日常
新しく書いた話です。
人狼の話は今度、閑話扱いで詳しく書こうと思います。
※9/31改稿しました。
古文教師の名前
斎藤天→斎藤薫
月曜日だ。学校が始まるのだが、何かすごい嫌な予感がする。急いで現在時刻を確認してみる。時刻は朝6時半だ。始業時間は8時10分で、俺の家から学校までは30分と少しで着くので、時間的には大丈夫だ。なら、この嫌な予感はなんだ。予感の正体が分からないまま、俺は制服に着替えて学校へ向かった。
学校へ着いてやっと、その正体が分かった。学校全体が昨日のあのニュースが話題になり盛り上がっていたのだ。それだけなら問題なかった。そう、それだけなら。
自分のクラスである高校1年1組に向かう。俺のクラスもそのニュースで盛り上がっていたが、俺に注目するような奴はいない。俺が、まだ《【アニメの中の能力をこの世界で作るには】の作者》が誰か分かってないようだと安心していると、突然後ろから肩を叩かれた。振り返るとそこには翔が笑顔で立っていた。翔はゲーム会社などを伊集院グループの御曹司なのだが、誰にでもフレンドリーに話すいい奴で、俺の親友だ。成績がいつもトップなので、道真と呼ばれてる。
「なんだ翔か。直前まで気配に気が付かなくてびっくりしたよ。」
「おっ、和樹にそう言ってもらえるとは。気配を消して近付いた甲斐があったな。」
そして、翔は笑顔のままこう言い放った。
「それより、《【アニメの中の能力をこの世界で作るには】の作者》って、和樹のことだよな。」
何故にバレた。いや、黙っていれば…
「何とぼけた顔してるんだよ。何、当たったの?マジか。」
「…当たったなんて誰も言ってない。」
「…それが、何よりも雄弁に語ってるって分かってる?」
「やっぱり、道真には敵わんな。」
「いや、和樹って顔に出やすいよ?」
「マジ!?」
「自覚なかったのか…まぁいいや。そろそろ授業始まるよ。」
時間を見るともう、8時5分を回っていた。俺は、席について、勉強道具を準備した。
一時間目は日本史の授業だ。俺らの日本史の教師は名を相部将吾という。今は、日露戦争について学んでいる。因みに、かなりの右翼だ。そして、それを隠そうとはしていない。教育者としてどうなのかは知らんが、地理の教師がかなりの左翼だから地理と日本史でバランス取れてていいんじゃないだろうか。
今日は特に面白いことは無かった。
二時間目は生物の授業だ。先生の名前は、小林楓だ。男な。因みに、教師は基本私服なのだが、生物と物理の教師だけは上から白衣を着ている。何故化学の教師が白衣を着ないのかは謎だ。
今は、筋肉について学んでいる。授業が始まってすぐ、今日は心筋をやると言った直後、それは起こった。
「普通の筋肉は、」
そう言いながら、小林先生は突然、両手両足を肩幅に開き、
「ピクッ…ピクッ…」
と言いながら、真顔のまま1秒に1回ずつ、両手両足素早く曲げたり伸ばしたりしだした。
「こうですが、」
白衣姿の人が真顔でそんな事をするからみんな爆笑だ。さっきまで、寝てた奴らもいつの間にか起きている。
「心筋細胞は、」
そして、小林先生は先ほどと同じく両手両足を肩幅に開き、
「ドクン…ドクン…」
と言いながら、さっきと同じように真顔のまま両手両足を曲げた。だが、今回は一度縮めた手をなかなか伸ばさない。縮めたままにしていた時間は大体0.3秒くらいだろうか。先生は縮めていた両手両足を伸ばした。それを1秒ごとに繰り返す。
「こんな感じなんです。何処が違ったか分かりますか?」
再びクラスから笑いが起こる。真面目にやってくれているのだろうが、真顔のまま白衣姿でやられると笑いを堪えられない。
「もう一度」
そして先生は一連の動きをもう一度繰り返し、再びクラスは笑いに包まれた。
今日も小林ワールド全開だ。受験には全く向いていないが、学問としては面白い。俺らの学校だからできることなのかもしれない。
三時間目は数学βの授業だ。うちの学校では数学がαとβの二つに分かれている。主にαは代数を、βは幾何をやっている。まぁ、ときどき中間っぽいのもあるけど。
今日は特に面白いことは無かった。
四時間目は政経だったのだか、先生が体調不良で自習となった。暇だ。隣のクラスも自習だったようで、人が集まってきた。人が沢山集まったので、みんなで人狼をすることにした。
負けた…こういうのは苦手なんだよなぁ…いつも負ける。何でだろう。
昼休み。人狼を終えると、翔と共に食堂へ行った。翔は基本お弁当だ。それが今日は向こうから誘ってきたのだ。食堂は高校塔の隣、高校職員室の目の前にある。高校塔の二階と同じ高さだ。そこでは、一般市民も王族も一緒に食事をする。まぁ、食事内容は違うが。この食堂、普通の食堂のメニューから、高級料亭のようなメニューまで、なんでもある。まぁ、高級料亭のようなメニューを食べている生徒なんて、殆どいない。大金持ちが特別な日に食べるぐらいだ。そんな食堂で僕らは生姜焼き定食を食べている。値段は780円と食堂にしては高めでいつもは買わないのだが、今日は翔が奢ってくれるようなのでありがたくいただいている。
「何か凄い事するだろうとは思っていたが、これ程とはなぁ。」
「だから、俺は何もしてないって。」
「まぁ、相手がそう思ってくれてるならそうなんだよ。まぁ、楽しんで来いよ。」
「うん。そうする。」
それ以降も雑談をし、昼休みを終えた。
五時間目は英語だった。先生の名前は、佐藤敏夫だ。砂糖と塩ではない。俺らの学校の英語は、英語1、英語2、英語の3つに分かれている。何故、英語3としなかったのかは謎らしい。3つある英語の中で、一番生活に直結しそうな、対話がメインである。因みにこの佐藤先生、某SNSのアカウントがこの学年を持って一週間もしないうちに割れた。まぁ、sugar&saltなんてアカウント名ならすぐ割れるわな。
六時間目は古文だった。先生の名前は斎藤薫。ドSだ。斎藤先生はこの学校のOBで、生徒会長かつ学年主席だったという。化け物だろ…
斎藤先生の授業は、話を聞いてるだけで頭の中に入ってくる。それだけでなく、時間通りにキリがいいところで終わる。やっぱり化け物だ。
おっと、授業が始まった。
「この『の』はなんだ。加藤。」
「格助詞」
「『の』は格助詞しかないだろ。意味だ。」
「主格の『の』です。」
「主格か?違うだろ。」
しばしの沈黙。
「所有格です。」
…今、英語の時間だったけ?
僕がそんな事を思っていると、クラスが笑いに包まれた。クラスメートの誰かが「それは英語や」と言うのも聞こえる。
「古文に所有格はない。」
先生の返しも笑いながらだ。先生も含め、みんな思いは同じなようだ。
因みに、答えは連体修飾格だ。
その日は放課後何も遊ばずに帰った。翔以外に俺が話題の作者だと気付かず、翔も言いふらさないでくれたからまだ良かったが、それでも疲れた。