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ノーマネー・ノーライフ  作者: ごまだんご
1章 荒んだ青年と安全?な世界
9/66

着せ替え遊び

宜しくお願いします。



「あの…………」


 えーっと、こんなのでいいかなぁ?ちょっとヒラヒラしすぎか?


「あの、えっと…………」


 こっちの方が実用的かな?いやいや、可愛いは正義というしな。彼女が着るんだったらヒラヒラスカートの方が似合うだろう。


「聞いてくださーい!!!」


 うおっ!ビックリした。どうしたんだよシャナ?急に大声出したりして。え?さっきから呼びかけていただろうって?わりぃ気付かなかった。そーだやっぱりここは本人の意見も聞かないといけないよな。


 店内でオドオドしているシャナの目前にババッと2着の服を突き出す。1着は水色のに胸元の赤い装飾がワンポイントになっているヒラヒラのワンピースのような服。もう1着は銀色のような光沢のある生地に緑色の生地を合わせてセットとして作られているカーディガンと上着のセットだ。こっちもカーディガンがヒラヒラしている。


 なに?実用的な服と迷っていたんじゃないのかって?だって可愛くないし。装飾も何もない丈夫なだけが取り柄の服を着せて何が楽しいというのか!美少女ケンタウロスだぞ!美少女!、せっかく奴隷衣装から着替えるってことで服屋に来てんだから可愛い恰好してもらいたいだろうが!まったく、分かるまでそこで正座していなさい!


 当のシャナは、2つの服を見比べながらも「私にはそのようなフリフリな服は…………」とか「やはり性奴隷として…………」なんてブツブツ言っているが中々決まりそうにないな。世間一般では魔物扱いされているシャナを連れていることで店員からの視線が痛い。俺は気にしないがシャナには辛そうだ。


 迷った時は俺の力の見せどころ!つまりが財力なんだけどな。


 ポピドンさんから借りたお金を持って奴隷商のケピンからシャナを482万円で買い取った(最後のあがきに値切るのも忘れないがな。)。シャナを予約していた貴族や、大物奴隷商からの刺客が来る前にとっとと夜逃げしようとしているケピンからシャナの持ち物だった鉄の剣を返してもらった俺はシャナを連れて店を出た。


 街中には魔物を奴隷として連れている富裕層と思われる人たちもよく見かけるくらいなので、俺がシャナを連れていても問題はないのだ。


 しかし、問題点が1つあった。彼女が身に着けているのはボロイシャツとお尻を隠す布と言っていいほどの粗末な腰布だけだった。奴隷小屋からそのまま出てきているから仕方ないんだけど、美少女が肌をギリギリしか隠せないくらいの服を着ているのは周りに毒だ。変質者が興奮して襲ってくるような事があるかもしれない。だって俺も襲い掛かりそうだもん。


 オホン、話しがずれたな。まぁそんな訳でちょうど見つけた服屋に入ってシャナに似合いそうな服を物色していたというわけだ。ちなみに店員が嫌そうでも文句言わないのは店長に銀貨5枚程渡しといたからだ。


 シャナを買って残金が一気に減ったけどもまだ50万円はあるからな。服の1着や2着、どうっといったこともないさ。


 まだブツブツいっているシャナに、さっさと購入した水色のワンピースを渡して試着室?に押し込んだ。ついでに同じ色合いの腰布(大サイズ)を買って試着室に放りこむ。


 最初は遠慮する声が聞こえてきたが、命令だと言うと従った。職業【奴隷商】が使えるアーツである【契約成立(コントラクト)】を使うと、主と奴隷の間に契約が成立する。契約といっても奴隷のみに不利益のある一方的なもので、主人に害をなしたり、主人の命令に逆らったりすると激痛がはしるというものだ。普通はこのアーツを奴隷にかけるのが当たり前なのだ。


 シャッと試着室?のカーテンが開くとワンピースを着たシャナが恥ずかしそうに顔を下に向けて立っていた。恥ずかしそうにスカートの部分を弄っているが、本当のスカートはお尻に巻いてある腰布の方だからな。とにかく良く似合っていた。


 俺は店長に服の代金に色を付けて銀貨10枚を渡すしてシャナと一緒に外に出る。店長が笑顔でお見送りしてくれるが、その後ろでカーテンを持ち上げて試着室を作ってくれていた店員さん達が疲れた腕をブラブラしていた。ケンタウロスであるシャナが入れる試着室があるわけもないので店長が気を利かせてくれたのだが、持ち上げてくれていたのは全員女性だったので力仕事は厳しかったのだろう。勿論俺もまだ拝んでいないシャナの裸を男に見せるわけにはいかないのでこうなった。チップは弾むことになったが後悔はしていない。


 服屋を出たユキナリとシャナは露店で値引きが始まった食材を売っている店をまわって購入していった。シャナは特に草食という訳ではなく、肉や穀物も普通に食べれるとの事なのでおいしそうな食材を片っ端から買って、シャナの背中に吊るしている麻袋に詰め込んでいった。


 



 空が暗くなり始めた頃、必要なものを買い終わったユキナリとシャナは街の東門の外にいた。ここから道なりに行くとユキナリが目覚めたホナップ草原があるのが東門だ。


 じゃあ、元気に暮らせよ。もう捕まるんじゃないぞ。最後は笑って別れようぜ。


 街中で買った食糧や服をしまった麻袋を背負わせたシャナに別れの挨拶を済ましたユキナリは背中を向けて街へと戻っていった。その背中では頭を下げ続けているシャナがいる。


 ユキナリはシャナを買ったが、シャナをどうこうするつもりはなかった。理不尽な人間の手によって望まないまま奴隷とされてしまったシャナの幸せは仲間の所に戻る事だろう。俺が連れまわしても人間の街ではシャナはまともな扱いは受けれないだろうしな。


 東門が閉まっていく。夜は防衛の為に外側からは開ける事が出来なくなっている。


 扉が完全に閉まる直前、なんとはなしに振り向いたユキナリが見たのは、目に涙を貯めながらも必死に笑顔を浮かべたシャナの美しい顔だった。


 ガチャンっと鉄製の強固な扉が完全に閉じた。目的を達して安心したのか急に疲労が襲ってきた。少し前に【無限黄金郷(エルドラド)】も使ってしまったので、もうヘトヘトだった。


 宿屋への道をゆっくり歩いているユキナリの頭には、最後に見たシャナの泣き笑いの顔が離れなかった。


 うーん、手放したの惜しかったかな?






ご覧いただきまして有難うございます。

風邪で撃沈していました。

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