鎧女騎士との決闘
シャルロッテとの戦いの話です。
楽しんでいただければ幸いです。
謁見の間のやり取りからきっちり一時間後。
誰がどうやって説明したのか、何重にも魔法対策などの結界が張られ、対魔法用衝撃吸収材で作られたかなり大きな闘技場が準備されていた。
その広さはサッカースタジアムとかを連想させるほどで、ここならどれだけ高威力の技を放っても周りに被害なんかでないだろう。
数万人は収容できそうな客席に見物人はいない。
貴賓席というか、たぶん王族や貴族専用の客席に女王や重臣たちがいるだけだ。
あの一角はほかの場所に比べて丈夫に作られているんだろうな、魔道具らしき物が大量に露出してるし。
あそこにいれば確かに安全だろう、さすがに神穿波を全力で放てばシールドの枚数次第で、あの結界も対魔法用衝撃吸収材も破壊しつくしていくが……。
闘技場の中央には俺と完全武装のシャルロッテ。
鎧も身に着けていない俺と、漆黒の鎧や盾でガッチガチに防御を固めたシャルロッテの対比は面白いな。
使う剣も俺のやや細身の剣に対して、シャルロッテのは身長と同じくらい長くて馬鹿でかい大剣。
あんな装備でまともに動けるのか?
「逃げ出さずに良く来たわね。すぐその化けの皮を剥いであげるわ」
「鎧を剥かれるのはそっちだ」
審判らしき騎士が数人俺たちの状態を確認している。
「ルールの確認をいたします。武器使用の制限は無し、魔法の制限もありません。勝負の決着ですが、シャルロッテ様の装備を破壊した場合と、鏡原師狼が戦闘不能に陥った場合になります。あの、万が一対戦相手が死亡した場合ですが……」
「私は構わないわよ。殺せるもんなら殺してみなさい」
「上等だ。俺を倒せる実力があるなら、そいつが魔王を倒してくれるだろう。殺さないように手加減はしてやるが、高そうな鎧や盾だが、壊されても泣くなよ」
武器に制限はないし、魔法にすら制限が無いとか本気か?
いくら手加減しても事故は起こるし、しかも相手は王族だろ?
ああいってるからといって本気で殺しに行ったら、ただじゃすまないんだろうな……。
「あんたにそれが出来るなら、その実力を見せてほしいわね。開始の合図!! 早くしなさい」
「はい。すぐに」
審判らしき騎士にシャルロッテが開始の合図をするように急がせていた。
まったく、急がなくてもすぐにその鎧を砕いてやるのにな。
◇◇◇
試合開始の合図が響き、とりあえず俺はシャルロッテの出方をうかがっていたが、こいつあれだけ開始を急がしていたのになんで動かない? もしかしてやっぱり重くて動けないのか?
って、いきなり高速で間合いを詰めてきた。
なるほど、マッハとまではいかないが、そんな速度が出せるなら普通の奴じゃ相手にならないだろう。
「気を抜いてると死ぬわよ!!」
「やるな!!」
あの重そうな大剣を片手で器用に振り回している。そのうえ斬撃が鋭く、しかも一撃一撃が重い。
こいつ、鎧でガッチガチに固めただけの防御重視の雑魚じゃないみたいだな。
多少は氣を使えるのか、剣で撃ち合えるなんて奇跡みたいなもんだぞ?
氣を纏わせていない武器なら一撃で真っ二つだしな。
「私の速度についてくるなんて、大口叩くだけはあるわね」
「お前もな。だが、手加減は無用って話を忘れるなよ!! 火炎弾!!」
「え? 魔法?」
直径五十センチほどの大きさの火の弾を左手に生み出し、それを盾にぶつけて爆発させた。
体制が崩れたところに氣で強化した斬撃を無数に叩き込む。
これであの盾は……って。マジか? これで壊れないなんて、どんだけ丈夫な盾なんだ?
「自慢するだけの事はあるってか? 丈夫な盾だな」
「男なのに魔法まで使えるなんて、確かに出鱈目な強さね。でも、この盾や鎧は砕けないんでしょ?」
「そのからくりを見抜いてやるよ……」
今の一撃。
氣で強化している以上、余程の物でなければ微塵切りになっているはず。
あの攻撃で壊せない秘密が……。
アレか?
盾の中央に飾られている魔道具らしき物。それとそこに繋がる四方の小さな宝石。
あれを手順通りに壊す必要があるのか?
