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ノーマネー・ノーライフ  作者: ごまだんご
3章 新たな力と幼い?天才達
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ドワーフ様の手の平の上で

宜しくお願いします




 自宅のある南部まで戻って来たユキナリ一行は、中央に赴いていた僅か数日で立派に建設された二棟の建物に驚いていた。


 近隣の繁華街の建物と比べても大きく豪華な住宅に隣接するように建つ青い屋根と赤い屋根の建物。黒い屋根の住宅と同じ真っ白な外壁に片方は煙突が、もう片方にはガラス張りの壁が特徴としてあった。


 茫然と建物を見上げるユキナリ達に気が付いたミールが勢いよくユキナリの胸にダイビングしてくるのを受け止めたユキナリは、ミールの案内で建物へと入って行った。


 最初に入ったのは青い屋根の工房であった。広い広いと思っていた住宅よりもさらに二回りは大きい敷地に仕切りなどを設けられていない一部屋で構成されている。まだ重機の類は搬送されておらず、煙突と繋がってる炉がポツンと中央に建っている以外には何もないが、地面にぶっ倒れている男達が沢山いた。よく見ると飛鼬組の大工さん達であったのだが、全員何日も強制労働させられた後にようやく得られた休息のように爆睡している。


 屋根の所々に光取り用の天窓が取り付けられており、室内は思っていた程暗くなく寝るには眩しいくらいなのだが、彼らは起きる気配がなかった。どれだけ疲れていたんだろうか、彼らは?


 次に一行が向かったのは赤い屋根が特徴の商店用の建物である。入口で待っていたのは何やらとっても疲れたような表情をしたテツ君であった。


「おう、戻ったか……。」


 手を挙げて迎えてくれたテツ君は、珍しい事に自分から商店の中を案内してくれるという。まさか遂にテツ君にデレ期が!?


 驚いているユキナリ。テツはちらりとユキナリの腕の中から降りたミールに目線を向けた。それに気が付いたミールはその愛くるしい顔にニッコリと笑みを浮かべるのであった。


 商店の中は喫茶店のような決して広くはないが、シックで落ち着いた雰囲気を醸し出す空間となっていた。


 店の奥にはカウンターと簡単な調理が出来そうな炊事場があり、入口から右手側の壁にはいくつかの小部屋への扉と掲示板のようなウッドボードが立てかけられている。


 左側は一面ガラス張りになっており、外の草原と数件の建物を景色に休憩できるようにソファとテーブルが置いてあり、ポカポカとした日差しが気持ちいい。


 窓の外に見えるムサイ男達の死屍累々な姿さえ視界に入らなければだが……。


 しかし完璧な出来だ。出発前にテツ君とミールに伝えていた内容よりも素晴らしい出来であった。特に商店の完成度は素晴らしくすぐにでも営業できる程のものだ。


 テツ君にお礼を言おうと振り向くと、とっても疲れた顔をしたテツ君と、してやったりという笑顔のミール姿があった。






 様子のおかしい両者に問いただしてみると、なんてことはない。テツ君がミールに騙されただけという話しだった。


 ユキナリとシャナが出発した後、早速工事に取り組もうとしたテツと飛鼬組の組員だったが、ここでミールより提案を受けた。


 その内容は、2チームに分かれてどちらが早くユキナリの満足いく建築ができるか勝負しましょうというものだった。


 ミールが率いる工房建築組と、テツが率いる商店建築組で戦いましょう!


 急な提案に戸惑う組員であったが、ミールが提示した賞金を見ると、テツを除く全員が参加を表明した。


 始まってしまえば仕方がない。クールを気取ってはいるがテツも男の子である、小さい女の子に負けるような事は彼のプライドが許さなかった。


 賞金につられ、ミールに煽られ、テツに怒鳴られ、組員達は今までにない程のスピードで建造へと駆り立てられた。


 そんなこんなで僅か数日という短期間で立派な建物が二棟も建てられた。出来上がりはほぼ同時であり、内装に力を入れたテツ陣営と広大な広さを整えたミール陣営では優劣を付けるのが難しかった。


 「俺達の勝ちだ!」、「いーや、俺達のほうが仕事が丁寧だった!」などの怒鳴り合いが始まった時、それまで静かにしていたミールが組員達の中央に置いてあった木箱に昇ると、両陣営共に勝利と告げた。用意されていた賞金も元の倍をだし、組員全員に賞金が行き渡り、さらに酒が振る舞われると組員達は言い争っていた事も忘れてテンションをあげ宴会へと突入した。


 この段階になって、全てがミールによって最初から仕組まれていたものなのだとテツは理解した。


 結果的には、通常数か月掛かる大掛かりな工事を僅か数日で完成した2棟の建物。賞金によって浮かれる組員。戻ってきたら直ぐに商売を始められるユキナリ、全てのお膳立てを済ませたミールはユキナリから褒められるだろう。この小さい女狐はこうなるようにテツ達を手の平の上で踊らせていたのであった。


「こんにゃろう…………、はぁ……。」


 騒ぎ疲れた組員がバタバタ倒れていく中、テツ君がため息を吐いたのは、ユキナリ達が帰還する1時間前であった。





ご覧いただきまして有難うございます。

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