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大商会でのお買い物

装備を購入する話になります。

楽しんで頂ければ幸いです。


 冒険者ギルドのほぼ正面。


 其処に【ドレヴェス商会】と大きな看板が掲げられた総合商店があった。


 よく考えてみれば、各種依頼の報酬の受け取りはもちろん、魔物から取れる素材の換金なんかも行っている冒険者ギルドに近い方が、そりゃ売り上げは大きいよな。何より便利だし。



 俺がこの世界の文字やら言葉が読めたりするのは、あの見習エロ女神が事前に用意してくれた事の中では数少ない便利な能力だ。


 一部変換されない言葉はあるが、元の世界にあった物に一番適した言葉に変換される。


 さっきのシャケもそのうちのひとつだが、一部バグってるんじゃないかと不安になる事も多い。


 言葉は割と通じているので、文字変換が上手くいってないのかもしれないが。



「ここが総合商店のドレヴェス商会です。武器防具などの装備から生活雑貨まで何でも揃う大商会なんですよ」


「デパートみたいに階ごとに色々売ってるのか。武器とかが上の階にあるのはなんでだ? 重いだろうに」


「盗難防止の為らしいですよ。上の階に行けばいくほど高価な商品が並んでいます」


 こんな世界だと盗賊なんかも多いんだろうしな。



◇◇◇



 店の中に入ると綺麗な石造りの床がピカピカに磨き上げられてた。


 冒険者が多いのかと思ったが店の中にはあまり客がおらず、数人の商会員と思われる女性が早速俺を獲物としてロックオンしている。


 この光景は何処の世界でも共通だな。


「いらっしゃいませ!! 当商会では色々な商品を取り扱っています。何かお探しの物はありますか?」


「とりあえず下着と服を……」


「え? そこは剣とか鎧じゃないんですか?」


「下着と服が先だ、替えが無いなんてこれ以上我慢が出来るか」


 都合が良い事に今は十分な金はある。


 元の世界の様に妹の紗愛香(さえか)に親からの送金を管理されている訳じゃないし、この際は元の世界でも着れそうな服なんかを十着ぐらいは揃えておきたい。


 その他の装備なんて三万ゴールドもあれば大抵のものは手に入るだろうし、まず優先されるべきは毎日履き替える為の下着と着替える為の服だろ?


 鎧なんて最悪無くても良いし、武器は銅の剣が十ゴールドで売ってるんだろうからな。



「……お客様、当店は初めてですか?」


「はい、初めてです」


「おい……」


 シルキーも初めてってどういうこと?


 昨日は数人護衛がついていたからこいつもそこそこ重要な地位にいると思ったんだが……。


「だってこんな高級店に入れる訳ないじゃないの!! 普通の冒険者とかは隣の雑居店で買い物してるんだから」


「高級店?」


「はい、当商会は生活雑貨の食器類から武器に至るまで、全て最高級の物を取り揃えております」


 近くの棚に視線を流すとすべて商品の値段の単位がゴールドになっていた。


 元の世界基準で最低一万円?


 俺の知ってる高級店舗なんてレベルじゃないぞ!! ここは一部の金持ちが通ってるような会員制の店じゃないか?



 道理で荒くれ者の冒険者の姿が何処にも見えない訳だ。


 しかし、これだけ高額でいい物を売っているのなら、ハズレを引く可能性はないし、まあいいか。



「服とか下着は何階だ?」


「え? ここで服とか買うの? 武器とかだけじゃなくて?」


「当店は五階建てで一階が生活雑貨、二階が食料品、三階が服などの衣類、四階が宝石などの装飾品、五階が防具や武具となっております。当店では着心地が最高の下着などを多数取り揃えていますので、必ずご満足いただける商品と出会えます」



 階段で三階まで行こうと思ったが、ちょっと意外な移動装置が目に入った。


 こんな世界にエレベーター?


