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ノーマネー・ノーライフ  作者: ごまだんご
3章 新たな力と幼い?天才達
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突撃風俗街

宜しくお願いします



 パリック国のキャノーラ大将軍御一行が来店してから10日が過ぎた。


 将軍への金貨200枚もの大金を貸し付けた事への噂を聞いたのか、南部地区のスラム街や風俗街の住人を始め、東部や西部からも融資を求める人々が集まって来て、ユキナリ経営の銀行モドキ【ゴールド・バンク】は連日連夜の大盛況であった。


 スタッフがユキナリとタンポポの2人しかいないながらも、前世での多様なアルバイト経歴による豊富な経験を持ったユキナリと、幼いながらも大都市の権力者の後継者として英才教育を受けて来たタンポポの処理能力によって、この怒涛のお客様ラッシュをなんとか捌ききったのだった。


 10日間での総客数762人。貸し出した総額金貨481枚、銀貨39枚、銅貨12枚。日本円にして4億3912万1200円もの大金である。


 人数の割には意外と金額がいっていないと思うかもしれないが、来客全員に希望額を融資したわけではない。


 例えば、初日に来店したカバの獣人の大男は、金貨100枚(1億円)を要求してきたが、貸し出しを認めたのは、金貨8枚(800万円)である。


 3日目に来店した、風俗店経営者である年配のミノタウロスの女性(爆乳であるが、残念ながら垂れてしまっていた。)には金貨23枚(2300万円)の貸し出しをした。


 中には、極少額の貸し出ししか受けられない客もいる。東部で農業をやっているというオークの男性は、畑の開墾資金に金貨5枚を希望していたが、ユキナリが認めた額は、銀貨2枚であった。


 中には、完全な物乞いであると主張するようなボロく汚い風貌の人物に銅貨8枚という査定もあった。


 さて、ではこの金額はどうゆう過程で決まるのかというと、ぶっちゃけアーツ頼みなのである。


 ユキナリが神界での暮らしの際に手に入れた新しいアーツ【絶対零度心(ニブルヘイム)】。ご存知のように、絶対零度心の主な能力は回収能力である。この能力のおかげで、貸し出した金貨を踏み倒されるのを防ぐことができるのだが、能力はこれだけではない。


 名前の通り、ニブルヘイムの本質は【冷酷無比】・【無慈悲】である。相手の言い分を聞かずに強制的に回収を決行する能力はまさにそれを表しているのだ。そしてニブルヘイムには更に幾つかの能力がある。


 その一つが【査定能力】である。ミール等職人が使える【鑑定】系のアーツに近いように感じられるだろうが、実際は全くの別物である。


 普通の鑑定系アーツは、素材や道具、武具の詳細が分かるというものが殆どであり、星級であるミールの【技術診断(スキルチェック)】になると、人間や生き物にも作用できるようになる。


 それでは、【絶対零度心(ニブルヘイム)】の査定とは何なのか?それは、対象物のアーツ使用者に対しての価値を正確に金額で表されるという事である。そこには一切の感情、情け、経済、需要と供給などという周囲の変動要因を完全に排除されたユキナリの為だけの価値として現れる。


 1つ例を挙げてみよう。あなたはベテランの冒険者で一本の鉄の剣を持っている。適正価格は銀貨1枚であるとしよう。そこに、その剣が欲しいと言う客が現れた。通常であれば銀貨1枚で売るであろう。


 だが、もしその相手が冒険者になりたての新人であったらどうであろうか?可愛い女の子であったらどうであろうか?変わらず適正価格で売るという硬派な方も勿論いるであろうが、何人かは値引いたり、タダであげちゃう人もいるのではないだろうか。


 大量に在庫を抱えていたらどうだろうか?邪魔だからと安くなっても処分するのを優先する人もいるだろう。


 戦争があったらどうだろうか?武器の価値が上がって、二倍で売れるかもしれないだろう。


 このように価値とは、感情や状況、環境などによって変動を起こすものなのであるのだが、鑑定系アーツでは通常の価格しか表示されないという仕様になっている。


 だが、レアな月級アーツによる査定能力はそのような変動も加味されている。対象物がユキナリ(・・・)にとってどれだけの価値があるのかを数値にしてくれる。つまり、カバの獣人はユキナリにとって金貨8枚の価値があり、オークの男性は銀貨2枚の価値しかなかったという事である。


 この数値を限度として設定している為、この10日間の仕事は非常に忙しかったが、スムーズに進める事ができたのである。


 



