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王都観光

王都での観光とお土産選びの話です。

楽しんでいただければ幸いです。



 決闘から三日後の今日。王都シャイン・グレイのメインストリートを俺は一人で歩いていた。


 ようやく金貨百万枚分の宝石を受け取り、これから貴族や豪商など専用の高速馬車でリトリーニに戻る為だ。


 リトリーニに戻ることはシャルに散々止められたが、あんな実家のような危険度のある部屋にこれ以上泊まっていられるか!! あれから毎晩シャルが夜這いに押しかけてきたんだぞ!!


 それに、毎晩見張りをしていたシルヴィアがかわいそうだしな。


「この辺りはシャルに散々連れまわされたから割と覚えたな。普通に懐いてきてくれる分には可愛いだけなんだが……。だったよな?」


 思い出してみれば、シャルは俺の手を引っ張って割と薄暗い路地裏に入ろうとしたり、あまり人気のない店の奥へ連れて行ったり、休憩スペースで無防備に横になったりしてたよな……。


 あれは俺から襲わせようとしていたのか、それとも催淫系の術が使える魔道具を身に着けていたのかはわからない。


 俺にはそれ系の魔法が一切通用しないからな。



◇◇◇



 リトリーニに帰る前に一応観光というか、歴史が古いというこの王都に点在する建造物などを見ていくことにした。


 シャルには悪いが、もうここには来る事もないだろうし。


 数百年前に建築されたカップルに人気の噴水や、家が断絶した貴族の屋敷など、見ごたえはあるがあまりぱっとしない。


 まあ、こういった建築物にあまり興味がないというのもあるし、一人で見ても面白くはないよな。


「いらっしゃい~。お土産にクッキーはいかがですか?」


 ……そういやここではクッキーも売ってるんだよな。


 元といた世界の街だと売ってなかったから忘れてたよ。


 絶対に買わないがな。


「あそこも土産物屋?」


 観光名所近くの土産物屋にはなぜ売っているのかわからないペナントやキーホルダー類、木刀に木彫りの動物類、大き目の水晶玉に掘り出したそのままの形で売っている水晶の結晶的な何かなど様々な商品が並んでいる。


 食べ物系も豊富で、賞味期限の長そうな食べ物が多いが、あまり王都とは関係なさそうな食べ物も多数存在していた。


「そういえば王都饅頭はまだ買ってなかったな。って、ここには売ってないのか?」


 布っぽい何かや木製の入れ物に入ったクッキーなど、焼き菓子系は無数に売られているが、王都饅頭は一つも売られていない。


 まあ、値段が値段だしな。


 六つ入りで金貨一枚だったか?


「すいません、この辺りに王都饅頭を売ってる店ってないですか?」


「え? お…王都饅頭ですか? 高級菓子系はあちらの商会直営店でしか売ってませんね。あ、我がドレヴェス商会の直営店もありますので、お求めの際はそちらをご利用ください」


 高級菓子系ね……。


 本当に名物なのか?


「お客様、王都饅頭以外にもたくさんお土産物がありますよ。あちらの木刀などは特に人気で……」


「木製の刀身に王都シャイン・グレイって彫ってあるだけだろ?」


 しかもこれ、こんなに小さい木製の剣なのに銀貨五枚って。


 完全にぼったくりだろ?


「いえ、実はこの木刀には仕掛けがありまして、この刀身の刃の部分を引っ張ると……、なんと、女王クリスティーナ様のフルカラータペストリーが!!」


 結構きわどいデザインだぞ、それ?


「だからこんなに無駄に高いのか? これ、木刀の形している意味なくない?」


「いえいえ、恋人やご家庭を持つ男性の方には大変人気で」


 そんなの持ってるのが嫁や恋人に知られたら、その後が心配じゃね?


 というか、こんな仕組みだとすぐばれない?