「上の階への移動はエレベーターにて案内しております」


「やっぱりエレベーターか。この世界にもあったんだな……」


「…………師狼ってさ。元の世界でもお金持ちだったの?」


「いやそんな事は無いが」


「でもっ、エレベーターがある高級店なんて普通は入れないんだよ? ここを利用する人だって、冒険者ギルドだとアスセナさんとか一部の人だけなんだから」


 食い物が最低銅貨五枚の世界で、金貨で買い物をする店なんかに気軽にはいれる訳ないよな……。


 ここで買い物をするのは本当に一部の金持ちや権力者だけなのか。


「元の世界だとエレベーターなんてちょっとした店でもあったんだ。別に高級だからって訳じゃない」


「へ~、凄いんだね」


 こっちのシルキーもあのエロ女神見習いと同じ様にどんどんメッキが剥がれて行くな……。


 シャケの一件や冒険者ギルドでの能力検定で少しは仲良くなってるからだと思いたいが、口調に威厳が無くなってゆくぞ。



◇◇◇



 エレベーターを降りると、フロアいっぱいに様々な服が所狭しと並べられていた。


 いわゆる吊り物と呼ばれる出来合いの服が多いが、エレベーターの反対側に仕立て屋が何人も待機している所が流石高級店といった所か。


「いらっしゃいませ。どのような服をお探しですか? お気に入りの物がなければあちらの仕立て屋でお望みのデザインの服をお作りいたしますが」


 早速店員がロックオンしてきた。


 ちなみに、エレベーターから降りて俺達はまだ一歩しか歩いていない。


 多分、下の階でエレベーターが作動した瞬間からここに待機していたんだろうな。


「下着の上下と、服を何着か欲しいんだが」


「下着はあちらのコーナーになります。身体のサイズに合わせるのでしたら、専門の仕立て屋も当店では……」


 女性店員の視線が完全にシルキーに向いている気がするのは気のせいか?


 なお、俺の方はほぼガン無視だ。


「男物が欲しいんだが」


「え? ああ、あなた様用でしたか。男性向けの売り場はあちらになっております」


 ほぼ女性向けの服が並ぶフォロアーの一角に、男性向けのパンツやシャツなどの下着が無造作に詰まれたワゴンが置いてあった。


 ああ、この世界でも男性用下着売り場の状況は変わらんのか。


「シルキーはどうする? ここで待ってるか?」


「え、ああ、うん。早く帰ってきてね」


 異性の下着なんて一緒に買いたくないだろうしな……。




 扱いが酷い。


 ここは高級店なのにこの扱いはあんまりだ。


 少し離れた所に設置されている女性用の下着はひとつひとつその細かなデザインが栄える様な展示がされているにも拘らず、男性用下着の扱いは【十枚一ゴールド均一(柄適当)】、【シャツサイズM・L・LL、各種五枚一ゴールド(灰色とか黒の単色のみ)】、【注※当店では男性用下着の仕立て受け付けはしておりません】という張り紙までしてあるありさまだった。


 男性用で完全に白い下着が無いのは漂泊の手間すら惜しいからだろう。


 まあ、俺も下着にそこまでこだわりがある訳じゃない、この紐で縛られた下着を適当に幾つか選んで買うしかないか……。手触りはかなりいいし。



「とりあえず下着類はこれでいいか。後は上着とズボンだけど」


「ズボンと上着でしたらあちらになります。手に持たれている下着類は良ければ預かりますが」


 店員の対応はやっ。


 商品を預かるのは盗難防止なんだろうな多分。


「お願いします、上着は……この辺でいいかな。あのすいません、これって魔法耐性とか(ヴリル)の耐性ってありますか?」


「はい。当店では扱っている下着から外套に至るまで全ての商品は最高級の対魔法繊維で作られております。打撃吸収力の高い素材がお望でしたら、そちらもご用意できますが」


「対魔法繊維で問題無いです。これと……、この辺りを四着ほど。後ズボンを……この腰回りのタイプで三本。裾上げは……」


「裾上げもあちらの仕立て屋ですぐに行えます。十ゴールド以上お買い上げのお客様には無料でご奉仕させて貰っておりますが」


「お願いします。どの位で出来ますか?」


「二十分程ですね」


 割と洒落た魔導時計を見ながらそんな事を言って来た。


 ああ、あの魔導時計まともなデザインの奴もあるんだな……。


 上着は一着五ゴールドから十ゴールドだったが、四着で三十ゴールド程になった。ズボンは三本で十七ゴールド。


 下着と合わせれば全部で五十ゴールドか。


「あのお支払ですが……」


「これでいいか?」


「え? ……全部で五十ゴールドちょうどですね。申し訳ありませんが調べさせていただいても……」


「ああ、問題無い」



 商談用テーブルの上に天秤を持ち出した店員は、片側に五十ゴールド相当の基準になる重りを置き、もう片方の皿に俺が渡した金貨を乗せたが当然両方は釣りあい、重量はぴったりと一致した。


 多分偽物の金貨だと思っていたんだろう、店員はその状態に驚いている。


「し、失礼しました」


「いや、俺もこの街に来たばかりだから、見た事も無い男がこんなに金貨なんて出したらそりゃあ疑うよな」


「ご理解いただきまして感謝します。今後とも我がドレヴェス商会をよろしくお願いします。ズボンのすそ上げはすぐにさせて頂きますので、二十分後でしたらいつでもお渡しできます。こちらが受取証です」



 店員は何度も頭を下げ、俺に商品とズボンの受け取り証を手渡した。


 とりあえず道具袋にそれらを仕舞って俺の買い物は終わったが、シルキーの姿はと……。


 アイツ、なんであそこにいるんだ?



