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ハーフオーガのアリシア9 ― 令術のお勉強 ―


 食事と「マントのこと」というのが終わって、そのあと色々とご領主様の家中の人と引き合わせてもらって挨拶などしてから、


「とりあえず今日は夕食まで自由にしてるといい」

とご領主様に言われたので、アリシアはまたメイドさんに先導してもらって部屋まで帰り、ベッドに寝転がった。


 元が厨房だったせいか、少し煤けている高い天井を眺めながら、ついに奉公が始まったんだなあとか感慨深く先ほどのことを思い返していると少し眠気がきて、うとうととそのまま寝てしまった。


 

 ドアをノックする音が聞こえてきて、目を覚ましたら、知らない天井で、ここはどこなんだろうと一瞬考えてから思い出す。

 はいと返事をすると「開けるぞ」とスクッグさんの声がしたので、反射的に飛び起きてベッドに座る。


 開いたドアの隙間から、スクッグさんの世にもきれいな顔がのぞいて

「令術戦闘について教えておこうと思うんだが……疲れてるなら後にするか?」と言う。


 そういやそんなことも言ってたなとアリシアは思い出す。

 大丈夫です、いけますと返事をすると、

「そしたら鎧兜と……そうだな、あと大剣だけ持って一緒に来てくれ」

と言われたので、続き部屋の方にいって、色々身に着けてスクッグさんの後についた。


 広い部屋で良かったなとか、そうなんですよ、とか話しながらスクッグさんについていくと、広い空き地みたいなところに出た。練兵場というらしい。

 練兵場の中には、端の方にところどころ土を盛り上げて造ったらしい小山があった。


 真ん中あたりまで歩いて、それからお互いに少し距離を取ってから向かい合う。


「さて、まずはお勉強だが、アリシア嬢は令術は何から発生していると思う?」

とスクッグさんが聞いてきた。


 昨日泊まった宿でスクッグさんが風呂を沸かしてくれたときに、ナノマシンがどうとか言っていた気がする。

「確か……ナノマシンっていう粉がそこらじゅうにあって、それで令術が使えるとか……」


「そうだな、その通りだ。

 このナノマシンという粉はこの世界のあらゆるところにある。例えば空気の中に」

 そう言ってスクッグさんが手をひらひらさせると、ピュウと音がしてアリシアの方に向かって小さな風が吹いた。


「そして土の中にもある」

と言ってスクッグさんがしゃがんで地面に片手をついて、その手を上に引き上げると、手のひらにくっつくようにして地面が柱のように持ち上がってきた。


「ここには水がないので実演できないが、もちろん水の中にもある。

 昨日の宿で風呂を沸かすために私が水を操ったのを見ただろう?

 それと、私たちエルフにとって重要なのは植物の中にもあることだな。

 生体の中にあるナノマシンは操りづらいのが普通だが、エルフという種族は植物の中にあるナノマシンを自在に操り、ひいては植物を操ることができる。

 これは世界から我等の種族に与えられた特典だ。


 この生体の中にあるナノマシンは操りづらいというのは重要でな。

 正確に言えば『自分以外の生体の中にあるナノマシンは操りづらい』ということになるんだが、つまりこの瞬間に私がアリシア嬢の心臓を停めたりすることはできないということだ」


