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プロローグ

   プロローグ☆明暗・アルフレッド

 レンズに彼の蒼い瞳が拡大されて写しだされる。その中央に黒いひとみがあった。それをまばたきが瞬時に見え隠れさせる。

どうやら機械の調子は良いようだ。

 彼が器具の準備をしていた時、コンパートメント(個室)のドアが開き、地球からずっと彼と同室をあてがわれていたウィル・バートンが姿を現した。

「何をしているんだ?」

彼から見て、ウィルの顔は陰になっていてその表情が見えなかったが、おそらく見えたとしても無表情だっただろう。その質問する声には、いくぶんとげがあるようだった。

「ああ、ウィル。眼底検査の器具を用意しているところだ」

「眼底検査?なんでそんなものが必要なんだ?」

ウィルはかなりいぶかしんでいるようだった。

彼の手元で、たった今用意が整った。手っ取り早く一番近くにいるウィルから検査に協力してもらおうと彼が思っていたら、ウィルは強引に彼をコンパートメントからひっぱりだした。

「いったい何なんだい?」

「部屋に戻る途中で船長から緊急コールがかかった。隕石の一種がぶつかって、船外に小さな穴があいたらしい。放っとくと後々航行に影響の出る大きさだそうだ。俺たちの区画が一番近いから修理を要請された」

「それは大変だ。じゃあ眼底検査は後回しだな」

彼がそう言うと、

「そうだな」

ウィルは感情を殺した声で返答した。

 船外活動をする基本理念で、二人以上の人間が必ず組になって互いをサポートしなければならない、というのがあった。

ここにくるまでみてきたウィルはいいやつだと思う。その点では彼には不安はなかった。

「応急処置の用具はどこだい?」

気密服に着替えながら、彼は尋ねた。

「用具?…ああ、すぐ俺が後からもって出るから先に問題の箇所を見てきてくれないか?」

ウィルはやけにもたもたと気密服を着るのに手間取っていた。

彼はしかたなく、先にエアロックに入り、命綱一本を頼りに船外へ出た。

この宇宙船の目的地であるリゲル恒星系が、わずかだが確実に近づいてきている。その証拠に、リゲルの青白い光がまぶしかった。

彼は勇気がある方だが、さすがに虚空を泳ぐのには不安があり、恐々船の外壁をつたって移動して行った。

ほどなくたどり着き、ウィルの話どおりならば、そこに直径二㎝の穴があるはずだったが、穴どころか小さな傷一つついていなかった。

これは…どういうことだ?

彼は眉根を寄せ、そして何かの予感に突き動かされるように大慌てで船内へ戻ろうともがいた。

気密服内の通信機が機能していない。

命綱をたぐりよせると、その野太い、決して切れそうにないと思われるファイバーの幾重にも通った綱の先が、ぷつりと切れているのを見るはめになった。

「…ウィル、ウィル。お前が地球から密航した殺人アンドロイドだったのか」

彼はなぜ自分が先にウィルの眼底検査をせずに相手を信用してしまったのか、と悔やんだ。

実は船長から極秘でアンドロイドを見分けて欲しいと頼まれていたのだが、彼は、よりにもよって、そのアンドロイドに一杯食わされてしまったのだ。

眼底検査をすれば、普通の人間なら見えるはずの毛細血管が、アンドロイドの場合には見られないのですぐにわかる。そのことはアンドロイド本人が一番よく知っている事実だった。

ウィルは自分の秘密を暴かれる前に先手を打ったのだ。

 彼が宇宙船のコクピットの方まで船体をつたって行き、誰かに知らせるしかない、と思ったとき、宇宙船は予定外の航行速度を出した。

無音の衝撃。

くるくると回転しながら船体から離れていく!

