ハーフオーガのアリシア21 ― 六本腕の男Ⅰ アリシアは唸る ―
それから、アリシアが武器の練習をしたり、ご飯を食べたり、街で見回りをしたり、ヨランダさんやウィッカさんをお風呂で洗ったりして日々を過ごしていると、あっという間に、二十日と数日ばかりが経った。
季節は春の終わりから初夏へと巡る。
吹く風はよりいっそう暖かくなり、日は長くなって夕方遅くなっても明るい。
アリシアが、街でも少しばかり知り合いができ、見回りにも慣れてきたので、わりと油断しながら街の見回りをしていたある日。
アリシアの隣を一緒に歩いていたドーラさんが
「最近、見慣れない顔が何人かいるね」と、アリシアに言うでもなく、独り言のように言った。
初夏の陽気に誘われて、心の底からくつろいで、見回りがただの散歩と化していたアリシアは、一瞬身構えたけれども、この街は輸送路である川の傍にあって街道が街を貫いている、宿場町というやつではなかったかと思い出した。
つまり外から人の出入りがあるのは当然で……、と思ってそうドーラさんにアリシアが聞いてみると
「そうそう、そうなんだよ。
だからこの街は人が出たり入ったりするところで、長逗留するようなところじゃないんだね」
売るものは売って、買い込むものは買い込んで、少しばかり骨休めをしたら次の街や村へ向かうのが普通の旅人や商人だよ、とのことだった。
アリシアは商人をやったことはないのでよく分からないけれど、そう言われればそうかもしれない、と思う。
「ダラダラしてたら、自分や荷馬車の馬の宿代や食事代がかかるばかりってなもんだ」
ふむ、とアリシアが納得したところで
「あの女の子なんかそうさね」とドーラさんが言った。
見ると、銀色の瞳に銀色の髪をした女の子が藍色のドレスを着て歩いているのが見えた。
その子は首元を真っ白な立派なレースで飾って、銀色のバックルの付いた革のベルトをして、それからドレスと同じ色の丈の短いきれいな上着を着ている。
ああ、確かにこの子は昨日だか一昨日だかにも見かけたな、とアリシアは思い出した。
かわいい顔をした女の子で、やたらときれいな高価そうな服を着ていたので、とても目立っていて、それで覚えていたのだった。
よく見ると、女の子の近くに、こっちは別にどうでもいいような恰好をした中年の男の人が一人と、あと若い男の人が一人そばにいて、お供をしているようだった。
ちょっと釘刺しとくかね、とドーラさんが言って、女の子とお供の人のほうに近づいていくので、アリシアも後から追いかける。
女の子は、ドーラさんを見て、それから後ろのアリシアに気づくと、はっとしたような顔をして、お供らしき中年の男の人の後ろに隠れてしまった。
かわいい女の子に怖がられてしまったようなので、アリシアはちょっとがっかりする。
ドーラさんは、もうし、と声をかけた。
「いずれか名のあるご家中の方とお見受けする。
私は、当地の領主であるファルブロール家が家臣のドーラ・ドレイクと申す者。
皆様がたにおかれてはしばらくご逗留なさっている様子。
もし旅程に支障あれば、お助けするが如何に」
すると、中年の男の人は一瞬黙って、それから
「これはお気遣いをいただきかたじけない。
私は、ドライランター公が配下のエルゴル・セックヘンデの手のもので、ソーバーと申す者。
我が主人は少しばかり体が大きいもので、普通の宿には泊まりづらいものですから、私どもと共に街の外で野営しております。
街へは物資を買い出しにこの様に参っております」と言った。
するとドーラさんの眉がぴくりと動く。
「これは異なことを。客人に野営などさせては我が主の名折れ。
どうか我が主人の屋敷にて逗留なされるよう」
「これはかたじけない。
では主に申し伝え、野営を片付けて後日に参上いたします」
そのあと、案内は必要かとか、いや場所は分かるとかそういうことを、幾つか打合せして、それから彼らは去っていった。
「けっこう大物が出てきたね」