 すごい恐ろしいことを言うものだと思いながらアリシアが話を聞いていると、スクッグさんが

「まあ生体の中にあるナノマシンは操りづらいと言っても例外はあるが」

などとますます恐ろしいことを言う。


 それからスクッグさんが、持ってきた大剣を貸してくれというので、アリシアは大剣を抜いて柄の方を差し出した。

 ありがとうと言ってスクッグさんは大剣を受け取ると、

「ではナノマシンが何をしてくれるのかというと、アリシア嬢にもっとも関係がありそうなのはこれだ」


 そう言ってスクッグさんは、大剣を持ったまま、その場で足を揃えて、直立してから腕を横にめいっぱい伸ばして、大剣を真横に差し出した。

 それで、スクッグさんの姿は横棒が片方に長い十字のような体勢になっている。


「これを見てくれ。令術の補助がなければ私はすでに転んでいるはずだ。でも実際は転んでいない」

とスクッグさんは言った。


 あまりに自然にやったものだから気が付かなかったけれど、そう言われれば確かにおかしい、とアリシアは思う。

 アリシアの大剣はオーガ用なので、全長が長いし身幅も広い。

 頑丈さを重視してか、すごく肉厚でもある。つまり重い。


 そんなものを脚を揃えて直立した人間が、片手でめいっぱい腕を伸ばして真横に差し出したら、普通は転んでしまわないとおかしい。


 確かにそうですね、とアリシアが答えると、

「そうだろう。つまり令術を用いることで、この大剣の見かけ上の質量や慣性が変わってしまっているわけだ。こういう武器や自分自身の体を操る令術を【令体術】と言ったりもする。武器の金属の中や、自分の体の中にあるナノマシンを操っているんだな」

とスクッグさんが教えてくれる。


 ほうほう、とアリシアが感心していると、スクッグさんがアリシアの方を見て、

「感心しているようだが、君も令体術を使っているんだぞ」と言う。


 どこで使ったことがあったんだろうと考えていると、スクッグさんが苦笑しながら、

「いま君が着ている鎧は、令術の補助無くしては、普通は重くて立ってもいられないようなものだ」

と言った。


 えっ!?とばかりにアリシアは自分の付けている鎧を見てしまう。 


「それにこの大剣だって、君は小枝を振るみたいに振り回していただろう。

 ああいうことは普通はできない。

 まあ、君の筋力が強いのもあるんだろうがそういうことだ。

 オーガは種族として令体術を能く使う。得意なんだ。

 もちろん鎧やこの大剣にもヴルカーンのやつが晶術石を入れて色々と細工してあるがね」


 ヴルカーンさんが色々やってくれていると思ったらそういうことだったのか。

 ただでさえ壊したら修理とか高そうだと思っていたのに、そんな大層なものだったら、壊れたり誰かに盗まれたりしたらどうしようとますますアリシアは不安になる。


 それなのにスクッグさんは

「だからまあアリシア君の戦闘のやり方としては、この分厚い鎧で身を固めて、飛んでくる矢玉の類は弾きながら敵陣に突撃して、この大剣などの重量武器を当たるを幸い振り回す、というようなのを考えているわけだな」 

などと、ますます鎧が壊れそうなことを言う。

 というかそんな戦争みたいなことになる場合があるんだろうか。


「まあそういうわけでな。アリシア君に令体術は教えなくても、もう十分使えている。

石を拾って投げるとかも得意なんだろう?」

 あれは武器を令体術で振り回すことの延長だからな、と説明が入る。


 そう聞かれて、狩りで獲物をしとめるときに石は投げます、と答えると

「そうだろうな。スタルク殿から石や槍を投げるのもかなりやると聞いた」と褒めてくれた。


「あと、治癒術は普通はオーガには使えない。よほど年古りた高位のオーガなら使うこともあるようだが、アリシア君は若いからな。とりあえずは関係ない。

 となると、だな。あとは自分に向かって飛んでくる令術を叩き落したり、消したりする訓練をすればいいわけだ」


 では始めようか、とスクッグさんは言って、少し歩いてアリシアから距離を取ってから向き直った。


「令術を相手に向けて飛ばすやり方は【投射令術】とか単に【投射術】と言ったりする。

 ……それで、投射令術と言えばまずこれだ」


 スクッグさんはそう言うと、地面に手を当てて土の塊を掌にくっつけるようにして取り、それを下手投げでポイッと投げた。

 投げられた土の塊はそのまま地面に落ちずに、空中で静止する。


「令体術による投石やらと違うところは、あれは投げる瞬間に投げる物の運動力を操作するのに対して、投射令術はその操作が投げた後にも及ぶということだな。こんなふうに……」