「所詮はその程度なのね!!」
「なめるな。もうからくりの一部は分かってるんだよ!! 光塵斬!!」
氣で剣速を光速近くにまで加速させる光塵斬。
以前は使えなかったけど、やっぱり今の俺なら使いこなせるみたいだ。
これで四方にある小さな宝石を斬り砕いて、そしてとどめに……。
「た……盾が!!」
「面倒な造りだが、壊し方さえわかりゃ大したことはないんだよ!! あとはその鎧だな」
「っ!!」
盾を失った事であの大剣を両手で構えられる様になったシャルロッテは、さらに高速で斬撃を繰り出してきた。
確かに、こんなに連続で隙もなく斬りかかられたら、普通の奴ならお手上げだろうな。
「どうせその鎧も似たようなからくりなんだろ? 肩当て、籠手、両膝、それと胸の下の大きな宝石……。後ろもか?」
「は……速い!! ほとんど動きすら見えないなんて」
「大体理解した。それじゃ、解体作業だな!!」
肩当ての小さな宝石から砕き、両膝、籠手と続けて砕いて、後ろに回って背中の三か所に飾られていた宝石を次々に斬り砕いた。
「剣を振れないわね。……もしかして」
かなり高出力の氣で剣先を強化しないと爪の先ほどの傷もつかないが、防御力的なものを上回れば簡単にスッパリと斬り砕ける。
シャルロッテは籠手の宝石を砕いた事で、あの大剣を持ち上げられなくなっていた。
そして宝石が減るごとに動きも鈍くなっていく。
「よ……鎧が。重い……」
「おおかたさっきの宝石で軽量化の魔法でもかかってたんだろ? ほら、もう剣も持ち上げられないみたいだな」
「こんなことって」
「これで終わりだ!! な……何? これだけ高出力の氣で剣先を強化していても。壊れないなんて……」
鎧に最後に残された宝石型の魔道具。
まさか氣の耐性が馬鹿みたいに高いのか?
「時間が経つと、また宝石が復活するわよ? ふふっ、もう手詰まり?」
「まさかここに来てまで、この技を使う羽目になるとはな。多重絶対防盾!!」
「え? 何?」
俺はシャルロッテから距離をとり、多重絶対防盾を展開させた上で自分でシールドに魔力を供給した。
今の俺なら、敵の魔法などで魔力をチャージしなくても、自力でどうにでもできるからな。
今のシャルロッテは碌に動けない。だから拘束魔法なんかを使わなくてもアレを叩き込める!!
「増幅フィールド展開!!」
今までとは桁違いの魔力を注いだ為に、光のリングは虹色に輝き、しかも今は目の前に六枚も展開している。
背中からは大量の氣がまるで翼のような形で噴出し、金色の翼と化して俺を光速まで導く。
人である俺の最強コンボ。
これでだめならお手上げだぜ!!
「必殺!! アルティメェェェェェット・クラァァァァァァァァァッシュ!!」
超高出力の氣を纏って光速の弾丸と化した俺の蹴り。
それをまともに食らったシャルロッテ。
さっきは砕けなかった魔道具にヒビが発生し、やがてその日々は鎧全体に広がってゆく。
「あ……鎧が……」
「これで、終わりだっ!!」
必殺の蹴りを食らった魔道具は粉々に砕け散り、その余波でシャルロッテが手にしていた大剣や身に着けていた鎧まで粉々に打ち砕いた。
◇◇◇
闘技場には無傷の俺と、装備をすべて砕かれたシャルロッテ。
結構小柄だな。あの鎧の中身だとは思えない。顔立ちはクリスティーナを少し幼くした感じで、美人というよりはかわいいという印象だな。
そんな事より、試合開始の条件だとこれで俺の勝ちの筈だが?
「試合終了。勝者、鏡原師狼!!」
「よっしゃぁ!!」
久しぶりに戦い甲斐のある相手だった。こんな強敵はほんとに久しぶりだ。
真魔獣戦の様な命をかけた戦いでもこんな強敵はめったにいないし、学校の魔法少女たちとの戦いでもここまで苦労しなかったからな。
というか、シャルロッテ鍛えれば、魔王に勝てるんじゃないのか? あの甲冑がもっとあるならだけど。
こいつでも多分もう少し強くなれば、あの三万の魔物を殲滅できると思う。
「よ…鎧が!! 鎧が壊れましたっ!! お姉様!! 鎧がっ!!」
あれ?
シャルロッテが泣きながら鎧って連呼してる。
そんなにショックだったのか?
「いや、鎧壊してもいいって話で……」
「ありがとうございます!! 本当に……、ありがとうございますっ!!」
「へ?」
シャルロッテが俺に抱き着いて、胸に顔を擦り付けて泣いている。
ちょ……、どういうこと?
「詳しい話はまた後程。シャルロッテ様。まずは着替えなどを……」
「そうだったわね。えっと、鏡原師狼って言ったわね。後でちゃ~んとお礼をするから、楽しみにしていなさい♪」
「鏡原様はこちらに……。本当にあの鎧を砕くとは」
「どういうことですか?」
何かいわくつきなのか?
あれだけの防御能力を備えているんだ。国宝クラスでもおかしくはないぞ?
「あの鎧は魔王の呪いだったんですよ。詳し話は直々にされると思いますので、私の口からはこの辺りで……」
「呪い?」
無敵の鎧って、何の冗談だ?
まあ、詳しい事は後で説明されるだろう……。
読んでいただきましてありがとうございます。