「それでしたら、この素材がお勧めですよ。色もこの四色の布から選べますし、薄桃色の下地にこの赤い布を合わせてこちらの糸で装飾する事も……」


「服を仕立てて貰うのか?」


「え? えっと……そこで服を見てたら、この仕立て屋さんがもっといい服を仕立てられるって話になって」


「あんな万人向けの吊り物より、アーク教の巫女様でしたらこの対魔性能の高い布で仕立てた服がもっと栄えると思うんですよ。魔法防御力はもちろん、布自体に特殊なコーティングが施されていますので魔物などの体液汚れにも強いですし、打撃吸収力の高い素材も組み合わせておりますので、冒険者の方にも大変人気の……」


 そんな高そうな服着た冒険者がいるか!!


 多分俺の服一式より高いぞこれ。


「買うのか?」


「欲しいよ。でも……」


「今ですと、いろいろサービスが出来ますよ。この生地で仕立てて更にアーク教用の刺繍装飾料も込みで百ゴールドにさせて頂きます」


 俺の買った服一式の倍か。


 コイツも結構な金持ちだな。


 ん? なんでこっちを見て来る? そんな捨てられた子犬みたいな目で……。



 朝食に銅貨十二枚の卵サンドなんて食べてる奴が、百ゴールドの服を買える筈も無いか……。


 シャケ食べるのも数年ぶりって言ってたし。



 仕方ないな。



「いつまでに仕上がる?」


「はい、採寸さえさせて頂きましたら、全力で仕上げて……、三日後ですね」


「二百ゴールドある。予備も含めてもう一着作って貰え」


「え? いいの? 本当にいいの? 全部で二百ゴールドだよ?」


「採寸は出来るだけ早くして貰えよ。俺はとりあえず上の階で武器と防具を見て来る」


「……ありがとう」


「それではこちらで採寸を……」



 嬉し泣きしそうなシルキーを残して、俺はとりあえず上の階で武器と防具を見る事にした。



◇◇◇



「銅の剣が十ゴールド……、という事は武器の値段もぼってる訳じゃないんだろうな」


「当店はより良い物を適正な価格で販売しております。ぼったくりなど信用を著しく落す行為などありえません。当店は場末の貧相な武器屋ではありませんので……」


 いつの間にか人のよさそうな笑みを浮かべた男性店員がすぐそばにいた。


 俺に気配を感じさせないなんて、相当の手練れだぞこいつ。


「すまなかったな。ここに魔王を叩き斬れそうな剣はあるか? できればかなり(ヴリル)耐性がある武器がいい」


「ま……魔王ですか? 流石に魔王と戦った冒険者がいませんので当店では分かりかねますが、この辺りの魔物と戦える武器というのであればこのレベルの素材ですね……。詳しい話は腕利きの鍛冶屋を連れてきますのでそちらと……」


 店員はバックヤードの奥に引っ込み、代わりにガタイの良いおっさんが出てきた。


 少し無愛想だが、職人気質の奴はこういった方がいいんだろうな。



 サンプルの箱には鉄、鋼、銀、銅という聞き覚えのある素材から、魔物の名前が付いた素材や聞いた事も無い様な地名の鉱石が所狭しと並んでいる。


 出来合いの剣なども展示されているが、この店では専門の鍛冶屋の手でどんな武器でも新造してくれるらしい。


 ただし、拵えなどの仕上げまで任せると数日必要なようだ。


 まあ、あの服が三日かかるらしいから、とりあえず使えそうな剣を一本買って、これから魔王討伐に使う剣は新しく打って貰おう。



「この剣と同じデザインで(ヴリル)対応型、拵えは……」


「そのレベルの(ヴリル)対応型となると、かなり複雑で特殊な合金が必要だ。一万ゴールド必要だがいいのか?」


「支払いが宝石で出来るなら問題無い。これなんだが」


 専用の箱に入った宝石と、商人ギルドが発行しているという鑑定保証書も一緒に手渡した。


 こんな細かい決まりまであるという事は、魔王が侵略を始める前はさぞこの世界は繁栄していたんだろうな。


 男は宝石を光に透かせて見た後、鑑定保証書の紙質を指先で調べてインクの匂いまで嗅いでいた。


「商人ギルドの鑑定保証書もあるな。問題無いぞ」


「ついでのこの剣も買いたい。同じ様な剣で慣れておきたいんでな」


「それは五百ゴールドだな。さっきの宝石にはそれ位余剰価値があるから、それはそのまま鞘ごと持って行っていいぞ。新しい剣は研ぎまでいれると一週間はかかる。それでも問題無いか?」