 スクッグさんはそう言って、今度は空中の土塊をすいすいと左右上下に自由自在に動かす。


「これをなるべく高速で敵にぶつけて敵を加害するというわけだが、まあこれについては、あまりアリシア嬢は心配しなくていいはずだ。

 自分や武器に纏わせた令体術で投射令術を相殺して消すことができる。

 どちらも運動の操作に関することだからな。本質的には同じだからだ。

 さあ、殴って消してごらん」


 そう言ってスクッグさんは土塊を操作してアリシアの前で静止させる。

 アリシアがガントレットを付けた右拳で殴ると、土塊はぼろりと崩れて地面にばらばらと落ちた。


 スクッグさんは、上出来だと言って満足そうにうなずきながら

「まあ、あまり大きいのとか速いのが飛んできたら、避けるなり剣で叩くなり盾で受けるなり、適切に判断することだ。投射術を受けるのは令体術に属することだからな。アリシア君なら問題ないだろう」と言った。


 アリシアは狩りのときに猪とか魔獣がこっちに突っ込んできたときみたいな扱いでいいのかなと思う。

 いけそうなら、そのまま受け止めて捕まえるし、ちょっとキツそうならいったん避けて、矢を撃ち込むなり、刃物を投げつけるなり、なんとかしていた。

 アリシアにとっては日常の仕事と同じようなものだ。


「オーガが槍やら石やらを投げているのを見ると、あまり大きくではないが、相手に当たるように、微妙に軌道が曲がってたりするからな。

 オーガが本格的に投射令術を使っているのは見たことがないが、令体術の延長みたいなところで、オーガもこの類の投射令術は多少は使えるんだろうと思う。

 アリシア君も練習すれば石や武器などをぶつける系統の投射令術は使えるようになるだろう」


 そう言われればアリシアも、逃げる熊とかに槍を投げつけて、当たれと念じるとちょっと投げた軌道が、当たるように曲がることがあるような気がする。

 あれはそういうことだったのかと腑に落ちる感じがした。

 今度からもっと曲がれとしっかり念じるようにしようとアリシアは思う。



「それから今日のところはこれで最後だが、投射術の代表的なもう一つの使い方はこれだな」


 そう言ってスクッグさんは、掌から光の球を出現させた。

 そしてその光球がすーっとアリシアの方に飛んでくると、アリシアの前で止まってポンッと音をたてて弾ける。


「これは爆発の投射令術だな。アリシア君は爆発というものを見たことがあるか?」


 アリシアは、爆発というものがあることは知っているけれど、それをあんまりよく知らない。

 でもアリシアが住んでいた小屋の麓の村でお祭りがあるときには、術士様がやってきて、花火を上げてくれるので、それは見たことがあります、と言った。


「そうだな。花火も投射令術を用いた技術だな。あれを戦闘に転用するわけだ。

 爆発がどうやって起こるかというと、空気というものは熱すると膨張するという性質を利用する。

 だから急激に空気を熱してやれば、急激に空気は膨張する。

 急激に空気が膨張すると爆発が起こるんだ」


 こんなふうにな、と言ってスクッグさんはコインくらいの大きさの白い光球を三つくらい作り出すと、それを空のほうに向かって撃ちだした。

 見上げると、光球は空で破裂して、ボンボンボンと音がする。

 お祭りのときの音だ! と思ってアリシアは楽しくなる。


「そしてこれの威力を上げて空じゃないところに撃ち込むとどうなるかというわけだが……」

 スクッグさんはそう言うと、アリシアに両手で耳を塞いで口を半開きにしなさい、と言った。

 どういう意味かよく分からなかったが、アリシアはおとなしくその通りにする。


「一応の用心だな。本当は目のほうこそ閉じたほうがいいんだが、それだと見えないからな。

 衝撃は、なるべくそっちに行かないようにはするからな」

 アリシアが耳を塞いで口を開けたのを確認すると、じゃあいくぞ、とスクッグさんは言って、掌くらいの大きさの白い光球を作り出すと、ずっと向こうの地面に投げつけた。



 その瞬間に、目を灼くような強い光があって、目が眩んだかと思うと、お腹の皮が震えるみたいな轟音がした。

 アリシアはぱちぱちと瞬きをして、目がちゃんと見えるようになってから、光球が炸裂したあたりを見ると、地面が少し抉れていた。

 

