恋人2人旅
宜しくお願いします。
テツ君との再会を果たしたユキナリは、自分がいない間に孤立してしまうシャナ達を手助けしてくれた事に感謝した。テツ君は「気にすんじゃねぇ。」とぶっきらぼうに言うが、組と対峙してまでユキナリ達の手助けをしてくれたのがテツ君の良い所だと思った。
「勘違いするんじゃない。ただ組の尻拭いを組員である俺がやっただけだ。」
見事なツンデレセリフが返ってきたが、そうゆうことにしておこう。これ以上弄ると本気でキレられそうだ。
そろそろ本題に入ろうか。ようやくだが。飛鼬組との契約をテツ君が護ってくれたおかげで、とても良い住居を建てて貰った。二階建てで間取りなんかは普通の日本の一軒家くらい(ミールに住居のイメージは伝えてあったので現代風の外観と内観である。)なのだが、シャナの馬体や小柄なミールでも快適に生活できるように各施設が大きく作られていたり、段差や高低差を利用しているのだ。
現在はミールの監修による工房の建築作業中であり、この後はユキナリ監修予定の店舗(ユキナリが再登場するまでは物置として使う予定であった。)の建設が待っている。領土が広く土地が余っている南部地区だからこそできる大掛かりな建設計画であるが、テツ君の好意でタダでやってくれるというのだから有難い。
え?返ってきた金貨20枚は払わないのかって?勿論払わないよ?今払ったって金貨が入るのは飛鼬組だしね、無駄な金は払いたくないからね。その代わりテツ君や現場で作業してくれている組員さんには差し入れなんかを厚く提供していくよ。
さて、テツ君との邂逅も果たせたし次は誰に会いに行くか?近場ならこの南部地区代表である五権とかいう偉そうな呼称を持っている【カルリリス】という人に会いに行くべきなんだけど、テツ君が気絶したり怒ったりしたせいで無駄に時間が掛かってしまい、現在の時刻は夕方になってしまっているのだ。
彼女の仕事は夕方から夜にかけて繁盛するらしく、今の時間から面会を申し込んでも難しいだろうという結論に至った。1つだけ客としてカルリリスに会いに行くという強引な方法もあったのだが、そんなに急ぐわけでも無かった事と、なぜか不機嫌になったシャナとミールに却下されたので、この作戦は中止となった。
サキュバスであるリリスがやっている仕事。テンプレではあるが高級風俗店である。彼女は店のオーナーであり、自らも客を取る従業員でもあるのだ。ユキナリが客としてリリスに会いに行くという事はそうゆう行為におよぶであろうことは容易に想像がつき、ユキナリにべた惚れのシャナと好意を持っているミールからしたら大変面白くないのである。
だったらどうするか?シャナは飛鼬組にお礼参りに行きますか?なんて言ってテツ君の口を引きつらせている。ユキナリが居ない間の犯罪者討伐によって狩人の階級が大幅に上がっているらしいシャナは、元々の優秀な才能と合わせてかなりの腕前となっているようである。
本当に組に特攻されてはヤバいと思ったテツ君の提案で、ユキナリ達は中央地区【ベルファニア】に住む五権の1人に会いに行くことになった。その人もリリスと同じようにテツのバックについて組との対立を解消してくれた恩人の1人なのだという。
中央地区ならばシャナのスピードで半日で着く距離なので、準備をして夜6時くらいに出発すれば朝方にはたどり着ける計算だ。帰って準備をしようと言うユキナリに対して。
「あ、今回は私はここに残りますんでユキナリさんとシャナさんのお2人で行ってきて下さい。」
工房の監修をしなければいけないので残るというミールに「わかった」と返事をして住居に向かっていく2人。
「良かったのか?残って。」
「ええ、2人のラブラブ空間に一緒にずっといるのはツライのですよ。2人っきりにしてあげて一気に燃え盛ってくれれば少しは落ち着いてくれるかもしれないですし。」
そこには年上のお姉さんが高校生カップルを見るような生易しい目をしたロリっ子の姿があった。
「それに帰ってきたら次は私の番ですからね。お姉さんとしてシャナさんには一時の独り占めを許してあげるのも大人の余裕なんですよ。その後のユキナリさんは私にメロメロになっちゃっているはずですからね。フフフ。」
この時、テツには一瞬ではあったがこのロリっ子が妖艶な女豹に見えたらしい。
夜に南部地区を出発したユキナリとシャナは順調な旅程をこなし朝方には中央地区へと到着した。早朝にいきなり訪ねるのも失礼だろうと、前回来たときに泊まった宿屋に部屋を取った。2人とも1日、2日くらい寝なくても大丈夫なのだが、今の2人に宿を取ることは必要な事だったのだ。
南部から中央に来るまでの間シャナの背中に跨って来たユキナリは、走っているシャナの上気する頬や滴り落ちる汗が色っぽく、舗装されていない道も進んでいくため揺れが激しく、シャナの柔らかな肢体に抱き付くようにしがみ付く必要があった。
シャナの方も背中に感じるユキナリの温もりや重さに心をときめかせていた。そもそもケンタウロス族が親愛関係の相手しかその背中に乗せようとしないのは背中が性感帯であり、乗せた相手に胸がキュンキュンしてしまうからなのだ。
つまり2人共若かった為に、密室空間になれる宿が必要だったという事である。
この宿屋はケンタウロスやナーガといった大きな身体を持った種族に対応した部屋があるので贔屓にしているのだ。
「シャナ……。」
「ご主人様……。」
部屋に入る前から潤んだ瞳のシャナに陥落したユキナリは、シャナの巨体を床に押し倒した。
見つめ合う2人、スッと瞳を閉じるシャナの唇に近づくユキナリ。いざ接吻を!という時だった。
「失礼するぞ!私……は……。」
バーンっと効果音が飛び出しそうな音と共に勢いよく開いた部屋の扉の前には、金髪ツインテールにフワフワの狐耳、お尻からは3本の狐の尻尾を生やした10歳くらいの女の子だった。
何か言おうとしたようだけど、目前で繰り広げられようとしていたラブラブな行為を目撃して真っ赤な顔で口をパクパクしていた。
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