召喚者達にまとまりがない
しかし、俺のチート能力が『筋力チート』って書いてる割に、俺の攻撃力は誠治とあまり変わらないな……。
「そういう時は特殊能力のコマンドを詳しく見たら良いよ?」
心を読むな!何なんだお前は、人間じゃないのか?
取り敢えず、誠治に言われた通り特殊能力のところを詳しく見てみる。
筋力チート:筋力が劇的に上がる能力。《HP、攻撃力、防御力、敏捷性ボーナス+9999》
と、書いてあった。
「おぼふっ!……へ……?」
俺は思わず吹き出してしまった。尋常じゃない数字が書かれていたのだから当然だろう。
「何だ……この数字……?」
劇的に上がり過ぎだろうが、どう考えても。
チート能力とは聞いていたが、ここまで歯止めのないチート能力だったとは……これじゃクソゲーだぞ、オイ。
「まてよ……俺の理不尽度は5。これが能力の理不尽さを示すものだとすれば……」
この二人も俺と同じレベルで理不尽な能力持ってるって事かよ⁉︎
「どうしたの?何か良いこと書いてた?」
悠里が呑気に俺の肩をゆすってくる。
相当ヤバいことが書いてました。
「私もね、幸運チートってところに良いこと書いてたんだ〜」
なんて、能天気な事言い出した。
あかんやつやこれ。絶対ヤバいこと書いてただろお前。
俺は震える声で聞いてみた。
「へ、へぇ〜。何て書いてたんだ……?」
「うーんとねー、《運ボーナス+9999》って書いてたよ?」
アカーーーーーン‼︎‼︎‼︎‼︎
俺は心の中でシャウトした。俺の鋼の精神力が声に出すことを抑えさせた。グッジョブ俺の精神力。
運ってカンスト前提なら1番ヤバい数値なんだぞオイ!マジで!
俺は顔面蒼白になっていた。ここにいる奴ら全員が束になったら世界滅ぼせるぞ。誇張でもなんでもなく。
「どうかしたの?」
誠治も同じく能天気だ。お前はこの状況に危機感を感じてくれ!頼むから!
「お、お前の特殊能力ってさ……」
「ああ、視覚チートのこと?」
何だか誠治も得意げな表情をし始めた。イヤな予感が……。
「アレはね、看破系、鑑定系、閲覧系のスキルにボーナスが付くんだよ」
「……まさか、+9999じゃねえだろうな」
「その通りだよ?良くわかったね」
俺は激しい頭痛に襲われた。
俺より理不尽度高い奴は一体どれだけのボーナスが付いてるんだ……?
「今だから言うけど、閲覧スキルにボーナスが付いてるから他人のステータス欄覗けるんだよね、僕。だから君達に声を掛けたんだ」
「ほー」
「……怒らないの?」
「お前が俺に腕相撲で負けて怒るんなら俺も怒るが?」
「そういうところ、君の良いところだと思うよ」
「お世辞はよせよ」
俺は別になんとも思っていない。周りがギスギスしてたら打算的にもなるだろうしな。
考えた結果俺たちに声を掛けたんだったとしたら、俺たちが強いと思われたってことだしな。
しかし、これからどうすれば良いんだろうか。具体的に何をすれば世界を救えるのか、そもそもこの世界は何の危機に晒されているのか、大体どうやってこれから生活するんだ。
すると、一人の男がリーダーシップをとり始めた。そいつもイケメンだった。誠治とはまたタイプの違うイケメンだ。気に入らないな。
「皆、ここは世界を救う為に協力しようよ!」
「ああぁ?何でお前みたいな奴と協力しなきゃいけねえんだぁ?」「悪いけど断る」「イケメン死ね」「君と協力する必要は無いよね」「ていうかリーダーシップ勝手に取ってんじゃねえよ、うぜえな」「イケメン死ね」
ですよねー。皆アクが強過ぎるな。このメンツ。集中砲火じゃないですか、怖いな。
そろそろ止めてあげなよ。イケメン涙目だよ?アイツは正義感で言ってたんだろうに。
あと「イケメン死ね」って言ってる奴!嫉妬が醜いゾ(ブーメラン)。
「皆で能力を教え合って協力して行けば、世界だって救えるよ!」
お前めげないな。
「はぁ?能力なんて教える訳無いだろぉが」「皆の能力を知った所で協力なんて無理だと思うけどね」「イケメン死ね」「それこそ不可能だな」「もういいか?お前の考えはつまらんぞ」「イケメン死ね」「いい加減にしろよ、うぜえな」
「う……そ、そう……デスカ……」
諦めたー!ですよねー!
あと「イケメン死ね」って言ってる奴!止めてやれ!マジで!
大体、世界を救った奴が一つだけどんな願い事も叶えてもらえるってんだから協力なんてする訳が無い。
「おい、俺たちも行かないか?」
面倒臭いし悠里と誠治連れてさっさとここから出て行こう。もう既に何人か居なくなってるし。
「そーだねー、早く外が見たいなー」
「お前は呑気過ぎる」
「ここにいても仕方ないだろうしね、行こうか」
割と割り切って行動する奴だったな、誠治。すまないイケメン、お前は輝いていたぞ。
リーダーシップを取ろうとしていたイケメンに黙祷を捧げつつ俺たちは教会の外へと向かった。