「アリシア君のような前衛はこれを何とかしなきゃならんわけだ」

とスクッグさんが、なんでもない事のようにさらっと言うけれども、そんなの無理! とアリシアとしては突っ込みたいところだ。



 ――と、そこへ土を踏む足音が聞こえてきて、そちらに目をやると、奥様に抱っこされたお嬢様と、あとオークのアイシャさんと、黒エルフの何とかいう子が、連れ立ってこっちへやってきているのが見えた。

 大きな音がしたから様子を見に来たんだろうか。


 アリシアが兜を取って会釈をすると、奥様とお嬢様とアイシャさんが手を振ってくれた。嬉しい。


 兜をかぶって向き直ると、金の髪を日差しに輝かせながら同じく帽子を脱いで挨拶してからかぶり直したスクッグさんが

「これは、風呂を沸かすときのような、熱の操作についての令術を待機状態にして敵に投射し、敵の近くで開放し、空気の急激な膨張を引き起こして、爆発させて攻撃するんだな。

 令術を待機状態にして、投射して、相手の近くで炸裂という段階を踏むから、普通に石などを飛ばすよりも難易度が高い。

 威力は光球の大きさと、光の色に比例する。

 大きければ大きいほど威力は高くなり、色は赤、橙、黄、黄白、白、青白、青の順で威力が高くなっていく」

 そう言われてアリシアは、あのスクッグさんが風呂を沸かしてくれたときは手元が赤く光ってたなと思い出す。


「まあ、大きくて威力の強そうな投射令術は、自陣のほうの術者が対抗令術で消したり弾いたりしてくれるからな。負けそうなとき以外は、あんまり心配しなくていい。

 だからアリシア君は自分の近くの小さくて威力の高くないやつを自分で消せるようになっておけばいいわけだ」

 味方もヤバいのから対処して消していくからな、とスクッグさんは付け加える。


「そこで威力の低い投射術をどうやって消すかだが、オーガは【咆哮】の技能が使えるからな。

 アリシア君の【咆哮】はかなりの威力だとお父上から聞いているぞ」 


 アリシアは確かに【咆哮】を使うけれど、今まではいつも狩りに出て、猪とか鹿とかの、逃げる獲物を硬直させて足止めするのにしか使っていなかった。というより他の使い方があるとは思いもしなかった。


「では、今から威力の弱い爆発の投射術をいくつか投げるから、咆哮で消してみてくれ」


 そう言ってスクッグさんが、今度は掌くらいの大きさの橙色の光球を五つくらい作り出す。

 そのうちの一つがアリシアのほうにゆっくりと飛んでくるけれども、そんな【咆哮】だなんてことを、スクッグさんの前でアリシアができるわけもないのだった。


 スクッグさんの前で大量に食事を積み上げて貪り食うさまを見せることすら、アリシアにとってはためらわれるのに、そんな大口を開けて野獣か魔獣もかくやというような咆哮をスクッグさんにご披露するなんてことはとても無理なのだった。

 

 横目で見れば、お嬢様や奥様やアイシャさんもこっちを見ている。

 それなのに凶暴な魔獣かなにかみたいな声を聴かせるのか。

 怖がられたらどうしよう、ひょっとして追い出されたらどうしようとアリシアがためらっているうちに、光球がひとつアリシアの胸のあたりに着弾してドコン! という音とともにアリシアは吹き飛ばされて、もんどりをうって仰向けに倒れた。


