休日がない
お久しぶりです。このお話の投稿ペースも少しずつ上げて行きたいです。
「さぁ、英雄の凱旋だー!」
「お、おー……」
初めてモンスター相手に仕事した悠里は楽しげにギルドへと帰還する道をずんずん歩く。
パラサイトダンデライオンは種や根っこなどが主な素材となるらしい。
一応茎もなかなか強靭な素材となる。
今回に限って言えば俺も何もしていないので帰りの荷物持ちは俺だ。ちなみに俺しか仕事をしていない場合でも同様に俺が荷物持ちだ。
なぜって?そりゃあ……ほら、俺が力持ちだからですよ。
俺の筋力チートがあれば常識を超えた量の荷物を持つ事など造作もない。まぁ……、だからと言って便利屋みたいに使わないで欲しいが。
「いやぁ、私の能力強いねー。ね、ね?」
「あー、そーだなー。お前には誰も叶わねーよ」
俺は棒読みで答える。
しかし、これは本心だ。
だってなぁ……、どんなに不利な勝負だって『運が良かった』で片付けられるんだぞ?勝てるわけが無いだろう。
「それにしても、こんなに難しい依頼でも余裕でこなせるなんてね……。こんなチート能力を授けて僕たちに何をさせる気なんだろう……」
「だよな。最悪この能力を悪用して世界征服を企む奴が出てくるかもだぞ」
大体、召喚された奴らは全員揃って協調性のカケラすらなかった。
まぁそれはウチの悠里も同じなのだが。
まぁ、それは置いといて。
あんな奴らに常識を超えた力を授けてしまって大丈夫なのだろうか?
奴らが世界征服に乗り出したらどうするんだ?
俺は勿論そんなつもりはないが、悠里はどうせ止めようとするだろうな。あいつは良い子ちゃんだし。
「ほらほら、康介!鑑定に行こうよ!」
「あ、あぁ。すぐ行く」
「悠里さんもはしゃがないで。ギルドは逃げないよ」
悠里は自分の手柄で危険モンスターを倒せたのが相当嬉しいようだ。
俺も初めて悠里が単独で倒したモンスターであるだけに感慨深い。
---ギルド---
ギルドの受付嬢がトントンと換金の早見表を束ねながら厳かに言った。
「全て合わせて金貨30枚で買い取らせていただきます」
もちろん俺たちは大喜びだ。
「やたーっ!」
「中々だな」
「だね。相当長い事生活には困らないよ」
そもそもドラゴンのお陰で家を即金で買えるほどの金を手に入れていたのだ。生活に困ることなんてあるはずがない。
あれだけ大量のパラサイトダンデライオンを狩ったんだから、これぐらい妥当だよな。
「明日に受けるクエスト物色しとこーっと」
「おいバカやめろ」
このバカはまだクエストをやる気だ。もうやだ。明日は一日中家から出ないぞ。
「ね、ねぇ、悠里さん?あ、明日はお休みの日にしないかい?明日は日曜日だし……」
「うーん、じゃあそうしようか。服とか買いたいし!」
やったぞ。でかした誠治!
