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魔法を覚えよう 二話

前話の続きです。

楽しんで頂ければ幸いです。


 魔法使いギルド。


 実際に案内されるまで、どんな場所なんだろうかといろいろ想像をしていたが、まさかこんな場所だとは思わなかった。


 侵入者を拒む移動式の鉄の柵が設置された厳重な門、そしてその門を守る鎧で完全防備された警備兵。魔法使いも体力が必要らしく運動して身体を鍛える為の広場、そして多くの魔法使いが日々魔法の習得に勤しむ建物って、ここ絶対学校だろ?


 職場っぽさは無いし、研究機関っぽい感じも無いし、俺より少し幼い少女達が色んな場所にいるし、みんな制服姿で楽しそうにおしゃべりしてるんだけど? ここが魔法使いギルド? ギルドって組合の事だよな?! 間違ってもスクールって意味じゃねえぞ!! 


「ここが本当に魔法使いギルドなのか?」


「そうだよ。何処から見ても魔法使いギルドにしか見えないでしょ?」


「……みえねえよ」


 魔法使いギルドというからには、こう……、古ぼけてひび割れたレンガ造りとかの何となく歴史が窺えるような趣のある古い建物があって、そこで長年研究を続けているちょっと歳の魔法使いが怪しい儀式繰り広げてるイメージしてた。ここは俺が通う桜花魔法学校(おうかまほうがっこう)と雰囲気とか殆ど変らないんだけどな!!


 校門を守る守衛さんだろ? あの警備兵。


 な~んか、魔王軍の魔物に侵攻されてる世界って認識がどんどん薄れて行くな。


 ここって魔王軍が迫ってくる最前線の砦のすぐ近くの街なんだけど?


「すいません。私はアーク教の巫女ですが、こちらの冒険者と魔法の知識を求めに来ました。師狼(しろう)、冒険者カードをみせて」


鏡原(かがみはら)師狼(しろう)です。これ冒険者カード」


「……男の冒険者が魔法? へぇ、初めて見たよ、才能ある子もいるんだねって。なんだい、この能力値? 男で魔力二百ってのも凄いけど、他が全部測定不能? 全てのステータスが一万超えてるのかい? 信じられないね」


 あれ? 鎧着込んでたからわからなかったけど、警備兵って若い女の人? まあ、この世界だと能力的にそうなるのか?


 冒険者カードを確認する為に邪魔だったのか、フルフェイスの兜を外したけど凄い美人だ。


 ただ、紗愛香(さえか)桜花魔法学校(おうかまほうがっこう)の女生徒と同じ様な、妖しい光を瞳に浮かべているのが若干気になるんだけど……。


「アレ上限一万なんですか? でも、(ヴリル)が一万超えた時点で、殆どの能力値は同じレベルに上がりますよね? というか、耐久力とか限界まで上がって無いと音速超えて走った時点で自滅しますよ?」


 俺の知り合いで音速超えてるのは僅かに二人だけだ。


 うちの爺さんとその爺さんの親友だけど、稽古をつけてやるとか言われて模擬戦した時にめっちゃ強かったのを覚えてる。


 ん? この人、俺の顔を見てちょっと肉厚の唇を舌先で舐め始めてない?


 妖しい光を浮かべてた瞳が更にギラギラ輝いてるし、雰囲気も結構やばめなんだけど。


「男の(ヴリル)が高いって言っても、せいぜい千までだよ。……あんた顔も好みだし、そこで()()()()()()()()行かないかい? 大丈夫、怖くなんて無いから……」


「い・き・ま・せ・ん!! いきなり師狼に手を出そうとしないで貰えますか? あ、その耳!! あなたエルフ系の人? それにその金色の瞳、森の淫魔で有名な呑化樹(モッコク)の精霊まで宿してますよね? まさか…………」


「エルフ? それに呑化樹(モッコク)?」 


「エルフっていうのはあんなちょっと長い耳をした種族の事です。あと、深い森の奥に生える呑化樹(モッコク)って木があるんですが、その木に宿る精霊は気に入った人間が通ると魔法でその人を石に変えて、その石像と同化して木の中に取り込んじゃうんですよ。それも、気に入っちゃったら男でも女でも関係なく。それで石に変えられて一度取り込まれちゃったら最後、その木の中で永遠に終わらない淫夢(ゆめ)の中でその人を愛し続けるんです」