「それだけの価値がある剣なんだろ?」


「当然だ!! 俺が生涯最高の剣を打ってやる」


 この剣も(ヴリル)対応型なので、あの銅の剣の様に簡単にポッキリとは折れないだろう。


 これで当面の武器は手に入った。



◇◇◇



 防具。


 重い鎧はその重量の為に動きにくく、更に言えば可動域がかなり制限されるので攻撃がしにくくなる。


 動くたびにガチャガチャ音がうるさいなどと本当にいい事が無い。


 特に俺の様に多重絶対防盾(スゥクトゥマ)で物理攻撃も魔法攻撃もほぼ完璧に無力化できる人間にとってはまさに無用の長物だ。


 その為に俺は武器やと同じ階にある防具屋には寄らず、身体の周りにかなり弱いが対物フィールドを張れる宝石を求めて一階下の宝石売り場に足を向けた。



 一応店員にシルキーが来たら四階にいると外見的特徴を伝えて言付けておいた。


 まあ、こんな高級店の武器屋に来る冒険者なんてそこまでいないだろうが……。




 宝石。


 古来から人を惑わす美の象徴のような存在で、その輝きには確かにひとの心を惹きつける何かがある。


 装飾品的な価値があるだけでなく、この世界では神秘の力を宿らせて様々な効果を齎す魔道具に変える事も出来るらしい。


 らしいというのは、昨日の祝勝会の時に冒険者のひとりが自慢げに防御力をあげる青い宝石を見せてくれたからだが、あれにそんな力があるとは信じられなかったんだけどな。



「対物フィールド発生型の魔道具ですか? え? 使用者が男性です?」


「何か問題でも?」


「いえ、この手の魔道具は使用者の魔力を少しずつ蓄えて効果を発揮しますので、男性ですと効果を発揮するまでに何年もかかる可能性が……」



 魔道具の仕組みは身に着けた使用者の魔力を吸収し、その魔力を元にして使用者と契約を結んで効果を発揮するらしく、その発動速度は使用者の魔力(マジカル)保有量で大きく変化するという事だ。


 ハッキリ言えば、魔力(マジカル)の低いこの世界の男性では魔道具が生涯発動しない可能性まである。


 そりゃ店員がじと目で睨むよな……。


 ちなみに昨日魔道具を見せてくれたのは女剣士だった。



「使えれば便利かな程度の保険と考えたんだが、発動しないなら意味は無いな」



 エレベーターがこの階に到着し、なんかしおらしい面持ちなシルキーがこっちに近づいてきた。


 何となく今までと態度が違う気はする。



「あ、師狼。さっきはあんな素敵な服を買ってくれてありがとう。一度でいいからあの綺麗な服を着てみたかったの」


「シルキーは偉い巫女じゃないのか? 高いと言ってもあのクラスの服位買えるだろ?」


「ち……違うよ!! 確かに今アーク教の巫女は貴重だけど、そこまで偉くは無いんだよ!! あんな高い服なんて絶対無理!!」



 ん?


 じゃあ昨日のあの護衛っぽい騎士団は何だ?


 ただの巫女にしては過ぎた警備だぞ。



「昨日、騎士団に護られながら部屋に入ってきたのは?」


「あの人たちは偶然ドアの前で合流しただけ。投影魔術師の人は魔法使いギルドから派遣されて来たんだけど、貴方への説明とかは私がって事になってたから……」


「俺の勘違い……。アーク教のお偉いさんって事でもないのか?」


「地方に行けば上の方だけど、こんな王都の近くの街だとそこまで上じゃないよ。お給金も安いし」


 給料が出るのか?