彼は虚空にただ一人取り残されてしまった。

 それから。

ずいぶん長い時間、彼は漂っていた。

辺りには全く何もない。

真空のただ中に気密服姿でたった一人放り出されて、そのうち上下左右の感覚さえも麻痺しかけていた。

遠くに無数の星の瞬きが見えたが、どれも遠すぎて手が届かなかった。

 ただ一つ、強烈な光を放つ恒星リゲルを彼は幾度も見た。

「俺の目的地はあそこだ。誰が何の権利があって俺をこんな目に合わすんだ。ウィル!次に会った時を覚えていろよ。次…?俺はまたお前に会うのか?…会えるのか?」

長い沈黙。答えは出ない。

「リゲル。リゲルよ。俺はお前の光の下で俺の夢をかなえるためにここまで来たんだ。生まれ故郷の星を捨ててまで。それなのに、俺の旅はここで終わりなのか?」

長い沈黙。やはり答えは出ない。

いろんな思いが駆け巡り、そして消えていった。

 時間が経つにつれ、やがて彼の意識は遠のいてゆき、だんだんと、もうどうでもかまわないとさえ思い始めていった…。

   ☆

 そこは一面の麦畑。金色の風が渡ってゆく。

暖かい空気に包まれて、見上げる青空は雲一つなく冴えわたっていた。

いつからか彼は一人でそこに立っていた。

「俺は何をしていたんだっけな」

そして何をするつもりだったのだろう、と思っていた時、ふと何かの気配を感じた。

ちりちりちりん。

鈴の音だろうか?どこからかかすかに聞こえてきた。彼が辺りを見まわすと、いつのまにか風がやんだ。

空を振り仰いで、どきり、とする。何かがここへ降りて来る。

それは人の形をしていた。

それは重力を感じさせず、ふわりと宙に浮かんでいた。

身にまとった赤い衣は、ちろちろと炎が燃えているかのように見えた。

左手に一本の錫杖を持っていて、鈴の音だと思ったのは、錫杖についた無数の金属の輪が鳴る音だった。

その人物が彼の前に降り立つと、刹那、周囲の時間が止まった。草の葉一つ微動だにしない。

彼はほおがちりちりとするのを感じて、緊張した。

「男?女?…子ども?…老人?」

その人物はいわば全ての中庸を集結したような人物だった。年齢も性別も超越した独特の雰囲気を漂わせている。

「あなたは先へ進む意思がありますか?」

「ああ、もちろんだ」

何か大事な事が記憶の縁でひっかかっているもどかしさがあった。

「そう。あなたは行かねばならない。先へ」

ふっ、とその人物は微笑んだ。

「先へ進むその代償にあなたは何をくれますか?」

「えっ?」

「願いを一つかなえる代わりにあなたの大切なものを一つ預かります」

「等価交換、ってわけか…」

「まぁ、そういう言い方もできますね」

今度は底冷えのするような冷酷な光をたたえた瞳で彼を見下ろす。

「少々の犠牲はいつでもつきまといます。それでも、いつかは癒される。その時、あなたは自分が『何者』であるかを同時に知ることでしょう」

「言っていることが難しすぎてわかんないんだが」

彼は苦笑した。

その人物はまっすぐに彼の目を見据えた。

その時になって初めて、その人物の瞳の虹彩が七色にきらめくのが見えた。

赤・橙・黄・緑・青・藍・紫…。

中央の黒いひとみを虹の七色が縁取っていた。

こんなこと、ありえないのにな…。

彼は軽いめまいを感じた。

目前の人物のひとみの中にいつのまにか、また別の世界・宇宙が広がっていて、彼を容赦なく吸い込んでいったー。

   ☆

 目を開けると、まぶしさに目がくらんだ。

「ドクター。意識が戻りました」

かたわらで聞き慣れない女性の声がした。

やっとのことで薄く目を開くと、かろうじてベッドに横になった彼の周囲を複数の人物が囲んでいることがわかった。

消毒薬の独特の匂い。

向こうでてきぱきと器具を扱う手の甲に医療用のアンドロイドに義務づけられたロットナンバーが見て取れた。

「ここは病院なのか…」

彼が息をつくようにつぶやくと、担当医が彼のそばに来た。

「意識ははっきりしていますか?…あなたは宇宙空間を一人で漂っていた時に偶然通りかかった貨物宇宙艇に発見されて保護されたのですよ。ここに収容された時には恐らくもう意識は戻らないものだと思っていましたが…。これは奇跡とでもいうのでしょうな」

ああそうか、と彼はぼんやり思った。

どこからどこまでが夢で、どこまでが現実なのだろうか?