とドーラさんが言ったので、何のことですかと聞くと、
「あの人らがさっき、公爵様の配下のその手下だって言ってただろ。
花売りの娘の顔を切りつけたあの男の、その上が話しに来たんだよ」とのことだった。
ああ、ヨランダさんの件かとアリシアが納得していると、
「エルゴル・セックヘンデっていやあ大鬼族だよ」
嬢ちゃんのお仲間だよ、と言われてアリシアは俄然興味が湧いてきた。
アリシアは父親以外には大鬼族を見たことがない。
だからそのエルゴルさんとかいう人がオーガならアリシアははじめて他人のオーガを見ることになるのだった。
どんな人だろう、とかアリシアが考えていると、
「まあオーガと言ってもあの御仁の場合は、腕が六本もあるし下半身が鱗人族だから普通のオーガとはちっと毛色が違うかもね」
とかドーラさんが付け加えたので、アリシアとしては、より一層興味をそそられるというか、どういう見た目なのか想像しづらくなってしまった。
「今日の見回りは中止だ。さっさと帰って旦那様と奥様に伝えるよ!」
とのことで、二人して急いでお屋敷に帰ったのだった。
◆
お客さんが来るということを、ご領主さまと奥様にお伝えすると、その瞬間から爆発するような勢いで、準備が始まった。
元が洗濯室だとかいう、広くてやたら天井の高い部屋を、オーガなので体が大きいらしいエルゴルさんの宿泊室にするらしく、そこに壁に掛ける大きな布だとか、床に敷く絨毯とかの調度品や、家具などを色々運び込んだりして準備をした。
アリシアのために出来上がってきたベッドも、奥様が、
「ごめん! ちょっとだけ貸して」
とのことで元洗濯室行きになってしまった。
後でシーツは替えてくださるそうで……。
他にも幾つか客室を準備して、準備が終わったその次の日に、エルゴルとかいう人と、その家臣の人たちが、お屋敷にやってきた。
ご領主様と奥様とお嬢様と、それぞれの家臣の方何人かずつの十何人で、お屋敷の玄関先で集まってお出迎えをする。
お屋敷の敷地の門のほうから歩いてくるエルゴルさんを、お屋敷の執事の人が先導していて、歩くエルゴルさんの後ろに馬車が何台か続いていた。
先導している執事の人との対比で、エルゴルさんが、ものすごく背が高いのが分かった。
アリシアは、自分の父親より背が高い人を見たことがなかったのだけれど、このエルゴルという人は、アリシアの父親よりもまだずっと背が高かった。
3メェトルを少し超えてくるくらいだろうか。
短めのズボンから見える脚は、背の高さからすると少し短めで、そのかわりとても太かった。
太い鉤爪があって蜥蜴のような鱗がついている。靴は履いていない。
それから、これも蜥蜴みたいな見た目の太い尻尾が生えていて、後ろのほうまでずうっと長く伸びている。
そして肩から背中にかけてが、何か背負っているみたいに盛り上がっていて、そこから、長い尻尾とバランスをとるように、とても太くて長い腕が左右に三本ずつ、あわせて六本も生えているのだった。
顔は、少し犬歯が発達している以外は只人のそれとあまり変わらない、アリシアの父親と同じような、ごく普通のオーガの顔がついていた。
エルゴルさんが、あまりにも変わった見た目をしているので、アリシアは思わずまじまじと見てしまった。
アリシアは、自分がオーガだから、他の人とは違っていて、それが悩みの種になっていたけれども、エルゴルさんはアリシアとは比べものにならないくらい突拍子もない見た目をしている。
エルゴルさんもエルゴルさんで、オーガが珍しかったのか、こちらに歩いてきながら、アリシアのほうをチラチラと見ていた。
そうして近くまできて、エルゴルさんは、アリシアと一瞬見つめあって、軽く頭を下げてから、ご領主様のほうへ向いて挨拶を始めた。
◆
エルゴルさんは、とりあえずあの金髪の男(ヘレットという名前らしい)と二人で話させてくれと言ったので、そのヘレットの閉じ込められている場所に、ご領主さまが先導して、皆でついて行った。
