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06話『アクセル全開』

 翌日。

 ミゼの護衛をすることになった俺は、まず、彼女の基本的なスケジュールを調べることにした。


 俺はミゼの友人だが、彼女の生活サイクルまでは知らない。

 朝は何時に起きるのか。何時に学園へ登校するのか。放課後は必ず直帰しているのか。寮に戻った後、外出することはあるのか。……護衛をする以上、最低でもこのくらいの情報は把握しておく必要がある。


 午前六時。

 俺は腕を組みながら、目の前にある女子寮を観察していた。


「……思ったよりも、警備は整っているな」


 流石は王立ビルダーズ学園の学生寮と言ったところだろう。貴族の子息令嬢が通うこともあるこの学園の警備は万全だ。学生寮の周辺では、常に二人以上の警備員が巡回している。


 ――俺が敵なら、どう動く?


 ミゼがこの女子寮に住んでいることを知っている前提で、考える。

 自室というのは、セキュリティが強いようにも思えるが、実は狙われやすい場所である。部屋の中にさえ入ってしまえば、第三者の目を完全に避けることができるからだ。外の警戒さえ潜り抜ければ、最も確実に対象へ接触できる場所である。


 変装して侵入するか、寮に住む人間を脅迫して操るか――。

 方法は色々ある。女子寮も安全とは言い難い。


 勿論、そういう事態を未然に防ぐために俺という護衛がいるわけだが……敵が女子寮に侵入した場合の対処法も、今のうちに考えておくべきだろう。行動のパターンは事前に決めておくに越したことはない。そうなってからでは遅いのだ。


 既に敵が寮の内部に侵入している場合、時間との勝負となる。

 変装している暇はない。窓から入るか? それとも正面突破するか?


「よお、トゥエイト」


 顎に指を添え、考え込んでいると、背後から声を掛けられた。

 振り向くと、そこには汗だくの学友が立っていた。


「グランか」


「今日は走ってねぇのか?」


「ああ、少し考え事があってな」


 ビルダーズ学園の生徒には、日課で早朝ランニングをしている生徒が結構いる。中でも俺とグランは本格的に走り込むタイプとして、一部のランナーたちの間では有名になったりしているのだが……護衛の任務を受けた以上、暫くランニングはできそうにない。


 今日も長い距離を走ってきたのだろう。

 立ち止まり、息を整えるグランに対し、俺は疑問を口にした。


「グラン。ここの女子寮って、男子禁制なんだよな」


「ん? まあそうだな」


「どうにかして、男が入る方法って無いか?」


「お前……朝からアクセル全開かよ…………っ!!」


 グランが尊敬の眼差しを俺に注いだ。

 何か誤解されているような気がする。


「だが、駄目だ。ここは止めとけ。うちの学園のセキュリティは鉄壁だ。おかげで、既に何人の勇士が散ったか……くそっ」


 グランが悔し涙を零しながら言う。

 何故かその声音には実感が込められていた。


「うちの女子寮な、見えない結界が張ってるらしいぜ」


「結界?」


「ああ。許可のない人間が入ろうとすると、電流が走る」


「電流って……」


 随分と物騒な結界のようだ。


「その許可というのは、どうやって認識しているんだ?」


「さぁ。俺も調べてみたけど、よく分からなかった。……見えないっていうのが嫌らしいよな。こいつは立派なトラップだぜ。……トゥエイトも気をつけろよ! あと中に入れたら俺にも方法教えてくれ!」


 そう言って、グランは再びランニングを再開した。

 学生寮は、学園の敷地内ではなく、少し離れたところに建てられている。グランのランニングはもうすぐ終わるだろう。校舎まで走った後、シャワー浴びて終わりといったところだ。


 学生寮と学園は、どちらも高度なセキュリティで守られている。

 なら、敵が動くタイミングは限られている筈だ。


 例えば――二つの施設を行き来するために必ず通る、通学路。


「……さて」


 今のうちに、倒しておくか。



 今のところ伏線にする気もないので、結界について説明を。

 女子寮の結界は、女子生徒の学生証を所持していないと出入りできない仕組みです。ビルダーズ学園の女子生徒は学生寮へ案内される際、寮母から「学生証を持っていないと結界を出入りできないこと」「このことは誰にも言わないこと」の二つを教わります。

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