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ノーマネー・ノーライフ  作者: ごまだんご
1章 荒んだ青年と安全?な世界
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アーツ



 約2日の旅を終えテビニーチャの街に着いたユキナリは、ポピドンの案内で街中を一緒に歩いていた。


 ポピドンの持ってきた商品は街に隠れて店を構える牛人族の若者の店に卸されたおり、翌朝若者が仕入れた商品を持って集落に帰るだけなので時間があった為、初めて街に来たユキナリに案内をしていたのだった。


 流石に緊張が取れたポピドンは常識を知らず、怪しい経歴のユキナリに疑問も持っていたが、あまり気にしていなかった。人間から魔物扱いされている獣人族に侮蔑の目を向けてこないだけでもユキナリを気に入るには十分だった。


 ポピドンの案内で、武器屋に防具屋、道具屋に服屋、宿屋に酒場と案内してもらうと大体の物価も分かった。日本円だと、銅貨1枚が100円くらい、銀貨が1万円、金貨だと100万円くらいにあたるらしい。食事も一食で銅貨5枚から10枚くらいで食えるみたいだし物価が壊れているような事はなさそうだ。


 中々の大きさを誇るテビニーチャの街を回り終わった2人は、【風の駱駝亭】という宿屋の前に立っていた。


「いけません、このような大金をお礼などと。」


 ポピドンの手には、500円硬貨くらいの大きさの金貨が1枚乗っていた。俺がここまでのお礼として彼にあげたものだ。昨日まで貨幣の種類すら知らなかった俺がこんな大金をポンと出している事に驚くだろうが、この金貨はポピドンが持っていた金貨とは別の物だ。その証拠に長年使われてきてくすんだ光沢を持っていたポピドンの金貨と違って、俺の渡した金貨は出来上がったばかりのように輝いている。一目で別物だと分かるだろう。


 遠慮するポピドンに金貨を押し付けた俺はとっとと宿に入っていく。後ろでポピドンがお礼を言っているのを聞きながら扉を閉めた。


 いらっしゃいませと元気な挨拶をしてくれた20くらいの両サイドのおさげを三つ編みにしている女性に宿泊の利用を求めると、1泊2食付きで銀貨1枚、お湯やランタンの貸し出しは別途お金がかかるらしい。結構な高級宿のようだ。


 取りあえず10日の利用とお湯をお願いして、女性に金貨を1枚渡した。支払額の10倍のお金をポンと渡された女性はビックリしていたが、残りはチップだと言って押し付けた。快適な生活を希望すると言い、茫然とする女性から鍵を貰うと部屋へと入っていった。


 僅か数分の間に金貨2枚、200万円をポンと使ったユキナリは宿の自室で女性(テリーヌという名前らしい)が持ってきてくれたたらいに入ったお湯と手ぬぐいを使って体を拭きながら苦笑を漏らしていた。あれだけ貧乏だった俺がここまで変わるかという自虐を含んだ笑いだった。


 身体を拭き終えた俺は、中々に柔らかいベッドに寝転がった。朝一で街に入り、午前中をポピドンに案内を受け昼食を済まし、2時ごろに宿屋にチェックインしたからまだ3時にもなっていない。夕食は7時だというし、まだ時間があった。


 寝っ転がったユキナリは、右手を胸の上に手のひらを上にして持ってくると【エルドラド】と心の中で唱えた。


 一瞬、右手が光る。すぐに光りは収まったが、その手の中には先ほどまではなかった輝くような金貨が1枚乗っていた。さっきポピドンとテリーヌに渡したものと同じ金貨だった。


 ふう、成功したかという安堵と急激に怠くなっていく身体の両方の意味で息を吐いた俺は現れた金貨を観察すると問題ないなと懐にしまった。


 分かっているとは思うが、金貨を出現させたのは俺の技能(アーツ)である無限黄金郷(エルドラド)の効果だ。転生した時には使えなかったじゃないかという突っ込みも分かるんだが、それには理由があったんだよ。だってこの世界の通貨を知らなかったんだからな。


 もしこの世界で諭吉の束を生み出しても、ただの紙切れ以下の価値しかないだろう。上等な紙ではあるけど両面に絵が描かれているし珍品としてコレクションされる以外に利用価値がない。だからアーツで出すことが出来なかったんだろうと俺は思っている。その後ポピドンから通貨を教えてもらい、ちゃんと想像できるようになるとアーツを使う事が出来たんだ。


 気付いたのは昨日の移動のみで何もイベントがなかった日のお昼頃だった。ポピドンから分けてもらった食事を食べ終え暇になったユキナリは手慰みにアーツの解明をしようと思った。解明といっても時間だけは余っているからなんかやってみようと思ったでけであったが、【エルドラド】とアーツ名を言ってみると金貨が現れた。簡単に成功してしまった。


 成功したのはよかったのだが、その後襲ってきた急激な怠さにユキナリは意識を手放して気絶してしまった。


 1時間ほどして目を覚ましたユキナリは全身に残る倦怠感と目の前に転がっている1枚の金貨を見て自身のアーツの成功を確信した。その後もいろいろ試した結果いくつかのアーツについての事がわかった。


 ・生み出せるのは金貨のみである。銀貨や銅貨は出せなかった。

 ・使用に対して相当の体力を消費する。

 ・連続しての使用は出来なかった。多分体力が必要な量なかったのだろう。

 ・夜、体力が回復した後なら出せた。

 ・現在1日に出せる限度は2枚である。


 こんなところか。金貨が無から生み出されているのか、どっかから転移して現れているのかは分からないが、そんな事は俺が気にする事じゃないしな。もし前者だった場合はインフレとか起きるかもしれないけどしょうがない。そこまで責任とれないしな。


 手の平に乗った1枚の金貨。これが俺の金持ち人生の始まりとなるんだ。



ご覧いただきまして有難うございます。

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