お屋敷のある敷地内の、お屋敷の本棟から少し離れた分かりにくい場所に、石造りでとても頑丈そうではあるけれども、見た感じはいちおう普通の家みたいに見える建物があって、そこがどうやら牢屋になっているらしかった。
その建物の外の少し離れた場所に、パラソル付きのテーブルと椅子が置かれてあって、そこに女の人が三人いて、お茶を飲んだりお菓子を食べたり本を読んだりしていた。
ご領主さまが近づいていくと、その女の人たちはパッと立ち上がって姿勢を正す。
ご領主さまがその女の人たちに寄って行って、何事かを言うと、女の人のひとりが、懐から大きな鍵を取り出す。
そうして鍵を受け取ったご領主さまは、エルゴルさんに牢屋のものらしき鍵を渡してしまった。
なんか椅子に座って休憩しているように見えた女の人たちは、よく見ると武装しているし、ああ見えて牢屋の建物を見張っていたらしい。
鍵を渡しちゃっていいのかなとアリシアは思ったけれど、ご領主さまが渡しちゃったんだから、どうしようもない。
そこで皆は留まって、エルゴルさんだけが牢屋の建物のほうに歩いて行った。
エルゴルさんが外から呼びかけて、それから扉を開くと、あの金髪のヘレットらしき男の大きな声がアリシアたちのところまで聞こえてきた。
それから、エルゴルさんが大きすぎて牢屋の建物の中に入れなかったらしく、建物の入り口のところでしばらくヘレットと二人で小声で話していた。
それから
「もうこのまま会談をするところまで連れていってもいいだろうか。用事は先に済ませたいのだが」
とエルゴルさんがご領主さまに聞いて、ご領主さまがいいと言ったので、金髪のヘレットは縄とかで縛られるでもなく普通に歩いて出てきた。
ヘレットの奴はなんだかニヤニヤしていた。
そしてアリシアがいるのに気づくと、ものすごい顔でアリシアを睨んできた。
なんだかあまり反省とかしているようにも見えない。
なんだこいつと思ってアリシアが見ていると、ヘレットは
「なあ、旦那ぁ、すぐにこんなとこから帰してくれよォ!こんなとこにいられるか!」と騒いだ。
「駄目だ。踏むべき手順というものがある」と淡々とエルゴルさんが返す。
◆
それで、皆で移動してお屋敷の大広間に入る。
アリシアがお嬢様からマントをもらった時の食事会とかで使った部屋で、その時と同じように真っ白なクロスのかかったテーブルが設えられてあった。
向こう側とこちら側で、一列ずつ並べられたテーブルの、向こう側の列の真ん中あたりの席に、エルゴルさんと金髪のヘレットの奴が隣り合って座り、その左右にエルゴルさんの家臣らしき人が座っていく。座り切れない人はエルゴルさんの後ろ側に椅子の列を作ってそこに座っていく。
ちなみにエルゴルさんの席は単に木の台に布をかけたものだった。
そしてこちら側の列には、旦那様と奥様が並んで座り、奥様の右にはお嬢様が座って、そのさらに右に、長持を積み重ねて布をかけて作ったアリシアの席が用意されてあった。
そして左右の席には旦那様や奥様の家臣の人がずらずらと座って、座り切れない人は後ろにさらに椅子の列を作って座って、さらにその後ろにはオークのアイシャさんとか黒エルフのコージャさんとかケンタウロスのウィッカさんが立っている。
「まずは被害者の傷を確認したいがよろしいか」
とエルゴルさんが言ったので、奥様が後ろに立っていたメイドさんに振り返って耳打ちすると、すぐにヨランダさんがメイドさんに連れられて大広間に入ってきた。
奥様が立ち上がって、少し椅子を避けて隙間を空けたので、アリシアも、反対側のお嬢様を抱っこして立ち上がり、同じようにお嬢様の椅子をどけて隙間をあける。
すると、奥様の椅子とお嬢様の椅子の間にヨランダさんが入ってくる。
エルゴルさんがぐっと身を乗り出して、ヨランダさんの顔を覗き込む。
「うむ、確認した。この傷はこのヘレットに負わされたもので間違いないな?」
「はい」とヨランダさんが答える。
「嘘だ! 俺がやったっていう証拠でもあるのかよ! 俺はやってねえぞ!
