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ノーマネー・ノーライフ  作者: ごまだんご
3章 新たな力と幼い?天才達
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閑古鳥の鳴く店

宜しくお願いします



 お客が来ません。


 異世界アリエントにおける最初の銀行、【ゴールド・バンク】は開店から一週間経つもまだ一人も顧客が来ていなかった。


 未知の商売だという事が客の足を遠ざけているのだろうか?


 遠巻きに眺めている人々や、入口横の棚にに収納されている宣伝の為のチラシは持っていかれているみたいのなので興味が無いわけじゃないんだと思うんだけどなぁ?


 いつ顧客が来ても対応できるように、ユキナリとタンポポの2人が常に店舗に常駐しているのだが、一向に外側から開かれる事のない現状に、のんびりとしたユキナリは兎も角、タンポポは不満たらたらといった表情を浮かべたまま受付台に頬杖を突いていた。


 最初の三日ほどは不満を口にしていたタンポポであったが、店舗に併設されている炊事場を使って、シンプルなクッキーを焼いてオレンジジュースと一緒に彼女の前に出すと、彼女の瞳がキラリと光った。


 どうやら、この世界でのお菓子類は限りなく嗜好品であり、貴族や金持ち等の一部の富裕層にしか縁のない食品であった。


 五権の一族であるタンポポも、勿論食べたことがあった。むしろ年相応に甘いお菓子は大好物である。通常であれば年に数回しか食べる機会がない貴重品であるはずのクッキー。


 そんなクッキーが山盛りで目の前に置かれたのだから、タンポポの目が輝くのも無理はなかった。


 クッキーにマシュマロ、チョコレートというお菓子の波状攻撃によって一週間は引き留められたのだが、流石にそろそろ限界か……。


 苦みの強いコーヒーを一口飲んだユキナリは隣の工房に目を向けた。


 屈強な男達によって続々と運び込まれてくる工具や資材の数々。中には数人がかりでないと持てないような大きな機材なんかもあった。


 工房の入り口には、シャナに抱きかかえられたミールが、それぞれの搬入物の運搬場所を指示している風景が見える。一週間前には殺風景な室内であった工房であるが、あの荷物の量だったらすぐに部屋が埋まりそうだ。


 ミールからのおねだりに金貨の小袋を1つ渡しといたんだけど、あの量だと全額使っちゃってないだろうな?1000万円位あったはずなんだけどな。


 工具や機材の殆どが、技術先進国である中央地区からの買い付けである。移動時間短縮の為にシャナとペアを組ませたのだが、有効に使っているようである。


 お隣の順調さに触発されたのか、黙ってクッキーを齧っていたタンポポがジト目でユキナリを睨みつけていた。


 この状況を何とかしろ!このボケ店主!といった心情なのだろうが、何とかしようがないのだから仕方ない。


 せめて最初の顧客を捕まえられる事が出来れば【銀行】の有用さを広める事ができるのだが、みんなが牽制しあってしまい最初の生贄になろうという気骨のある者が出てこないのであった。


 





 状況が動いたのは午後になって四人で自宅のリビングで昼飯を食べた後、午後の営業を始めたばかりの時であった。


 営業といってもいつものようにまったりのんびりとした時間が過ぎるものだと思っていた2人だったが、急に勢いよく開いた扉の音に驚いて、揃って入口に目を向けた。


 入口に立っていたのは、これでもかという程の孔雀のような極採食の装飾品が飾り付けられた衣装を身にまとった壮年の男性であった。


 その後ろからは黄色い鎧を身に着けた兵士が20人程、男性と一緒に店舗へと入って来た。


「失礼する。貴公が金銭の融資をしてくれると聞き参上した。パリック国大将軍【キャノーラ】である。」





ご覧いただきまして有難うございます。


少し更新のペースが落ちると思います。

これからもノーマネー・ノーライフを宜しくお願いします。

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