エルフの薄幸少女
宜しくお願いします
Side リリアナ・ルヴィナリア
私、リリアナ・ルヴィナリアはエルフ族の国である【聖都ルヴィティス】で育ちました。
ルヴィティスは木々に囲まれた都市でして、いくつかの集落を纏めるように国土の中央に建っています。国と名乗っていますがとても小さな国土でして、北のパリック国より僅かに広いくらいらしいです。
国家としての歴史は古くて、【勇者の国ランディーノ】と並んで数千年の歴史があると言われています。900歳の長老が言っていましたので本当だと思います。
そんな国ですが、入国するのはとても厳しい条件があります。エルフ族以外の種族は入る事が出来ないんです。もし他種族の方が許可もなく入国しようとすると国境に設置されている魔法によって国外に転送されてしまうんです。
ルヴィティスは西が海、南が険しい山脈と面していまして、西は多数の種族が跋扈する大密林、唯一国家と面している北は、特殊な環境である自由都市フリーランドになっていまして、現在の世界での支配者層である人間族の方々が支配する国家と面していない事もエルフ族のみの国家を可能にしているのだと教えられました。
さて、そんなルヴィティスの都市で私は父と一緒に暮らしておりました。父は王族の方々の護衛官として城に務めておりましたので、家で一人で過ごすことが多かったのですが、優秀な魔法使いであった父が集めた魔術関連の蔵書が沢山ありましたので幼い時から本ばかり読んで育ちました。
エルフ族は親族以外とはあまり接点を持たない事や、父からあまり1人で外に出ないようにと言われていた事もあって、100年あまりは穏やかに暮らしていたのですが、私が103歳の時に運命の歯車が狂いだす出来事が起きました。
希少な本を読んでいたからなのか理由は分かりませんが、いつの間にか私は【源術師】という職業を会得していました。
源術師とは、魔法使いの適正と生産職の適正を両方持っている方が得ることが出来る希少な職業でして、無属性の魔力を物質に付与する事ができる唯一の職業との事でした。
えっと、分かりづらいですよね?えっとですね、例えば風の力が宿っている魔剣には風の魔力が付与されています。風魔法を使えない人でも風の魔力で攻撃できる便利な物ですが、不便な点もいくつか存在します。
最も顕著なのは抵抗属性持ちの魔物には効果が薄くなってします事です。エレメント系や霊体系の物理攻撃の効き辛い魔物には魔法で戦うのが基本ですが、風属性への抵抗を持つ【エアゴースト】等の魔物に風の魔剣ではほとんどダメージを与えられません。その点、無属性の魔力が付与されている武器での攻撃では抵抗に左右されずにダメージを与える事ができるんです。
他にも優れた面はあるのですが、長くなってしまうので割愛させていただきます。
そんな希少な職業になったのですが、特に何かをしようとも思わずのんびりした読書ライフを満喫していたのですが、ある日お城から兵隊さんが家にやって来て連れていかれてしまいました。
生まれた時から殆ど他人との触れ合いがなかった私はオドオドと連行されるように連れていかれました。女王様の前へと……。
どこから知られたのか源術師の力を国の為に使う事を強要されました。護衛官として同席していた父に助けを目で求めましたが、父は心苦しそうな顔をしていましたが否定はしてくれませんでした。無理もありません、エルフの王族とは人間族の名ばかりで実力の伴っていない方々と違って、能力のみを競う選定において就かれるのでその権力は恐ろしいのです。
ほぼ強制的に働く事になったのですが、とある事件の際に、ある秘密が皆にばれてしまったのです。
その秘密が原因で、父は投獄され私は国外追放となってしまいました。当時106歳になったばかりの子供が(エルフの平均寿命は約900歳。当時のリリアナは人間でいう10歳くらいであった。)住む所を追われてしまったのですから悲惨でした。
国を追われた私は、危険な大密林を避けて北のフリーランドへと向かいました。秘密を抱えたまま人里に行くのは不安でしたが、父とも離れ離れになってしまって心細かった私は意を決してフリーランドへと入国しました。
私は運よく心優しいドワーフの夫婦に助けられ、仕事と住む所を与えていただきました。ここで4年程安定した生活を送ることが出来ました。恩人であるドワーフの夫婦やそのお弟子さんであるドワーフの女の子とも仲良くやっていけていたんです。