こうして俺たちは週に一回の休みを手に入れた。
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「おい、明日が日曜日だなんて良く知ってたな。この世界って曜日とかあるのか?」
「うん?知らないよ?ほら……、嘘も方便って言葉があるでしょ?」
「嘘かよ!……いや。まぁいいや。ラッキーだって思おう」
悠里は明日は服を買いに行くらしい。女の子らしいな。
俺たちは日頃の疲れを癒すことが出来る。
「な、なぁ。明日は銭湯に行かねーか?」
「銭湯……って。そういえばなんであるんだろうね?アレは日本の文化な気がするんだけど……」
「細かいことは気にすんな!異世界なんだから!」
そんなことはどうでもいいのだ。よく考えたらどうでもよくないかも知れないが、どうでもいいのだ。
正直いって早く羽を伸ばしたい。
それに、男同士で遊ぶのだって楽しいはずだ。
俺たちは明日の行動方針が決まった。
しかしら俺たちが銭湯へ到着する事は結局出来なかった。
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次の日。
「じゃあ、買い物してくるから!晩御飯までには帰って来るね!」
「おう、気をつけろよー」
と、言いつつも心配はしていない。
だってあいつ俺より強いし。
ガチャリとドアの鍵を閉めて遊びに行く悠里。友達とか居ないだろうに……一人で買い物か。言えば付き合ってやるのに。
まぁいいや。さて、俺たちも行くか。
「風呂に行くだけじゃないんでしょ?」
「あぁ。ちょっと気になってる店があるんだ。そこで昼飯食って、その後露店とかで悠里にお土産見繕ってその後風呂だ。そんで晩飯の買い物して、家で飯作って悠里を待つ。こんな感じだ!」
「うん、良いね。よく練られてるよ」
どうやら見た感じリア充の誠治からしても中々悪くない計画のようだ。
ならば良い、と俺も少し安心する。
「じゃあご飯食べに行こうか」
「あぁ。楽しみにしてろよ……。良いとこ見つけたんだ」
俺たちはしっかりと家を施錠し、街へ繰り出すのだった。
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「ここかい?」
「おう」
俺たちが到着したのは酒場だった。
そう、酒場である。
「なんで酒場?お酒飲むのかい?」
「別に昼間から酒飲むんじゃねーよ。ここの飯がうまいんだ」
メニューなんてものはないのだが、前に街を一人でうろついていたらこの店からいい匂いがして入って見たのだ。
すると、近くの客が俺にとって馴染みの深い料理をぱくついていたのだ。
俺も同じものを頼んだのだが、これがなかなか美味かった。
そして、今日もその目当ての料理を頼んでいる客を発見した。
うむ、やはり見ただけで腹が減ってくるぜ。
「おっさん。あれと同じものを二つ」
「一人銅貨5枚な」
「ほい」
俺はサッとオヤジに金を渡す。
オヤジは直ぐに料理に取り掛かった。
「康介くん……。コレって……」
「そう。『天丼』だ!」
そう、この店。何故か『日本食』を提供している酒場なのである。
衣を付けて揚げたエビやイモをご飯の上に乗せて上からタレをかけて食う料理だ。
まぁタレは慣れ親しんだものとは少し違っていたが、些細な違いだったし、これも美味かった。
「ほれ、お待ちどう!」
「「頂きます!」」
出てくると同時に俺はフォークとスプーンが合体したような食器を使ってかっこむ。
箸はない。
少しの間無言。
「美味い!」
「だろ!?」
誠治は最初は無言で食いまくっていたのだが、胸につっかえたのか少し動きを止めて胸をドンドン叩いた後叫ぶように言った。
口から米が噴き出す。
しかし、構うことはない。
今日は感動の日なのだ。
日本食がある。ずっと異世界特有の味の薄い変な食い物ばっかり食ってたから尚更感動だ。そもそも金欠のせいでロクなもの食ってなかったからな。
いつの日か寿司が食いたいものだ。いや、ハンバーグとかカレーも食いたい。
俺たちはしっかりと天丼を堪能し、次の目的地へ向かうのだった。
今度は悠里も連れてこよう。
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「よし、お土産屋だ」
「王都のお土産って何があるんだろ……」
俺たちはお土産屋に到着した。いかにも老舗って感じの古い外観だ。
どうやらここ、王都の名産は食器類らしい。
適当な店に入ると、そこには絢爛豪華な食器が並んでいた。
うわ……高い……。
買えなくもない。というか、余裕で買える。
しかし、これを買って帰って悠里は喜ぶだろうか?
