たちは、あっという間に樽が消えた倉庫の中を覗いてみては何か色々と言っている。
ウィッカさんの曳いてくれる馬車を、お嬢様が荷物袋の異能から出して、ウィッカさんが馬車に自身の体を繋いでくれている間に、お嬢様は皆に挨拶をしていく。
お嬢様は、会頭さんのところでは
「いろいろとてつだってくれてありがとうね。これはけいやくしょとかをつくってくれたひとたちとわけてあげてね」
と言いつつ、じゃらりと金貨を何枚か手渡していた。
こういうのが、お嬢様は見た目が赤ちゃんみたいなのに、なんだか大人みたいに見える。
アロガントさんのところでは
「あの女は気に入らんが、公女サマには高く買ってもらって正直助かったよ。また何かあったら頼む」
と言われていた。
「うるさきがないようなたべものがあったら、よろこんでかうわ」
「頼りになる。ありがとうよ」
「あとこれ、おみやげね」
お嬢様はそうおっしゃって、すごくでっかい樽をひとつ異能から取り出した。
「なんだこれ?」
「ウイスキーよ。あげる」
「いや、こりゃすまんな。ありがたく呑むよ」
それでゲトライーダさんや、そのお付きの人たちのところでも挨拶をして、色々とお礼を言われたりした後で、お嬢様はゲトライーダさんに
「ファルブロール様、この後どうか私たちの家のほうにどうかお寄りになってくださいませ」
と言われた。
そう言われたほんの一瞬、お嬢様が真顔になったので、ああ、これはもう帰りたいんだなとアリシアには分かったのだった。
けれどもお爺さんのクリーガさんが、お嬢様に何事かを耳打ちすると
「そうね、せっかくだからおちゃでも」と、お嬢様が言いかける。
そしたら今度は逆側の耳から、トラーチェさんが耳打ちした。
「……おちゃはじゅうぶんにいただいて、とてもまんぞくしたから、ゲトライーダさんのいえではゲームでもしてあそびましょう!」
お嬢様は周りに聞こえるような大きめの声でそう言いなおす。
なかなか、お嬢様も気を遣わなければならないから大変だ。
そうして皆がお見送りをしてくれる中を、ゲトライーダさんの馬車の後をついて、ウィッカさんが馬車を曳いてくれる。
◆
冬なので、夕方の空からあっというまに陽が落ちていく。
そうすると、ウィッカさんの馬車の、前側にある御者台の、その左右に下がっている角灯に明かりが入り、薄暗くなった街を走っていく。
そうやって着いた、ゲトライーダさんの、お店の建物は、街の中央を流れる川を分岐させて、船着き場のようにしている、その船着き場沿いの道に面して建っていた。
店の前の、その道には小石というか砂利のようなものが敷いてあって舗装されている。
船着き場の前には、足踏み式の、人が中に入って使う、水車のような見た目のクレーンがあって、そこから道を挟んで向かい側奥にゲトライーダさんのお店があった。
店の正面は、馬車が何台も停められるくらいに間口が広くて、そこに鉄の鋲で補強された、倉庫の扉みたいに大きな扉が付いている入り口があった。
扉の上の、分厚そうな苔むした石壁から、道のほうへ真横に飛び出している短い支柱が取り付けられてあって、その支柱から金属製の看板が下がっている。
そこには小麦の穂を図案にしたようなものが彫り込まれてある。
そこからゲトライーダさんの馬車について、お店の脇にある小道に入ってそこを進むと、お店の裏側に出た。
するとそこには、アリシアたちが住んでいるような、庭なんかもついた小奇麗なお屋敷が現れる。
どうやらお店の裏が住む家になっているみたいだった。
ゲトライーダさんのところの馬車が先に停まると、お付きのおじさんが馬車から飛び降りて、屋敷の中に走って入っていく。
それからアリシアたちもゲトライーダさんに連れられて、お屋敷の中に入れてもらう。
大きな玄関ホールを抜けて、大きな絵とかが飾られてある長い廊下を通って、通されたのは毛足の長い絨毯が敷かれた応接間らしきところだった。
