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ノーマネー・ノーライフ  作者: ごまだんご
1章 荒んだ青年と安全?な世界
6/66

調子に乗っていました。

宜しくお願いします。


 調子に乗っていました!すみません!!


 あー、もうまったく。昨日のにやついていた俺に小1時間程説教してやりたい気分だ。どうしてあんなに調子乗っちゃってたかな、俺は。


 今も、夜の街の大通りを駆け抜けて行く多数の男たちが通り過ぎて行った。男達は各々が剣や斧といった武器を抜き身で担いでおり殺気を放っている。


 ユキナリは、男たちがいなくなるのを確認すると隠れていた木箱の影から出て裏通りを駆け抜ける。目指しているのはホナップ草原のある東門だ。これだけの騒ぎになってしまったらもう街にいることは無理だと外に逃げようとしているのだ。


 腰に差している剣と背負ったリュックサックが少し重たいけど仕方ない。逃げることになった原因は俺にあるものの、きっかけになったのはこの剣のせいだ。


 ユキナリは闇夜を走りながらも、今日の昼間に起きたことを思い出していた。






 昨日2枚と、今日の朝1枚生み出された金貨によって現在300万円もの大金を持っているユキナリは街の武器屋にいた。


 大金を持っているとはいえ、普通の商人との取引には使いづらい金貨をどっかの店で崩そうと思い立ったからだ。考えてもみてほしい、500円の定食の代金に100万円出してたらお釣りが大変だろう。しかし、70万円のテレビを買って100万円出すなら不思議じゃない。というわけで、ある程度高い物を買おうと思ったのだ。


 中々大きい規模の街であるテビニーチャだが、金貨が気安く取引に使われるような高級店はこの武器屋と、向かいの魔道具屋くらいだ。ユキナリが武器屋を選んだのは由緒正しき異世界転生者として剣の1つでも持っていないと様にならないと思ったせいだった。


 異世界に飛ばされたら、剣(もしあるようなら刀が望ましい。)を片手に一騎当千するのはお約束である。自分が俗物的な願いを最高神にしたことをすっかり忘れて浮かれているユキナリは、当然のようにチート的な戦闘力があると思い込んでいた。


 武器屋を埋め尽くす数々の得物を見回した俺は迷っていた。やっぱり基本になるのは剣だけど、攻撃力の高いであろう斧も捨てがたい。弓ならさらに遠距離から一方的に殲滅なんてのもカッコいいよな。あー、槍は運がなさそうだからパスしておこう。


 この世界の武器は、短剣(ナイフ)、剣、斧、槍、弓、杖の6種類しかないらしい。メイスは杖のカテゴリに入ったり、刀は剣の扱いになるらしく、近い形状に分類されるようで大きく分けて6種類なんだとさ。


 材質もいろいろあって、鉄、鋼、銀、ミスリルなんかの有名所に、ムーンファムやナータジアとかいう聞いた事のないものもあった。お値段も相当な物の為ダマスカスとかオリハルコンみたいな希少金属なのかもしれない。


 店の親父は布の服1枚で入店した俺を貧乏人だと思ったのだろう、イヤな目で見てきたが、俺が懐から金貨3枚を見せるとコロッと態度を変えてきた。頼んでいないのに説明までしてくるのだが、知識がない俺にはありがたい。


 武器屋の親父におススメの商品を聞くと、カウンターの中に展示されていた緑色の刀身を持った剣を渡してきた。親父の説明では、この剣は【風薙ぎの剣】という名前で、鍛冶が得意なレプラコーンという魔物が作った魔法の剣だという。魔力を込めると使用者の周りに風の防御壁が展開されて相手の攻撃を弾いてくれるらしい。


 おお、いきなり魔法剣とか幸先がいいな。やっぱり魔剣は冒険に必須だし、是非欲しい。値段を聞くと、金貨1枚と銀貨80枚だと言われた。180万か……。魔剣だし高いのはしかたないか。


 俺は金貨を2枚払って風薙ぎの剣を買った。鞘と腰に吊るすベルトはおまけしてくれたので、早速装着してみた。店に置いてあった姿見の鏡で見てみる。この世界にも鏡ってあったんだね。


 腰に吊るした剣はまだ違和感があるけど、個人的にはカッコいいと思った。やっぱ男の子はこうゆうものに憧れるものだ。因みにポピドンさんのせいで心配だった顔の作りは日本の頃と変わっていなかった。少し若返った感じがするくらいで別人の顔にはなっていなかった。よかった、よかった。


 


 武器屋で満足のいく剣を買えた為、次は向かいの魔道具屋に入った。魔道具とは、魔力のない一般人でも動かすことのできる魔力を動力源にした道具らしい。使用は誰にでもできるが、魔力が切れたら魔導士に魔力を入れてもらわないといけないんだって。便利なんだか不便なんだか?


 そんな魔道具屋に来たものも、残念ながらこの店はコンロや冷蔵庫みたいな大型の魔道具専門店だった為、俺が使えそうなものは取り扱いが少なかった。それでも1つだけよさげなものがあった。【闇駆けのスパイク】という靴だ。


 この靴は通常だと普通のスニーカーなんだけど、魔力を流すと靴底からけっこう鋭利なスパイクが現れる。さらに夜や日陰なんかの闇が濃い所を進むときにスパイクが土のように闇に刺さるのでダッシュ力が上がるのだ。銀貨80枚とかなりの出費だったけどこれも買った。だって格好良かったから。なんか動物の皮で作ったような初期装備の靴を脱いで闇掛けのスパイクを履くと中々様になっていた。


 2つの高い買い物のせいで残金が銀貨40枚になってしまった。それでも夜に1枚、明日の朝にもう1枚金貨を出せるから気にしなくていいかなぁ?金銭感覚おかしくなってないか?まぁいいか。


 魔道具屋を後にした俺は、雑貨屋や露店なんかを覗いて生活用品を買いあさった。異世界だといってもそんなに極端に文明が低いわけではないんだろう。木製の歯ブラシやコップ、食器類に、羊皮紙っていうのかな?動物の皮を使った紙と鳥の羽を使ったペンにインク。トランクスタイプの下着や寝巻用のシャツなんかを買っていった。銀貨3枚かかったけど必要経費だから仕方ない。大き目のリュックサックを買ってそれに詰め込んでいった。


 魔法の世界なんだから、中身が四次元になっている魔法の鞄とかないのかと露店のおっちゃんに聞いてみたら、あるにはあるらしいが高級品で希少な為もっと大都市の高級魔道具店とかじゃないと手に入らないらしい。


 仕方なく、重いリュックサックを背負った俺は宿屋までえっちらおっちらとゆっくりとしたスピードで帰るはめになったのだった。


 



 数多くの商人が商品を並べ、客が入り乱れる露店市の片隅に、商業エリアから立ち去るユキナリを見つめる人影がいた。その人影は、ユキナリの姿が見えなくなると何食わぬ顔で商業エリアを出て行った。


 その足が向かうのは街の西側。貴族や豪商などの富裕層が暮らすエリアであった。





ご覧いただきまして有難うございます。

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