 石化した身体を取り込んで魂にまで根を伸ばすと言われ、下手をすると千年単位で呑化樹の精霊の虜にされ続ける。


 呑化樹(モッコク)が多い森などは人食いの森と呼ばれ、取り込まれた人間を取り出すのは非常に困難だと言われていた。



呑化樹(モッコク)の精霊は愛が深いんだから仕方がないだろ? 相手を石に変えるから殺す事も無いし、取り込んだ後も生身の肉体と違って朽ちないから、永遠に愛し合えるんだよ? まあ、私は呑化樹(モッコク)の精霊と契約してるだけだから、そこまでしないけどね。淫愛魔法(ラブチャーム)の瞳で、いつもよりちょっと気持ち良くなるだけさ。アンタもエルフとのハーフを私に生ませてみたいだろ?」


「いえ、遠慮しておきます」


「そうかい。ざんねんだねぇ。気が変わったらいつでも訪ねておいでよ。いつでも極上の快楽を教えてあげるさ」


 名も知らない警備兵は唇に人差し指を当てて、微笑みながらウインクして見せた。


 アレ女性慣れしてない人間だと即オチするぞ……。


「行きますよ師狼!!」



 シルキーは俺の腕をつかんで強引に校内へ進み始めた。


 俺の姿を見て制服に身を包んだ魔法使いたちが不思議そうな顔をしている。


 まあ、さっきの反応もそうだけど、男で魔法を使える人間が本当に少ないんだろうしな……。



◇◇◇



 予想通り校舎と呼んだ方がいい感じの建物の中は、俺達みたいな外部からの侵入者にとっては非常に居心地が悪い。


 この辺りは学校と変わらないな……。


 卒業した中学とかに行事で遊びに行った時もこんな感じだった気がする。



 なかに足を踏み入れた俺は好奇の視線にさらされていた。


 別に不審人物という事ではないのだが、誰アレ? なんで男がここにいるの? 不審人物? やっちゃう? といった桜花魔法学校(おうかまほうがっこう)に登校した初日に散々味わった洗礼をうけている。


 今回はいきなり高飛車なお嬢様が因縁をつけてこなかっただけマシだな。


 そういえばあの時は美剱(みつるぎ)瑞姫(みずき)が助けてくれた。


 瑞姫(みずき)は正義感の強いいいやつだとは思うんだが、自分の実力以上の相手にも勇敢に立ち向かうのがよろしくない。


 いつか酷い目に遭うぞ……。その時俺が傍にいてやれればいいが。


「魔法使いギルドに所属していない人が魔法を教わるには冒険者ギルドの紹介状とか、アーク教の紹介状が必要なんだよ。今回は私がいるから問題無いけど」


「アーク教の巫女だからそれなりに信用があるのか……」


 普段の生活状況とか見てたら信じられないけどな!!


「当然!! アーク教の巫女になるには厳しくて長い修行と類稀なる才能が必要なんだから。その修行に耐えきって巫女の地位についた者には相応の信用があるの」


 自分で言うかコイツ……。


 まあ、アーク教の巫女はかなり貴重らしいから必要な才能だけじゃなくて、修行が相当厳しいんだろうけど。


「頼りにしてるぞ。で、何処に行けばいんだ?」


「魔法使い見習の子達はあっちの建物で熟練魔法使いに色々教えて貰えるんだけど、外部から訪れた人はあっちでお金を払う必要があるの」


「魔法版の学習塾みたいなものか? 魔法を覚えたいって人が割と多い?」


「滅多にはいないと思うよ? 家がある程度裕福で才能のある子は小さい頃から魔法使いギルドのアカデミー部門で魔法を勉強するし、お金が無くても冒険者ギルドに登録した時に魔力(マジカル)が高いと魔法使いギルドに行く事を勧められるから」


 アカデミー部門は別の場所にあるそうだ。


 魔法使い版小学校みたいなもんか?