「そちらの女王クリスティーナ様の横顔などがデザインされている銅製のレリーフや、カメオなんかも人気ですよ」


「現国王の顔とかデザインして大丈夫なのか?」


「はい。この国の守り神として国民に大変人気で、女王陛下も快く承諾してくださっています」


「さっきのタペストリー的なデザインも?」


「……大丈夫ですよ?」


 布面積が明らかに小さい水着姿のタペストリーがOK?


 グレーゾーンな気もするけどな。


「このキーホルダーのデザインは元があるのか?」


「その動物はこの辺りに生息している羽根うさぎですね。ペットとしても人気ですよ」


「これを数個と……、カメオと。これ位でいいか」


「ありがとうございます。直営店はこの道をまっすぐ言って左側の建物です。この看板が目印ですよ」


 満面の笑みで見送ってくれた店員。


 俺以外にも客はいたが、割と安そうなクッキー類しか買っていなかったな。


 怪しい商品も多かったし。



◇◇◇



 歩いて五分ほどの場所に、ドレヴェス商会の直営店があった。


 本店は王城の真ん前にでかい店を構えていたが、この直営店はコンビニより少し大きい程度のこじんまりした店構えだ。


「いらっしゃいませ。ドレヴェス商会へようこそ。こちらでは様々な高級食料品などを取り揃えています」


「高級食品? 確かにいろいろあるな」


 辺りを少し見まわしただけで生ハムの原木とか、ソーセージの塊とか、ガラス瓶に詰められた魚卵っぽいものやらいろいろ売っている。


 リトリーニでも見かけたけど、ここに並んでるのは数ランク上の商品なんだろう。


「王都饅頭が欲しいんだけど」


「王都饅頭ですか?! あの、どれくらいご入用ですか?」


 シルキー、ミルフィーネ、シルキー(エロ女神)、アスセナ……、保管できるし十もあればいいか? 美味しいなら紗愛香(さえか)瑞姫(みずき)とかにも買って帰る?


「三十箱で」


「三十箱ですね。他の物はよろしいですか? 当店では菓子類だけではなく、珍しい食材も多数取り揃えております」


「チョコレートとクッキー以外で美味しそうな菓子類はあるかな?」


「あまり日持ちしませんが、こちらのクリームパイやフルーツタルトは人気ですよ? どちらも最高のパティシエが素材を厳選して作り上げた最高の一品です」


 イチゴっぽいのやら何か見た事もないような果物がごっちゃりと乗ったフルーツタルトか……。


「それも各三十ずつで。ほかの商品はとりあえずいいかな」


「毎度ありがとうございます!!」


 結構な出費だけど、今なら大したことはない。


 受け取った商品はすぐに道具袋に入れてと……。これでいつでもおいしく食べられるぞ。


「いらっしゃいませ!! 王都饅頭はいかがですか~!! パオレット商会では、中の餡を少しフルーティにしてありま~す」


「なんで他の商会でも王都饅頭売ってるんだよ!!」


 王都にしか売ってないと聞いていたが、各商会で微妙に味やデザインが違う饅頭を専用の箱に入れて販売していた。


 一番人気はドレヴェス商会の王都饅頭らしいが、パオレット商会の王都饅頭も人気があるそうで、一応あいつの分も含めて結構な数を購入して道具袋に詰め込んである。


 他の商会の分もいくつか購入してるけど、そんなに味が違うのか?


「まあいい、王都饅頭も色々買ったし、お土産はこれで十分だろう」


「リトリーニ行きの馬車。あと一時間で出発だよ~」 


「お、時間的にはちょうどよかったな。ちょっとした休暇だったけど、元の世界だとそういや今は夏休み中なんだよな……」


 休暇が伸びたのか、宿題的な面倒ごとが増えたのか……。


 まあ、それはリトリーニに戻ってから考えればいいか。


 貴族や豪商など専用の高速馬車だから、リトリーニにつくのは二日後。


 途中で宿場町によるけど、あとは馬車の客車内で寝てるだけか……。


 道具袋に入れておけば窃盗にも気を付けないでいいし、警備兵までいるから問題ないだろう。





読んでいただきましてありがとうございます。

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