俺はこのオーガにいきなり殴られただけだ!」
と金髪のヘレットが、アリシアのほうを指差してわめきはじめた。
アリシアは一瞬ヘレットの奴が何を言っているのか分からなくて、ヘレットの顔を見ると奴は薄ら笑いを浮かべている。
つまりシラを切るつもりだと理解すると、アリシアは今まで感じたことがないような、髪の毛が逆立つような怒りを感じた。
これはいったいどうすればいいのか。
考えるけれどもロクに頭が働かない。
何をどうすればいいのか。こんな人間がこの世にいるのか。こんなことが許されるのか。
のろのろとしか動かない頭が空回りしているうちに、遠くの雷の音のような、何かを引き裂くような、振動するような、獣の唸り声のような音が聞こえてくるのに気が付いた。
皆黙ってしまって、ただ耳障りなその音だけがずっと聞こえている。
「アリシア、落ち着きなさい」
という奥様の声が聞こえて、アリシアが奥様のほうに振り向くと、耳障りなその音がやんだ。
あれ、と思ってアリシアが周りを見回すと、皆がアリシアのほうを見ている。
どうもこの音というか唸り声は自分から出ていたらしいとアリシアは気づいた。
「ヨランダ、もういいわ」
と奥様がいとも優しくおっしゃって、それでヨランダさんは後ろに下がった。
「アリシアも座りなさい」
と奥様がおっしゃったので、アリシアはとりあえずお嬢様の椅子の位置を戻して、そこにお嬢様を据えてから、自分も座り直す。
どうも感情にまかせて唸ってしまったけれど、ヘレットの顔から薄ら笑いが消えただけでも、アリシアは嬉しく感じた。
すると、エルゴルさんがひとつ咳払いをして
「この私、エルゴル・セックヘンデは、我等が閥の主であるドライランター公爵、並びにこのヘレットの直接の主人であるゴルダネスハー伯爵より委任を受け、この件に関して、ドライランター公並びにゴルダネスハー伯の代理としての権限を持っている。
その私は、今このヘレットが言ったことには同意しない。
このヘレットがヨランダ嬢の顔を刃物で、深く何度も傷つけたと認める」
と言った。
「なに言ってんだよ旦那! どっちの味方だよ!」
ヘレットの奴が驚いたように叫びたてる。
「なにといっても、いま言ったままだが?
お前がヨランダ嬢を無理やり連れだそうとして、断られたら逆上して刃物で顔を何度も切ったのだろう?
人を何人か街にやって聞きこみをさせたが、証言は一致していたし、第一、さっき牢屋のところでナイフで顔を切ったのかと聞いたら、やったとお前が言っていたではないか」
「なにバラしてるんだよ! なにしに来たんだよ! 助けに来てくれたんじゃないのか!?」
「もちろん助けに来たさ。
仮にお前が不当な言いがかりをつけられているのであれば弁護もする。
しかしながらどうやら不当ないいがかりではないのだろう?