しばしの混乱。

そう。宇宙空間で味わったあの絶望こそが現実で、あの暖かい麦畑のやすらぎは夢だった

のだ。夢にしてはリアルで鮮明すぎたが。

「!」

その時、とある違和感が彼を襲った。

「色が…」

「え?」

「色がわからない。世界がまるで光と影だけでできているように思える」

周囲の人達は顔を見合わせた。

「あんな事になって、全く後遺症がない、というほうが無理なのかもしれないが…」

担当医は眉根を寄せてしかめつらしく言った。

「非常にめずらしいケースですが、あなたの場合、なんらかの原因で色覚異常になったようですな。もちろん何かのきっかけで治ることもありえますから、あまり落胆されないことだ…」

医者の説明によると、人間の視神経には光の明暗だけを見分ける桿体(柱状体ともいう)と、色彩を区別する錐体という器官があり、彼の場合、後者の機能が働かなくなったということだった。いわゆる色盲の状態だという。

彼は、ある意味、記憶障害よりもたちが悪いことになったな、と思った。彼の周囲のもの全てが色彩を欠き、光の明暗だけがその世界を構築していた。

「とりあえず意識があることをよしとしましょう。…こちらのIDカードの写真はあなたで間違いないですね?」

地球発行の彼のIDカードを見せられた。唯一肌身離さず持っていたものだ。それは身分証明にもなり、病院の費用を賄えるだけの費用さえも捻出してくれた。

『Alfred・E・V・L』それが彼の名前だった。

 退屈な入院期間を経て、体力が回復すると、アルフレッドは退院して、次の身の振り方を考えなければならない段階にさしかかった。

「せっかくリゲル恒星系の宇宙コロニーに来たんですもの、街をみてきたらいかがですか?」

親しくなった看護士の一人がそう勧めてくれたので、アルフレッドは病院の外に出てみることにした。

 巨大な円筒状のコロニーは回転することによって遠心力で人工重力を造りだしている。

用途によってそれぞれいくつかの階層に分かれていて、人々が暮らす街は一番中心部に存在していた。

行き交う人々はアルフレッドに無関心で、彼は孤独を感じずにはいられなかった。

無理もない。知り合いも身寄りも全て今は遠く離れた太陽系に残してきたのだ。

アルフレッドがわざわざそんな大切なものを捨ててまで地球を飛び出したのには、いくつかの深刻な理由があるのだが…(その最たる理由として、太陽系で彼が有名になりすぎたことが挙げられる。)

彼は、誰も彼のことを知らないリゲル恒星系という新天地で新しい生き方をするつもりだった。再出発は華々しく飾るつもりであった。

でも実際にここへたどり着いてみると狂おしいほどの孤独が彼を待ちうけていた。

それに、希望にもえていた矢先にあんな目に遭って色覚まで失ってしまった。

 さんざん悩んだ末、アルフレッドは前向きに、何か仕事を捜そう、と思った。

ちゃんとした収入源を持ち、生活の基盤を確立すれば、この世界でもきっとやっていけるだろう、と考えたのだ。

しかし、彼には気がかりな事があった。特に、あの殺人アンドロイドのウィルのことだ。いつまた彼の前に姿を現すかわからない。

安全に身を隠しておける仕事はないものか?

アルフレッドは手探り状態でコロニー内の情報を仕入れた。街角のコンピュータの端末で街の案内地図を呼び出し、コロニー内の自治を行っている中央管理局の存在にたどりついた。