夫婦らしき初老の男の人と女の人が、一人ずつ立っていて迎えてくれる。
「ファルブロール様ならびにご一統様、本日はお越しいただいてありがとうございます。
私はバーリス・コルンと申します。こちらは妻のヴェトマーです。
私もいま事情を簡単に聞いたばかりで、あまりよく承知できておりませんが、娘をお助けいただいたとのこと感謝申し上げます」
「なりゆきだからべつにたいしたことじゃないわ」
とかお嬢様が話しているうちに、マントを引き取りにメイドさんがやってきて、あと従僕さんがアリシアの椅子にする木箱を持ってきて布をかけてくれたり、馬人族のウィッカさんが座るための厚手の絨毯を持ってきてくれたりした。
それから皆が席に落ち着くと、お茶とお菓子が皆に配られる。
ここでのお菓子は煮た栗の糖衣がけだった。これは今日の二回目のお茶会だから、お菓子も二回も食べられて、それがアリシアは嬉しい。
「きょうはゲームをしにここにきていることになっているから、ゲームをしましょう。
なんであれ、いったとおりにじじつをつくるのはだいじだって、おとうさまがいってたわ」
お嬢様はそうおっしゃって、荷物袋の異能から、カードの束やらゲーム盤らしき板とか駒やらをたくさん取りだす。
「まあ、たくさんお持ちなのね」と、ヴェトマーさんが楽しそうに言った。
「あの、私は顛末を父に報告したいので、そうしてもよろしいでしょうか」
と、ゲトライーダさんがお嬢様に聞く。
「それはもんだいないわ。わたしがここでゲームをしさえすればいいのよ……わたしはショーギがしたいわ!」
それでゲトライーダさんのお母さんの、ヴェトマーさんが、ショーギというゲームのルールが分かるとのことで、お嬢様の相手をしてくれることになった。
アリシアはボードゲームというとオセロくらいしか知らなかったので、ショーギというのはどんなゲームだろうと思って、近くに座っていたトラーチェさんに聞いてみると、あれもオセロと同じで、皇帝陛下がお広めになったゲームのひとつであると教えてくれた。
「兵棋の一種なんですが、相手の駒を倒すと、その駒が裏切ってこちらの味方になるのが特徴ですわね」
とのことで、なんだそれとアリシアは思ったけれど、そのせいで盤上から駒が減らないのでゲームが複雑になるんだとか。
それで残ったアリシアたちはカードのセットを二つお嬢様に貸していただいて、二組に分かれてカードゲームをすることになった。
アリシアは、ゆっくりカードゲームを楽しみながら、ゲトライーダさんがお父さんのバーリスさんに報告をしているのを、見るともなしに見ていたけれど、報告を受けているバーリスさんの顔が、赤くなったり青くなったりしていて、かわいそうだった。
少し遊んで、ゲームを皆のキリのいいところで終えると、ゲトライーダさんから話を聞き終わったバーリスさんが、お嬢様に縋りつかんばかりにしてお礼を言ってくれる。
晩ご飯も食べていってください、と言ってくれるのを、人を屋敷に残してきてる(メイドのミーナちゃんと従僕のトニオくんのことだ)からとお嬢様が断って、そうして見送りをしてもらいながら、またウィッカさんの曳く馬車に乗ってゲトライーダさんの屋敷を出た。
◆
そうやって長かった一日が終わっての帰り道。
馬車の座席で、豚鬼族のアイシャさんに抱っこされて座っていたお嬢様が、ふわりと浮かび上がって、馬車の前方にある御者席に座っていたお爺さんのクリーガさんのところまで漂ってくる。
そうして
「ねえ、きょうはあれでよかったとおもう?」とお聞きになった。
「それは……母上のアロガント顧問殿へのご対応や、それにかかわる事柄についてということでしょうか?」
「うん、そう」
お嬢様にそう聞かれたクリーガさんは少し黙って考える。