 そんな忙しかった10日間の連勤に流石が疲れたピークに達した為、本日は店を休みにして休日とした。流石お子様の回復力なのか、タンポポはもう疲れていないといってミールの工房に遊びに行っている。


 え?ユキナリはどうしているかって?部屋で寝ているよ、シャナと一緒に。


 10日間も仕事で会えなかった衝動が溜まっていたシャナが、ユキナリが休みだと知るや部屋に突撃をかけたのだ。まぁ、愛し合っている男女が一緒に寝ているのだから、何があったかはご想像下さいな。








 そんな事があった休日の夜。普通の生活を送る人々が寝静まる頃に活発に活動しだす街がある。南部地区一番の繁華街、風俗街である。


 街のあちこちに薄着で肌を露出した女性がいるのが目につく。この光景は、昼間でも見られるものだが、昼間のお誘いがライトな雰囲気を醸し出す人々であったのに対して、夜のお誘いはディープな雰囲気を発しているようであった。


 ここの風俗嬢には三種類のタイプが存在する。


 1つ目は、高級娼館で働く女性で、それぞれ固定の上客を持ち下手な貴族よりも余程裕福な暮らしをしている。容姿が優れている者が殆どであり、その分料金も馬鹿高い。他国からの貴族の目当てはここである。


 2つ目は、普通の娼館で働く女性である。ピンからキリまで幅広いタイプがおり、値段も比較的リーズナブルであることから庶民が客のパターンが多い。ここで成果を上げると高級娼館からお誘いが来るかもしれないという期待を持っている娘も多い。


 そして3っつ目が、娼館に属していないフリーの娼婦である。急にお金が必要になった、怪我をして現在の仕事が出来なくなった、容姿に問題がある、特殊な種族であるといった何がしかの理由によって隠れてお客を探す者達だ。バックがいない為、価格は言い値であり、踏み倒されても助けてくれる者はいない。犯罪に関わっている場合もあり、普通の客は中々相手にしようとしないが、一定数は必ず存在すると言われている。


 そんな欲望渦巻く歓楽街にユキナリがやって来たのは気まぐれであった。最近の激務とシャナとのハッスルで疲労がピークを迎えた彼は昼間から夜までぐっすりと寝てしまった為、この時間でも目が覚めてしまったのだった。


 現代日本と違って、テレビやコンビニといった夜中時間を潰せるモノのない異世界で、ブラブラと当てもなく散歩していた所で辿り着いたのが風俗街だったってだけだ。断じてたまたま(・・・)着いただけだからな。


 この時間になると、店自体は営業しているようだが、外で勧誘しているのはフリーの女性ばかりのようだ。


(うわ、あそこにいるのってクマの獣人か?毛深いクマがピンクのキャミソール来てる絵面って誰得だよ。可愛いクマ耳少女ならいいけど、見た目本物のクマやがな。)


 そんな風に時間つぶしに見て回っていると、当然声を掛けてくる女性?も沢山いた。150キロはありそうな巨漢の女性や、顔は綺麗だが両手が肘から先が無い女性(目が死んだように暗かった。)、80歳を超えていそうなお婆さんなどに声を掛けられたが全て断った。2番目の女性は惜しかった気もするが、目があまりにも暗かったのでギリギリ耐えて断った。


 一通り回り終った頃、ようやく睡魔も訪れてきた為、自宅に戻ろうとした時だった。


「すいません、そこのお兄さん。少しよろしいですか?」


 建物の影から現れたのは、闇夜でも映える輝くような白い肌と、エメラルドグリーンの美しい髪を肩口で切りそろえた女の子であった。10歳ぐらいのあどけない顔に特徴的な尖った耳を持っている。その姿はファンタジーの定番であり、ユキナリがまだ出会った事の無い種族、【エルフ】のようであった。


 ただ1点、ユキナリの持つエルフ像とかけ離れている所が、その少女にはあった。


「あの、その……。」


 ぶるんっ!


 恥かしがりやなのか、引っ込み思案なのかモジモジと身体をゆすりながら何かを伝えようとしているが、そのたびにぶるんっぶるんっと震える物がある。


 そう、彼女の胸である。スレンダー体型がデフォルトである(ユキナリのイメージです。)エルフでありながら、アル姉さんにも匹敵する巨乳の持ち主だったのである。しかも見た目は10歳くらいだからロリ巨乳だと!?


 妄想の中の産物であるはずのロリ巨乳エルフの登場に動揺するユキナリに、そのエルフの少女から追い打ちがかかる。


「わ、私を買ってくれませんか!」




ご覧いただきまして有難うございます。


今回、仕事が忙しくて中々更新できなくてすみません。

これからも宜しくお願いします

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