うーん、なんとも言えないなぁ……。
「キーホルダーとかあったらそれでいいかと思うんだが」
「いやいや、それじゃ修学旅行じゃないか。ちゃんと選んであげなきゃ。ここは僕に任せて」
リア充の誠治がドンと胸を叩いて言った。
うむ、やはりジゴロに任せておいたほうがいいだろう。
「やっぱり女の子は身につける物がいいんだよ。例えばネックレスとかの貴金属。ほ、今悠里さんは服を買いに行ってるし、やっぱりアクセサリーが良いんじゃないかな?」
「成る程。流石は誠治」
リア充の意見従っておこう。
そういうものが置いてある店は知っている。
露天にも売っていたが、金なら結構持ってるし普通に高い店で買うのも良いかもな。
「せっかくだから実用をかねようぜ」
「どういう事?」
「この世界には魔石ってのがあってだな……かくかくしかじか」
大まかに魔石の説明をすると、魔石とは様々な効果が付与された特殊な石だ。
持ってると効果を発揮するもの、砕くと効果を発揮するものなど様々だ。
アクセサリー類になるものは持ってるだけで効果を得られるものだけだ。
効果としては例えば、攻撃が上がるとか、素早くなるとか、運が良くなるとか、そんなのだ。
永続的に効果を発揮するのではなく、年月が経てば効果は少しずつ劣化していく。しかし、かなり長続きする。代わりに効果は少し控えめだ。
対して砕くと効果を発揮するものは、何かを発生させるタイプが多い。
炎、水、雷、風など、様々な現象を引き起こすことができる。
他にも防壁を出したり、刃物が出てきたりと効果の種類は多い。
こちらのタイプは砕くとなくなる代わりに大きな効果が期待出来るものが多い。
何故俺がそんなこと知ってるかって?下見の時におっさんを質問責めにしたんだよ。
「という訳で魔石なんてどうだ?せっかくだし全員ぶん買おうぜ」
「いいね。じゃあ魔石屋さんに行こうか」
そういう事になった。
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「うわぁ、沢山あるねー」
魔石屋は俺の想像と違って居た。
一応宝石店のような物を想像して居たのだ。だが違う。
客がすぐに手に取れるようになっているのだ。どちらからというとキーホルダー売り場に似た雰囲気を感じる。
しかし、お値段は全くもって懐に優しくない。
だが、問題ない。金ならあるのだ。
さてさて、何がいいかな?
「お、これなんてどうだ?防御が上がるやつ」
「僕は敏捷を上げたいな。見えるのはいいけど体が追いつかないことが多いし」
「じゃあこれか」
俺がスピードアップの魔石をつまみあげて言う。
「へぇ、質のいい商品だね」
「そんなこともわかるんだな。視覚チート」
ふむ、値は張るがなかなか質はいいらしいな。
誠治の目利きは完璧だ。チート能力に裏打ちされているのだから。
「康介くんと悠里さんはどうするの?」
「俺は……、やっぱ運かな。ラック低いし」
「じゃあ悠里さんは……もしもの時のために防御かな?」
「うん、いい感じだな。それに、防御の魔石は色が悠里の好みだと思うぜ。あいつ青が好きなんだ」
誠治のスピードアップの魔石は黄色だ。
俺のラックアップは緑。
そして、悠里の防御アップは青だった。
値段は全て合計で金貨24枚。なかなか高い買い物だが、今後の役に立つと思えば悪くない買い物だったと思う。
永続ではないと言っても長続きするとの事だしな。
「二人は付き合い長いんだね」
「まぁな。幼稚舎の頃から一緒だし」
「そりゃ腐れ縁ってやつだね」
「本当にそうだなぁ。ま、居心地は良いよ」
「女の子とずっと一緒って疲れないかい?」
「別に」
悠里とならば長時間一緒にいても疲れないし。
どんな人間にも一緒にいて居心地のいい1番の親友と言える人間がいるだろう。それが俺にはたまたま異性だったと言うだけの事だ。
「そっか。羨ましいね」
そう言って誠治は少し寂しそうな表情をした。
元の世界に誰か置いてきたのだろうか。彼女とか。それなら悪いことを言ってしまったかも知れない。
俺は少し気分を変えるかのように声を張って言った。
「じゃ、じゃあ早く銭湯に行こうぜ!」
「うん、行こうか」
俺たちは二人して駆け出した。
銭湯に着く頃には俺たちを包んでいたネガテイブな雰囲気は吹き飛んでいた。
何故って?知らんな。
一つ言えるとすれば、男は割と銭湯が好きなんだよ。