「……私とて、どうということのない小者に過ぎませんから、母上のような本当に大身の御方がどうふるまうべきかということについてはよく分かりませぬ。
ただ、あくまで私の感想を申し上げれば、特に大きな問題はなかったかと思いまする。
アロガント顧問殿と敵対的になるのが損か得かと言えば、損ではありましょうけれども、母上は子の気持ちを慮り、ゲトライーダ嬢を庇うことであえてそのようになさいました。
しかし、敵対的な関係のままになってしまってはよくありませんから、問題となった小麦を非常に高い値段でお買いになることで、アロガント殿を宥められました。
非常に高額の出費であったとは思いますが……子のために、いや子の気持ちのために、そうしてくださったことは、ありがたくまた気高いことでもあったと考えます」
「お嬢様、私などのために大変な出費を……」
トラーチェさんが、そう口を挟むけれど、お嬢様は
「さっきもいったけど、おかねならかせごうとおもえば、ほんとうにいくらでもかせげるし、そんなことはいいの。わたしばかりかせいだらよくないから、もうけすぎないように、てきとうなところで、おかねをだしておくのは、こんかいのことがなくても、さいしょからそのよていよ」
と言ってひらひらと手を振った。
クリーガさんも、馬車の御者台から、座席に座っているトラーチェさんのほうに振り返って
「それに私こそ、金子に直せば金貨を何千枚も払わねば受けられなさそうな治療を、母上から無償でしていただきましたからな。母上に恩があるのは私こそです」
と言葉を足す。
「あれもてつやをして、それはたいへんだったけど、ただそれだけのことよ」
お嬢様はなんでもないことのように、そうおっしゃった。
「私にとっては、それだけのこと、ではありません」
そこまで言ってから、クリーガさんは言葉を切って少しだけ考えると
「あと、ですね……強いて言えばということではありますが、アロガント殿とのお話の途中で、テーブルの上に金貨を山のようにぶち撒けることをなさったでしょう。
あれはもちろん、ガルヒテ殿のご友人を救うためになさったことですし、多額の現金を見せつければ交渉上有利になるのは事実でありましょうから、間違いとまでは言えないのですが、いくらか下品な印象を与えるとは思います。
必要に迫られない限り、できるだけあのようなことはなさらぬほうがよろしいかと」
そう言われて、お嬢様は考え込んでいるけれど、アリシアが思い返してみれば、確かにお嬢様は高価なモノを前に出して、それで相手を宥めるというか、それで関係を良くするというか、そういうところがないでもないという気はする。
まあ親切で気前がいいのは良いことなんだろうけれど。
やがてお嬢様は眉根をひらいて
「わかったわ、きをつける。
ここにはおかあさまもおとうさまもいないし、じぶんのやってることが、あってるのかまちがってるのかもよくわかんないし、ふあんだったの。クリーガがいてくれてよかったわ」
と、嬉しそうな顔でおっしゃった。
アリシアも自分がまだ子供だと思っているので、大人の人が近くにいる思うと安心でいい。
「そう言っていただけて嬉しくあります。
ご相談いただければ、できる限りのお答えをいたしますが、しかし私もあまり頭が良いほうでも、知識が広いほうでもありませんから、お伝えできることは限られます。
これからは、できるだけ周りに良い者を増やされませ」
わかったわ、と答えるお嬢様をアリシアは眺めながら、お嬢様もえらく周りに気をつかうものだな、と思った。
まだ小さいのに、そんなふうに考えてたら疲れちゃうだろうに。
でもできることが大きすぎるので、好き勝手をしていたら周りが困っちゃうのかもしれない。
お嬢様もたいへんだ、と思ったアリシアは、御者台から漂って座席に戻ろうとしているお嬢様を、なるべくやさしく捕まえて抱っこし、頭のてっぺんにひとつキスを落としたのだった。