 あっ、何やってるんだ!大丈夫か!? とかスクッグさんが慌てている声が聞こえた。

 どこも体に痛いところはなかったけれど、胃の腑がしくしくするような、不安感や憂鬱さがある。

 いつだってこれだ。

 自分はオーガなのに、皆はそうではなくて……。

 と、アリシアの心は半ば逃避して、寝転がったまま他ごとを考えて、見上げた青い空と、汗が目に染みたのだった。


 スクッグさんが寄ってきて、手を差し出してくれたけれども、アリシアはオーガの自分が、華奢なエルフのスクッグさんに手を引っ張って体を起こしてもらうという構図がなんか嫌で、あわてて身を翻して跳ね起きた。


「大丈夫か? 体調が悪いのか」

「大丈夫です、やれます」


「本当に大丈夫か、疲れてるんじゃないか?」

「大丈夫です、ちょっとぼんやりしてしまっただけで……」


「集中しないといけないぞ。訓練には自分と味方の命が懸かっている。全力でやらなければならん」

「はい」

「この訓練も奉公のうちだからな、一生懸命やりなさい」

「はい」


 野獣みたいに見られるのも嫌だけど、がっかりされるのはもっと嫌だ。


 スクッグさんがアリシアから離れてもう一度距離をとる。

 光球がまた五つスクッグさんの掌から出てきて、色が橙から赤に変わっているのは、さらに手加減してくれたんだろうか。

 光球が一個ずつ順番にアリシアのほうに向かって飛んでくる。

 それを睨みつけると、光球の向こうにスクッグさんの顔が見えたが、もう見ないようにして、狩りのときのように【咆哮】した。

 我ながら人間じゃないと思うような轟音がして、光球がひとつ溶けるように消えた。


「いいぞ!」とスクッグさんが声をかけてくれるけれども、お嬢様や奥様やアイシャさんはどんな顔をしているだろうか。怖くて見られない。


 右から左から上から下から後ろから速く遅く、時には複数飛んでくる光球を順番に【咆哮】で消していく。

 そうするたびにアリシアの本当の姿が、他の人の目に明らかになっていく。

 【咆哮】するたびにアリシアは自分の自尊心が削れていって、自分の身がなくなるような心持がして、涙さえ浮かんできたような気がするのだった。


 考えてみれば、アリシアは地元の村の子供たちと仲が良かったけれども、父親以外には誰にも狩りをしている様子を見せたことがなかった。母親さえもアリシアが狩りをする様子は見たことがない。

 そうアリシアが意図したわけではないけれどもそうだった。


「これで最後にするぞ」

というスクッグさんの声とともに、今度は黄色がかった光球が十ばかりも飛んでくる。


 あと十回も咆哮するところを見られるのかとか、もうヤケクソだとか、それでも感情を抑えて冷静に行動するようにという子供のころからの教育の成果か、消え入るような心持とか哀しさとかとは別に、頭の芯だけ妙に冷静で、深く息を吸い込むと、アリシアはひと際大きく咆哮する。

 

 空間全体が振動するような、軋むような爆音とともに光球が全部消え去った。


「すごいぞ、やるじゃないか!」とスクッグさんが大声をあげる。

 褒めてくれるけれども、アリシアは何か現実感がなくなって、ふわふわとした気分になる。

 スクッグさんにお礼を言って、訓練を見ていた奥様やお嬢様やアイシャさんや黒エルフの女の子にボソボソと挨拶をして、自分がそうしたというよりも、勝手に体や口が動いたみたいな感じで、おかしくならないように最低限の会話をそれらしく済ませたかと思うと、アリシアはそそくさと部屋に向かう。


 部屋に入ると鎧兜を外して、大剣と一緒にして続き部屋に放り込んで、ベッドにうつぶせに倒れこむ。

 するとシーツの心地よい感触はしたけれども、アリシアは無性に悲しくなって、そうやってベッドに突っ伏している自分の姿を天井から自分が見ているような気がして……そうしてアリシアは眠ってしまった。


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