「ここよ」


「魔法教習所受付……。学習塾というよりは自動車学校みたいなもんか? 魔法は免許制じゃないだろうけどね」


「それが何かは知りませんが、ここは基本的な魔法の知識はもちろん、実際に使用可能な魔法などを有料で教えてくれるありがたい場所なんですよ。まあ、一部適正とか様々な問題で使えない魔法とかあるけど……」


「適正? 人によって使えたり使えない魔法があったりするのか?」


 元の世界では魔法が使えるかどうかは魔力(マジカル)の量によって決まった。


 もちろん、魔力(マジカル)が低ければ魔法が発動すらしないのだから、得手不得手を判別する以前の問題だ。


「言い方が少し悪かったですね。その人の問題というより、種族的な問題かな? この世界には人間のほかに亜人種と呼ばれる人に近い姿をした種族がいるの。悪意がある一部の人は人外だとか人モドキとか言ったりするけど、外見以外は殆ど私達と変らないよ。ま、身体能力とか色々違いはあるけど、私はそれぞれの個性だと思うな~」


「そういえばさっきエルフとか言われてたあの人もそうなのか?」


「そうだよ。あの人が半精霊種のエルフ、他にも身体がかなり小さい完全精霊種のフェアリー。魔物と間違えられやすい半獣人(ハーフビースト)、それと、人間と敵対する魔物系や魔族。魔族は魔王とその手下だけで、魔族は基本的に魔王領でしか見る事は無いんだけど、たまに魔物を引き連れて町や村を襲ってくるの」


 意外に種族は多かった。


 それにしても、この世界には真魔獣(ディボティア)がいないで何より。


「それで使える魔法の制限というのはどんな感じなんだ?」


「エルフの精霊魔法、フェアリーの妖精召喚術、半獣人(ハーフビースト)狂暴化(バーサーク)系。魔族の悪魔呪術(デモナスペル)系? 細かくいえば他にも色々あるんだけど、おおざっぱにこれだけ覚えてれば大丈夫かな」


「それは種族が違うと魔法自体が覚えられないのか? それとも魔法を覚えても発動しないという事か?」


「たとえばエルフの精霊魔法なんかは自分が選んだ精霊と魂の契約を結ぶと魔法が使えるようになるの。当然契約が出来ない他種族にはその魔法は使えない。後この場合身体にも少し変化が起きて、瞳の色とかが変わったりするから、外見からでもある程度は契約してる精霊の種類がわかったりするよ。たまに似た変化をする精霊もいるのが紛らわしいんだけどね」


 そいえばさっきシルキーはあのエルフ警備兵の瞳の色だけで呑化樹(モッコク)とか言う精霊と契約してるって見抜いてたな。


 あの言動から予測すれば、呑化樹(モッコク)は催淫系の魔法を得意とする精霊で間違いなさそうだ。


 まあ、色々事情があって、俺にはああいった催淫系の魔法は効かないんだが……。


「エルフに人気なのは弓を使うのに便利な千里眼の梟(ウルラ)、遠くの音を聴いたり気配を感じ取れる囁きの風(ウェントゥス)、強力な治癒の魔法が使えるようになる癒しの精霊(サナーレ)辺りですね。それと意外かもしれないけど愛情の呑化樹(モッコク)や催淫の悪戯淫娘(インプ)と契約してるエルフも多いし、よりにもよって不埒な事に淫慾の吸精淫魔(サッキュバス)と契約してるエルフまでいるの。気持ちは分からなくないけど、金色の瞳や赤い瞳、特に桃色の瞳をしてるエルフには注意してよね。あ、青い瞳や緑色の瞳のエルフは問題無いから」


「戦闘に役に立つ系は理解できるんだけど、そっち系の精霊も人気なの? 意味が無くないか?」


「大ありよ!! 誰だって気持ちの良い事って好きでしょ? それがもっと気持ち良くなる上に生涯の伴侶のゲット率も大幅アップ、更に言えばその……、身体的な特典というか、エルフは元々美人が多いんだけど、そっち系の精霊と契約するとね、胸とか大きくなったりもっと美人になれたりするの」


 さっきの警備員が物凄い美人だったのはそういう事か。


 あの鎧の下も色々と凄いんだろうな……。そりゃ、そっち系の精霊と契約結ぶだろうな。こんな状況下でなければな!!