むしろ、お前が不当な言いがかりをつけたせいで怒っているこちらのオーガのお嬢さんが、もしお前の首を毟り取りにくるなら守ってやるさ。今のところはな。
お前がこれ以上妄言を垂れ流すなら守る気も失せるかもしれんが」
そう言ってエルゴルさんはこちら側に向き直り、
「帝国金貨による賠償を受け入れてくださるだろうか?」と言った。
「他に仕様がないですし、それで結構です」とご領主さまが答える。
「ありがたい。ではまず奥方に帝国金貨20枚で、ヨランダ嬢の顔の治療を依頼する」
そう言ってエルゴルさんが合図すると、布の袋を一つ持った男の人がこちら側に回ってくる。
そうするとこちら側の後ろに控えていた、奥様の家臣らしき女の人がそれを受け取って中を確認する。
「確かに」とその女の人が言う。
するとヨランダさんがまた奥様の座っているあたりに連れてこられて、奥様がヨランダさんの顔に手をかざすと、白い光がさっと出て、ヨランダさんの顔の傷が跡形もなく消えた。
素晴らしい腕前だ、とエルゴルさんが呟いて
「それからヨランダ嬢に対する慰謝料として金貨20枚、そのオーガのお嬢さんへの不当な言いがかりに対する慰謝料としてさらに20枚」と続ける。
また男の人が今度は両手に袋をひとつづつ持って回ってきて、ひとつをヨランダさんの前、もうひとつをアリシアの前に置いた。
「高すぎる! なんで花売りの女なんかにそんなに払うんだ。馬鹿げてる!」
と、またヘレットの奴が叫ぶ。
するとエルゴルさんが
「ほう、高すぎると? この金はお前の身柄のためにも払っているのだが。
それとも、お前を殺そうと埋めようと好きにしてくれても、私たちの閥は何も関与しないので、お前を好きなようにして、ヨランダ嬢の傷や、オーガのお嬢さんへの侮辱について復讐をするようにと言ってほしいのか?」
そう言って、後ろに控えている人に耳打ちし、言葉をつなぐ。
「ヘレットよ。お前は自分がどれほどのものだと思っているのか。
他領で無辜の領民を誘拐しようとし、その領民の女性の顔を切りつけ、挙句の果てにはシラを切ろうとし、ドライランター公にも、ゴルダネスハー伯にも、この私にも恥をかかせ続け、当地の領主であるファルブロール伯、その奥方、またその御令嬢の前で醜態を晒し、我らが閥への心証を著しく悪くしているお前が」
そうしてエルゴルさんは、後ろに控えている人からまた袋を三つ受け取って、それぞれ一個ずつ三本の腕で持って、席を立ち、テーブルを回ってこちらにやってきた。
それでもまだ三本も腕が余ってるのだからすごいものだ。
「このヘレットが傷つけた女性を非常によく治療してくださった奥方に御礼としてさらに20枚、さらなる侮辱を受けたヨランダ嬢に慰謝料としてさらに20枚、またこの愚か者が誘拐という罪を犯すのを防いでくださったこのオーガのお嬢さんにさらに20枚」
そう言いながらエルゴルさんは持っていた三つの袋をそれぞれ、奥様とヨランダさんとアリシアの前に置いた。
それからエルゴルさんはご領主さまのほうを向いて、
「ヘレットを入れておくのにあと二日ばかり牢屋を貸していただけるだろうか」と聞いた。
「な、ふざけるなよ!」
とヘレットが騒いだけれど、ご領主さまは「ええ、もちろん」と言って牢屋の鍵を渡してしまった。
エルゴルさんはノシノシとヘレットのそばまで歩いていって、
「私たちはこれからここで食事に呼ばれるわけだが、お前と食卓を囲みたい人はおらんのだよ。
かといって目を離すわけにもいかんからな。なに、私たちが帰るときには一緒に連れ帰ってやるさ」
そう言ってヘレットを掴み、持ち上げてしまった。
そのままエルゴルさんは部屋から出て行ってしまい
「もうひと月も入れられてたんだぞ!」とかなんとか騒いでいるヘレットの声が、徐々に小さくなっていったのだった。