場所を調べ、足を運んでみると、果たしてそこでは地球発行のIDカードが通用しなかった。

そこで、新しくコロニーのIDカードを造る手続きをした。

身長、体重、目と毛髪の色、指紋、掌紋、血液型、DNA情報、そして最後に網膜パターンの登録を終えると、新しいIDカードができあがった。

プラスチックでコーティングされたカードは、方向を変えてみるとまじめくさった顔つきの彼の写真がホログラム状に浮き出た。

次に、管理局内の職業斡旋所でコンピュータによる職業適性検査を受けた。たいして待たされずにいくつかの仕事を記載した用紙を受け取った。

「こいつにしよう」

用紙をぱしん、と叩いて言った。

彼が選んだ仕事。それは、小人数でチームを組んで宇宙船に乗り、第三惑星の調査に向かう、というものだった。

即断即決で仕事の申請をすると、詳細を後で知らせてもらえるのを知り、安心して中央管理局を後にした。

目的が定まると、自然と気分が落ち着いた。

アルフレッドは街に着替えや身の回りの品物を買い揃えに行った。

もう、孤独感など忘れてしまっていた。ただ新しく始める事で頭が一杯になったのだ。

アルフレッドは、とある店先で足を止めると、そこで売られていたサングラスを手に取った。

それをかけることで色覚異常になっていることを少しでも忘れることができそうな気がした。

彼は手頃なサングラスを一つ買い求めると、それ以後常にかけておくようになった。

   ☆

 第三惑星調査のチーム乗組員は全部で七人だった。

アルフレッドの予想を裏切り、船長はうら若い女性だった。だが、男ばかりの乗組員相手に少しも物怖じすることなく、頼り甲斐があった。彼女は自己紹介の時も威厳を見せながら挨拶すると、『ファナ・ウィーナ・グリンヒル』と名乗った。

 「紅一点はすごぶる美人だよな」

くうー、と力をこめて『ヒロキ・ホシノ』が言った。彼は主に宇宙船の機関部で整備ロボットとともに仕事をすることになっていた。

若いのに少し昔かたぎな所があって、「機械は人間が扱うもので、機械に人間が扱われるものじゃない」と口ぐせのように言っていた。

ヒロキは実際に航行が始まってからは常に機械や整備ロボットの状態をチェックして、細かな異変も見逃さなかった。

それは宇宙船が最良の状態で航行するためには欠かせないことでもあった。

アルフレッドは第三惑星の地質や大気組成の調査を担当する予定だったが、航行中はヒロキの補佐で船内の簡単なメンテナンスを担当した。

アルフレッドとヒロキは不思議と気が合った。

 コロニー育ちのせいかはたまた他の要素があったのか、一人群を抜いて背の高い男がいた。

聞くと彼は宇宙物理考古学者ということで、皆は『ジラフ(きりんのこと)』とか『学者先生』とかいうあだ名で呼んでいたが、見た目が鋭い銀縁眼鏡をかけた神経質そうな感じなので、本人の前では『ジラルド・フィリップ・ロッシーニ』という名前のファーストネーム『ジラルド』で通っていた。

 その道で有名な星間貿易商の『クロス・サンドル』という男は、口が達者で抜け目なく、どこか損得勘定で動くところがあった。表面上は誰にでも愛想が良いのだが、内心何を考えているのかわからないところがあった。

そのクロスと、貨物の整備や雑用を担当している『ホーシロー・トマス』はいつもつるんでいた。ホーシローは無口で無愛想な男だったが、クロスとだけは気が合うらしく、自由時間はよく二人でカードをやっている光景が見られた。

 そして七人目は、年かさの医者で、生物学者である『ベラミー・ヴェイン』。彼は確かに腕はいいのだが、酒びたりで、アル中の一歩手前だった。

 さて、問題の第三惑星だが、実は数年前までその存在は確認されていなかった。

未だに第三惑星があるとされている宙域の星図には便宜上、小惑星帯を示す表示のままになっている。

「普通、小惑星帯というのは、もともと一個の天体だったものが、隕石の衝突などでばらばらに散ったもののことをさすの。でも、数年前、近辺を通りかかって偶然小惑星帯の奥に一個の天体を発見した船があった。その乗組員の報告によると、大気圏が存在して、しかも太陽系派生型ではない異星人がいた、というのよ」

船長のファナが皆を集めて詳しい説明をした。

「その話、どこまで信用していいのかわからんな」

とクロスが渋面をつくって言った。

「まあね。…だからこそ私たちが派遣されたのよ。本当にあるかどうかわからない未知の惑星の調査のために」

「惑星が無数の小惑星を隠れ蓑にしているのか…。もし嘘の報告に踊らされてるんなら、俺たちかなり馬鹿をみるな」

とヒロキが笑って言った。

「…小惑星帯を抜けて第三惑星に接近したら、小型探索船で惑星上に降りてみることを提案したい」

とジラルドが言った。

「小型探索船の操縦に長けているのはヒロキだな。それから、まず大気成分や地質を調べて我々が適応できる環境かどうか調査してもらうために、アルフレッド、君も同行してやって欲しい」