 まあ、巫女をしてるんだから出るんだろうな。


 でも、あんな食事をしてるって事は相当に安いんだろう。


 銀貨二枚のシャケが数年ぶりって話だし……。


「普段は冒険者をしているのか?」


「アーク教の巫女は全員冒険者だよ。これが冒険者カード」


 腕力三十二、技量四十五、速度六十、(ヴリル)十五、魔力(マジカル)七百八十一? 魔力(マジカル)だけ異常に高いな。


「アーク教の巫女になるには最低でも魔力(マジカル)が五百必要なのよ。だから入信後に冒険者になって魔力(マジカル)を徹底的に鍛えるの」


「回復魔法に自信があるっていうのは其処から来てるのか……」



 そのひらひらした服も、さっき買ってやったあの服も多分防御力低いよな?


 多重絶対防盾(スゥクトゥマ)が使える俺と違って軽装でも何とかなる要素は無しか……。



「さっきの魔道具、どの位防御力があるんだ?」


「はい、魔力(マジカル)七百八十一のその方が使う場合ですと、ストーンゴーレムに全力で殴られても四回程度は耐えられます。もちろん、軽度の打撃ですと耐久力を一定時間で回復できますので、余程連続で耐えなければ何度でも使えます」


「それって凄いのか?」


「普通の冒険者だと一回目でぺっちゃんこだね。目の前でストーンゴーレムに拳を振り上げられた時点で死を覚悟するレベル」


 鉄球系の重機で殴られるようなもんか。


 あれを何度か耐えられるならお買い得だな、軽度のダメージを無効化できるのも大きい。


「いくらだ?」


「三千ゴールドです。魔力(マジカル)七百八十一もあれば、明日には発動しますね」


 魔力(マジカル)格差が酷いな。


 この世界って魔力(マジカル)が少ない男性には元の世界より生き辛いんじゃないのか?


「この宝石で払えるか? その位の値段の筈だが」


 商人ギルドの鑑定保証書に二千ゴールドと書かれた宝石と千ゴールドと書かれた宝石を選んで差し出した。


 さっきと同じ様に宝石を透かして確認し、商人ギルドの鑑定保証書のインクの匂いなどを嗅いでいるが、あれがこの世界の宝石確認方法なんだろうな。


「はい、問題ありません。お買い上げありがとうございます」


「ちょっと師狼!! さっきも服を買ってもらったのに、こんな高価な魔道具なんて貰えないよ」


「シルキー、俺の元いた世界ではな、命が物凄く軽かったんだ。半人半魔獣(デモナビースト)真魔獣(ディボティア)がひとたび出現すれば周りにいた人は悉く食われ、奴らと戦えば簡単に何人もの戦友が食われる位には……。俺がその場に居て助けられた奴もいるし、その場に居ながら助けられなかった奴もいる。助けられなかった人の事を思って全部背負い込めば心は簡単に折れるし、眠れない夜が続く」



 子供の頃の記憶。


 十年前、仲の良かった友達や、割と好意を寄せていた近所の女の子が纏めて近所のデパートで真魔獣(ディボティア)に食い殺された事件。


 あの時、俺には力が無く、そしてその後力を求めて(ヴリル)を極限まで高め、伸ばしたこの手が神の域に手が届いた瞬間、俺は人間を辞めるのが怖くなって思わずその手を引っ込めた。



 神域に届く為の最後の鍵はまだ俺の中にあるが、人を辞めるのが怖くていまだにそれに手を出せずにいる。


 俺は人のまま力を掴み、出来る限りの人を助けたいし、供に戦う仲間を失いたくはない。


 だから、金や他の事で何とかなるのであれば、可能なレベルで手を打っておきたいんだ。



「俺達の最終目標は魔王だ。死に繋がる可能性は少しでも減らしておきたいし、戦いの中でシルキーを失う事に比べれば、この位の出費なんて何でもないんだ」


「師狼……」



 予算はまだ潤沢にあるしな。


 一緒に戦ってる最中に死なれても困るし、無限回復剤のシルキーに居なくなって貰っては更に困る、今後の為に回復魔法も教えて貰いたいというのもあるが。



「それじゃあ、準備は整ったしもう一度冒険者ギルドに行くぞ」


「え? 師狼の防具は?」


「こう見えて、体術と防御魔法には自信があるんだ。重い鎧は逆効果って事さ」



 攻撃はかわせばいいし、魔法や強力な攻撃は多重絶対防盾(スゥクトゥマ)で防げる。


 元から防具なんて必要ないんだ……。



 こうして俺とシルキーはドレヴェス商会を後にして冒険者ギルドに向かった。


 魔王討伐の手始めに、依頼を何か受ける為に……。





読んで頂きましてありがとうございます。

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