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ノーマネー・ノーライフ  作者: ごまだんご
3章 新たな力と幼い?天才達
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超模倣国家 パリック

宜しくお願いします



 ずらっとお付きの兵士と共に入店してきた、欧州人のような彫の深い顔立ちのイケメン。尊大な態度と豪華な装飾品で自分は偉いのだとアピールしているようで、ユキナリはあまり威圧されるような事はなかった。


 とはいえ、遂にやってきた最初のお客様である。失礼のないように商談用のソファに誘導して座ってもらう。ユキナリが対面に座ると、タンポポに指示を出し2人分のコーヒーと大皿に盛られた作り置きのクッキーを持ってきてもらった。


 高級品であるクッキーがお茶請けとして大量に持ってこられたことに、大将軍であるキャノーラは元より、後ろに控えている兵士も目を見開いているのが分かった。


 配膳が終わったタンポポは緊張した面持ちでユキナリの後方に立った所で商談が始まった。


 依頼内容の前に、まずは依頼人である【キャノーラ】大将軍とパリック国について解説しておこう。


 パリック国は自由都市フリーランドの北北東、北にある大国シーナと隣接している小国である。大陸で正式に国家として現存している国の中で最も小さい国土であり、国力もそれ相応に慎ましい国である。


 鉱山や田畑といった物が少なく、交易品や特産品といった外交カードが非常に希薄な国であった。


 そんな良いところが何も無さそうなパリック国ではあるが、1つだけ他国が恐怖する産業があった。模倣品の作成である。


 他国が発明した機材や、日用品から名産品まで何でも真似をしてしまうのだ。これは、パリック国の重鎮の一人に、技術や製法を解析する事のできる月級アーツの持ち主がいるらしいのだが、最大級の国家機密のようで真相は定かではない。


 最近では、軍事国家【オーバレイド王国】の騎士団が着用する、【抗魔銀(レジストシルバー)】という魔法鉱物を使用した魔法鎧を模倣し、自国の軍隊に配布した事で、オーバレイドからの抗議があった事で有名であった。

 

 この様な行為から他国からはハイエナの如く嫌われているパリック国は、あろう事か模倣した物品は全てパリックが原産国であり、他国が真似をしたのだと堂々と宣言するほどの下種な国なのであった。


 これだけ嫌われているパリック王国ではあるが、他国から攻められるという事は意外な事に少なかった。


 なぜかと言うと、さもありなん。虎の威を借る狐というコトワザの如く、強い者に尻尾を振って護ってもらっていたのだ。


 大陸最大の国家であるシーナ王国に、自分達が盗んだ技術を提供する事で他国からの進攻に対して護ってもらう。もはやシーナ王国の属国と言っても過言ではない程の金魚の糞っぷりである。


 そんなパリック国は一応の民主国家をうたっており、国の代表も表向きは国民による選挙によって選ばれていることになっているのだが、実際には4人の人物によって全ての事柄がコントロールされているのである。


 その4人とは、噂の模倣アーツの持ち主、シーナ王国との外交担当の外交官【オズワルド】、現国家党首である女性実業家【リパークオン】、そしてリパークオンの旦那であり軍部のトップであるのが目の前にいる大将軍【キャノーラ】である。


 小国であるとはいえ、国家のトップの旦那であり、自身も大将軍としての権力を持つキャノーラは派手な見た目通り自己顕示欲の強い男である。だからこそ、小さな商店でしかないユキナリの店舗に来るだけでも、最新の模倣品である魔法鎧を身に着けた兵士をお供に付けてやってきたのだ。


 フリーランドの五権の娘として他国の支配者層の情報を教え込まれてきたタンポポは、目の前の男性が国賓として扱わなければならない程の大物だと思い、何か失礼な事があってはならないと緊張した面持ちで固くなった表情をなんとか平静に務められるように努力していた。


「という訳で、我が国は新たな技術の開発と発展の為に資金を必要としている。聞くところによればこの店は【投資】という技術者への金の提供をしているそうじゃないか。我が国にも投資を依頼したいのだよ。」


 緊張を隠せていないタンポポの態度に気を良くしたのか、置いてあるクッキーをボリボリと食べながら無遠慮に投資を要求してくるキャノーラ将軍。


 そんな将軍と対峙しながら、彼が部下の兵士に書かせた投資の為の必要書類に目を通していた。


 そこに書かれている事は、投資の理由や使い道、何を生産できるのか?といった問いに全て国家機密と書かれただけの日本であればオチャラケている悪ガキか、真正の馬鹿が書いたような内容であった。


 そんな書類であってもキャノーラ将軍は、投資が断られるなどという思いは何一つなかった。国家の重鎮が直々に訪れているのだ、普通の平民であれば無下にすることなど出来る訳がない。もしも楯突こうものならばどのような報復が待ち受けているのか……。


 書類に唯一正確に書かれた個所は、投資希望金額の欄だけであった。その額は金貨200枚。日本円にしておよそ2億円もの大金であった。こんな出来たばかりの商店にそんな大金があるなどとは、将軍側の人達は誰も思っていなかった。


 彼らが此処に来たのも、別の目的地に行く途中に変な商売を始めた輩がいるという噂を聞いてからかいに来ただけなのである。どうやらパリック国の大将軍は非常に暇人のようである。


 ようは無茶な要求に焦るユキナリの姿を笑う為に来たのだが、今回は相手が悪かった。


「はぁ……、こんな書類で投資できる訳がないだろうが。アホか?お前等。」


 慌てふためく様を予想していたキャノーラ将軍が実際に見たのは、ため息を吐いて書類をテーブルに投げ出したユキナリであった。



ご覧いただきまして有難うございます。

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