とクロスが言った。

惑星調査の先兵として二人の名があがったわけだが、誰にも異存はなかった。

「俺たち一番乗りか。光栄だな」

とヒロキが嬉しそうに言った。

 宇宙船はコロニーを出発してから幾度か途中の開拓中の惑星に寄って、物資や燃料を補

給したり、乗員の気分転換を図ったりした。

 アルフレッドたちが計器類のチェックを行っていると、船内にツァラトゥストラが流れてきた。常時船内には何かしらの音楽が流れていた。古今東西、太陽系やリゲル恒星系でヒットした曲を流しているらしかった。

休憩時間に、

「リクエストしたら何でもかけてくれるのかな?」

とアルフレッドがファナに尋ねた。

「ええ。かなりの曲数の音楽ソフトがあるのよ。クラシックでもロックでも何でもござれ」

「俺、『STORY/WRITER』が聴きたい」

とヒロキがファナに言った。

「俺は…、十年程前に地球ではやった『Light/is/Right』って曲がいいな」

そう言うアルフレッドの横顔を、ヒロキがちょっと何かを思いついたように見た。

「わかったわ。捜しておくわね」

ファナはそう言って微笑んで立ち去った。

「いいよなぁ、彼女。…ところでさ、アル。『ライト』って言えば、一番に思いつくのは『ライト博士』だぜ。地球にいたアルなら、あのセンセーショナルなニュースを知っているだろう?新しい宇宙船の推進力の理論を唱えて、認められて有名になったのに、消息を絶った、って話」

「いや、よく知らないな」

とアルフレッドは真顔で答えた。

「惜しいよなぁ。その人がいれば、短時間で長距離の移動が可能な新型の宇宙船が実用化された筈なのに」

「そうかい?現在の航行技術も捨てたものじゃないと俺は思うけどな…。それに、強力な推進力が得られるということは、それだけ慎重な使い方をしなければ大変なことになる。軍事目的に利用されたらどんなことになるだろう?」

「そんなものかな?」

「そんなものさ」

アルフレッドは実際にはライト博士の事をよく知っていたが、あまりその話題には触れたくないようだった。

 やがて宇宙船は問題の宙域にさしかかった。

低速航行で小惑星帯を抜けて、目的の惑星が見える位置に宇宙船は近づいた。

「本当にあった」

とヒロキがつぶやいた。

「なかったらどうするつもりだったんだ?」

アルフレッドはにやにや笑ってヒロキを茶化した。

一同はスクリーンに映る第三惑星にみとれた。

「光の加減で赤や緑や青に見えるな…。光源はどこから来ているんだろう?リゲルの青白い光は周りの小惑星に邪魔されて届いていないだろうに…」

とジラルドが見解を述べた。

「確かに大気が存在するようね。先の報告の信憑性が増したわ。ここからが、私たちの出番よ。でもどんな危険が潜んでいるかわからないわ。慎重にいきましょう」

とファナが全員を見渡して言った。

「俺たちにまかせてくれ。な。アル」

とヒロキがウィンクしてよこした。

宇宙から観察した限りでは、主な大陸が三つみえた。そしてそれらを取り囲む海らしきものも見えた。

アルフレッドとヒロキは船内に五機配備されている小型探索船のうちの一機に乗りこんだ。

「システム異常なし。調査用機材も万端。食糧その他準備よし」

「それじゃ、行ってきます」

船内モニターにヒロキとアルフレッドの二人の姿が映った。他の者は思い思いに見送った。

本船のハッチが開き、二人を乗せた小型探索船は惑星へ向けて投下された。

大気圏突入の際、操縦に忙殺されながらも、

「地上から見たらこの船は赤く燃えてみえるんだろうか?」

という思いが、ちらりとアルフレッドの頭をかすめた。

目を閉じた一瞬、紅蓮の炎が見えたような気がした。それはわずかな時間の幻だった。

その時、本船からの通信で音楽が流れてきた。

それは二人がリクエストしていた曲だった。

ファナの好意に感謝しつつ、二人は任務についた。

「You have.(コントロール)」

「I have.(コントロール)」

「五分後に自動操縦に変更」

「ラジャー」

三つの大陸のうち一番小さな大陸を目指して小型探索船は降下して行った…。



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