「そっち系の能力を取る事が悪いとは言わないけど、魔王に世界滅ぼされる可能性があるのに、戦闘系に特化しないのは滅亡願望でもあるのか?」


「この世界で本気で魔王の脅威と戦ってる人なんて、家族とか親しい人が魔王軍に殺されたり、酷い目にあわされた人だけだよ?」



 おい。


 それじゃあ、俺は何の為にこの世界に送られてきたんだ?


 別の俺の世界が平和な訳でも、俺が暇な訳でもないんだ。


 この世界の人間が魔王の脅威と戦っていないんだったら、何の為に俺がこの世界で戦わなきゃならない?




「それにね。この世界の人間は師狼(しろう)みたいに強くも凄くも無いんだよ? だからもし世界が滅びるとしてもさ、最後の日までは当たり前の暮らしをする権利くらいあるんじゃないのかなって思うの。師狼(しろう)は百の魔力(マジカル)を一週間で二百近くにしたじゃない? でもね、私は神童って呼ばれてる程に才能があった小さい頃に、その数値まで上げるのに五年掛かったんだよ? 毎日血の滲むような努力をして、それでもそんなに急激に魔力(マジカル)が上がる事なんてなかった」


「……」


 そういえば、世界を救う手段が無いとか言ってたな。


 もしかして()()がそういう意味なのか?


 成長率が悪いとかじゃなくて、この世界の人間にはこの世界を救おうという気概が無い?



「でも私達アーク教徒や冒険者達は、その当たり前の日常を少しでも長く守りたいの。街に住んでる人や力を持たない人が笑って暮らせるように。私達、間違ってるかな?」


「間違っちゃあいないさ。それも一つの選択だろうな。…………あの女神が俺をこの世界に送り込んだ理由が少し理解できた」


 多分、あの女神見習いのシルキーは我慢できなかったんだろう。そして、同一人物である、この目の前にいるアーク教の巫女であるシルキーも。

 

 世界が滅びに直面しているのに、剣を…、戦う為の力を手にしない周りの人たちが……。幾つもの国が滅び、次は自分の国だというのが分かっていながら、我が身かわいさで守りを固めて魔王と本気で戦おうとしない国のお偉いさんが。何より、魔王に蹂躙されて命を終える力を持たない人たちの存在が……。



 だから救って欲しかったんだ。


 どれだけ劣勢に陥っていても全力で滅びと戦っている俺達の世界の人間に。


 封印されているとはいえ、宝珠まで魂に秘めている俺を見つけた時は小躍りしたに違いない。


 単に楽をしたいだけじゃなくて、もう()と同レベルの人間にしかこの世界を救えないと理解していたから……。



 と、ここまで考えていてなんだが、やっぱり俺の買い被りの可能性は否定できない!!


 買い被りだ!! そう、買い被りに違いない!!


 だいたい、あの女神が蒐集していたモノを思い出せ!! アレが世界の救済に必要な魔導書とか魔道具なら俺も少しは考え直すが、あの数百万冊はあるエロ本の山の説明がどうやってもつかないからな!!


 あの道具袋に入っていた他の物も食料品や嗜好品が殆どで、世界の救済に必要な聖剣だの魔剣だのはなぜか封印されていた。


 何か理由があるにしろ、原因があのエロ本などにある事は間違いないだろう。



 まあ、その辺りはこの世界を救った後でじっくりと話を聞こうじゃないか。


 あの見習エロ女神を目の前に正座させて……な。



「じゃあ、中に案内しても良いかな? あ、さっきも言ったけどエルフとそんな事しちゃ嫌だからね!! 特に金色とか桃色の瞳をみつめない事!! 絶対だよ!!」


「はいはい。それじゃ頼んだよ」


 シルキーは先程の様子を微塵も感じさせず、おそらく無理に明るく振る舞ってくれた。


 俺もまだ人としては未熟だったようだ……。




読んで頂きましてありがとうございます。

誤字報告ありがとうございました。

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