そんな2度目の幸せな生活が終わってしまったのは今から1か月程前でした。
隠していた秘密が露呈してしまったのです。
雇い主であったドワーフ夫婦の方々は気にしないと言って頂けましたが、一緒に働いていたエルフ族の方々には許せないものだったようです。日に日に嫌がらせは酷くなり、遂には明確な殺意が込められた攻撃までが襲ってきた事で命からがら逃げだす事になってしまいました。
2度目の放浪になってしまった私は、行く宛てのない者が最後に流れ着く南部地区のスラム街へと流れ着きました。
運が良かったのは、何か誘拐事件があったようで凶悪な犯罪者が自警団による取り締まりがあったとの事で治安が若干なりとも安定していた事でしょうか。ここで僅かばかりの貯えを切り崩して生活していたのですが、長い引き籠り生活で世間への免疫が無かった私はあっさりと詐欺にあってしまい、全財産を失ってしまったのが昨日の事です。
お金が無くなってしまった私は悩みましたが最後の手段に手を出しました。
そうです、身体を売るという決意です。
私にはどうしても生きなければならない理由があります。私が原因で捕まってしまった父を助け出すまでは死ねないのです。
覚悟を決めた私は数少ない衣装の中から肌の露出の最も高い薄いワンピースのような服を着て恐る恐る繁華街へと向かいました。
建物の影に隠れて通行人の男の人を観察しました。できるだけ優しそうな人に買って貰いたかったのです。
最初に通ったのはオーク族の男性でした。
スルーしました。性欲の権化というオーク族に買われてしまったらどうなってしまうのでしょうか……恐ろしいです。
2人目はつなぎを着たガッチリとした男性でした。
私が声を掛ける前に、別の女性が(クマの獣人)声を掛けていましたが、「すまないな。メスには興味ないんだ。」と断っていました。都会には特殊な趣味の人もいるんですね。
丸2日食べていないお腹が空腹を訴えてきている中、3人目はふくよかで笑顔の女性でした。優しそうな方ですし、同性の方でしたら酷い扱いはされないかもしれませんと思い声を掛けようとしましたが、やめました。女性が街灯の下に来た時に彼女が痩せ細ったイヌの獣人の女性に跨ってハイハイで進ませている姿を見た空でした。
ここには恐ろしい人達しかいないのでしょうか?空腹も限界になってきた夜遅く、あの人が現れたのでした。
その方は、淫靡な雰囲気が漂う街の中を物珍しそうに歩いているその姿は何故か安心できる気がして気になってしまいました。
この人を返してしまったらイケない!と本能が警告を訴えてきました。勇気を出した私はお兄さんに声を掛けました。
エルフが珍しいのでしょうか?最初は私の姿を見て驚いていたお兄さんでした。私が買って貰えませんか?と聞くとさらに驚いていました。
暫くの間、沈黙の時間が流れます。お兄さんはジッと私を見てくると何かに驚いた顔を浮かべると。
「ぜひ、君が欲しい!」
と、力強く求められてしまいました。
ここまで求めてもらえる事など今まで無かった私は、絶対お兄さんを逃がしてはいけないと混乱している頭で行動した事なので、正直ぼんやりとした記憶なのですが、どうやらお兄さんを連れてホテルへと行ってしまったみたいなんです。私から誘ってしまったみたいなんです……恥ずかしい……。
入ったホテルが高級なお店だったようで、シャワーというお湯が出てくる水浴びの道具で温かいお湯を浴びた後、備えつけのフワフワの布で体の水分を拭うと、お兄さんが待っている部屋へと向かいました。
薄い布1枚だけの恰好で男性の前に行くのはとても恥ずかしくって、俯いてしまいましたが、お兄さんは怒ったり急かすような事は言わないで、私が落ち着くのを待ってくれているようでした。
それでもやっぱり初めての経験ですのでちょっと怖かったので、優しくしてくださいとお願いすると、急にお兄さんが飛びかかってきてベッドに押し倒されてしまいました。
「お、お兄さん!?」
「気付きやがったか!勘の良い奴だ。」
私の驚きの声と重なるようにくぐもった低い声が聞こえてきました。
声の方に目を向けると、黒装束に頭巾を被った赤い目だけが見える男性?が部屋に居て、さっきまで私が座っていたベッドの端に深々と剣が突き刺さっていました。
「依頼なのでな。恨まないで死んでくれ。」
黒装束の両手から無数のナイフが放たれた所で私の意識は闇に沈みました。
ご覧いただきまして有難うございます。




