朝チュン 【シャナ編】
宜しくお願いします。
太陽が昇り始めた朝方、部屋の扉を開けてリビングに出て来たユキナリは大きな欠伸と共にボスンっとソファに腰を降ろした。この後、商店エリアの朝市に行って食材を確保しなければならないので寝不足の頭を何とかクリアにしようと、グッと伸びをした。
「昨晩はお楽しみでしたね、ユキナリさん?」
「うぉ!?」
いつの間にか対面のソファに座っていたミールの登場に、伸ばしていた背筋が変な方向に曲がって鈍痛が走った。いや、それよりも聞き捨てならない言動があったような……。
なんの事かな?と、とぼけるユキナリにいつも以上のニヨニヨ笑いで答えてくるミール。「ネタは上がってるんですぜ旦那、とっとと吐いて楽になっちまいやしょうや」というセリフが聞こえてくるようだった。
「もう、とぼけちゃってー。昨日散々泣かれたシャナさんを部屋に連れて行ってから出てこなかったじゃないですかぁ?私、一晩中ここから見張ってたんですからね。テツさん達が無駄に気を利かせて全部屋防音にしてくれやがりましたから、音とか声とかは聴こえなかったんですけどねぇ。」
そういうミールは徹夜明け特有のハイテンションに身を任せて、踏み込んだ事まで聞いてくる。シャナは可愛かったか?とか、どちらから襲ったんですか?とか。
追い詰められたユキナリが取った行動。もちろんそれは……。
「おっと、時間がヤバいな!朝市行ってくるなぁ!」
三十六計逃げるに如かず。見事な敵前逃亡であった。
「あ!ちょっと待ってくださいですよー!」
その声を聞こえていないふりをして脱兎の如く家を飛び出したユキナリ。
「今夜は私の番ですからねー!ユキナリさんから襲ってくださいですよー!」
ズコーーッ
見事なヘッドスライディングでズッコケるユキナリであった。
ユキナリが朝市から帰って来てもシャナはまだ眠ったままだった。様子を見に行ったミールによれば幸せそうな寝顔ですし、ずっと寝不足でしたから寝かせといてあげましょうとの事だった。ついでに見に行ったシャナが服を着ておらずシーツを掛けられただけの扇情的な寝姿だった件を尋ねられたが黙秘した。
その後色々絡んでくるミールを構ってやっていると、お昼頃にシャナが起きて来た。
「あっ……////」
流石に全裸という訳ではなく、シャナが普段着として来ている白のワンピース姿であったが、ミールを高い高いをしているように両手で持ち上げているユキナリに気が付くと、トマトの様に真っ赤になってしまった。ちなみにミールはあまりにもしつこいのでお仕置きとしてソファに急降下させようとしていた所であった。
初心なシャナの恥ずかしがった姿にときめいたユキナリ。前世での経験豊富は伊達ではありません。持ち上げていたミールをポーイっと反対側のソファに放り投げると、シャナに近づき、その柔らかい頬に手を添えると。
「おはよう、シャナ。」
スッと自然な動作でシャナの唇にキスをしたのであった。
放り投げられて決定的な瞬間を見逃したミールはぶぅぶぅと不満を言っていたが、昼食にとユキナリが作ったハンバーグを食べている時、シャナが「あーん」と言いながらフォークに刺したハンバーグをユキナリに食べさせたり、頭を撫でられてデレッデレになっている光景を見て、ミールの推測は確信へと変わったのだった。このバカップルめ!と。
肉汁のジューシーさと砂糖菓子のような甘ったるさに包まれた昼食を終えた3人は今後の予定を話し合った。
昨日はユキナリがいきなり戻って来て詳しい話しを出来なかったので、ユキナリが居なかった1か月の間の出来事をミールから聞いた。飛鼬組やテツ君の事に、五権からの援助、住居の完成と工房、店舗の話し合いなど多岐に渡った。
一生懸命話してくれるミールだったが、ユキナリの腕に抱き付いて離れないシャナに内心少しイラッとしていたのは内緒だ。
「そうか、じゃあまずはお世話になった人達にお礼と挨拶に行こうか。」
まずは近場からという事で、建築用の仮宿に泊まっているテツ君に会いに行こう。
着替えを済ませた三人は住居スペースの裏手、工房スペース予定地に向かうのだった。
ご覧いただきまして有難うございます。
ユキナリが戻ってくるまでの内容は、もう少し後に書く予定です。