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ノーマネー・ノーライフ  作者: ごまだんご
3章 新たな力と幼い?天才達
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テツの男気と首輪

宜しくお願いします。




 浄化の儀による参列者(ほとんどが飛鼬組の組員の方々。)が帰っていった共同墓地は普段の静けさを取り戻していた。現在ユキナリの墓の前にいるのは、シャナ、ミール、テツ、ドレスの女性の4人だけであった。


「今回はウチの組の不始末にご協力頂きまして有難うございます、【カルリリス】様。」


「お気になさらないで下さい、テツさん。同じ五権としてフリーランドで起きた事には相互協力をするのは当たり前の事ですわ。」


 カルリリスと呼ばれたドレスの女性はそう言うと、頭を下げているテツに気にしないようにと促した。


「それに、一番つらいのは彼女達でしょうしね。」


 カルリリスの視線の先、ユキナリの墓の前で前足をたたんで膝間づいた体制のシャナが目尻に涙を浮かべながら一心不乱に何かを祈っていた。その横に立っているミールはシャナを心配そうに見つめている。


「一月前に見たときとは随分雰囲気が変わってしまいましたね、あのケンタウロスの女性は。余程主人を亡くした事がこたえているのでしょうか?」


 テツは同意するように首を縦に振った。一緒に行動していたのは短い間であったが、ユキナリとシャナの間には深い信頼関係があったことは感情の機微に鈍いテツでも分かった。


 そんなシャナは、ユキナリを失ってからの一か月の間、食事や睡眠をまともに取ることが出来ていなかった。なんとかミールが無理矢理食べさせたり、物理攻撃によって無理矢理眠らせたりとしていた為決定的に体調を崩している訳ではないが、肌艶は悪く目の下には濃い隈が出来てしまっている。


 そんな体調でありながらも、シャナは南部地域の警邏隊にボランティアで参加している。ユキナリを害したスラムの住人が許せないのか形式だけの役立たず警邏隊の中で獅子奮迅の活躍をしているらしい。心配したテツがミールに止めた方がいいんじゃないか?と聞いた所、「だって止めたら1人でスラム街の人達を皆殺しにしそうなんですもん。」とミールに言われ、黙ってしまったテツ君だった。


「彼女の警邏隊での活躍は聞き及んでいますわ。ケンタウロス族は種族柄戦闘力に長けておりますが、彼女ほどの力の持ち主は私も知りません。そんな彼女にあそこまでの忠義を授けられるという事はユキナリ・ココノエという人物は余程の傑物だったのでしょうか?」


「そうですね。一言では表しづらい男でした。突拍子も無い行動をしたと思いきや、ウチの親父の威圧を気にしない精神力を持っていたり、大金をポンとだす豪気な所があるのに頑固な所もある。それでも仲間を大切にする優しい所があったりと、俺には奴の本質はわかりませんでした。千変万化な奴ですよ。」


 テツもユキナリを嫌いではないが、まだよく理解できていなかったので思ったままの感想を言ってみた。最初は静かに聞いていたカルリリスであったが、次第に目が細まっていき口元がUの字の様になっていった。極め付けに真っ赤な舌で唇をペロリと舐める仕草には、先程までの可愛らしい女性の姿ではなく、獲物を狙う妖艶な大人の女性の色気を発していた。


 堅物のテツ君でさえ顔を赤らめる程の色気をだしている彼女こそ、フリーランド最高権力者である五権の1人であり、南部地区の代表者。国内最大規模の高級風俗店【Lilisu】の店長である、サキュバス族の女性カルリリス。通称【リリス】なのである。


 ユキナリに興味を持ったのか一瞬本性を現したリリスであったが、すぐに元の?可愛い方の笑顔に戻っていった。


「っごほん、おい2人共そろそろ戻るぞ。住居は昨日完成したが、まだ工房と店舗を作らなきゃならないんだ。内装なんかの希望を聞かなきゃいけないんだからいい加減に戻るぞ。」


 話しを無理矢理変えるようにシャナ達に話しかけるテツ君であったが、工事が途中というのも事実であった。ユキナリと飛鼬組の間で交わされた住居・工房・店舗の建築依頼はユキナリを苦手としていた飛鼬組の親父の意向から白紙になりかけた所をテツ君がとりなしたという背景があるのだ。


 しかもテツ君は代金としてユキナリが先払いしていた金貨20枚を全額シャナ達に返し、依頼の建築を全て無償で請け負うと宣言した。元々の原因が飛鼬組の組員であったゴンゾウが金に目が眩んで犯した犯罪であるのだから、義理と人情の世界の住人である飛鼬組の一員として詫びなきゃならねぇと親父達に提案したものであった。


 テツ君の提案に親父を始めとした一部の幹部連中からは「そこまでしてやる義理はねぇ」と一蹴しようとしたのだが、五権としての独自の情報網で知りえたのであろうリリスと、中央地域と西部地域の五権がテツ君の後ろ盾となった事で劣勢となった親父は苦々しい顔で白旗を上げると、ユキナリに関する事は今後全ての権限と責任をテツ君に与えるとしてこの件から撤退していったのだ。


「はい、今戻りますね。ほらシャナさんも行きましょう。」


「……うん。」


 テツ君の声に振り返ったミールは座り込んでいるシャナの紐を引いた。三歳児程の小さなミールと馬体による巨体を持つシャナとの体格差が凄いことになっているのだが、シャナの上半身の腰に巻かれたロープを引く事で行動意志の薄いシャナに行動を促しているのだ。最初はシャナの首に首輪を巻いてロープを繋げようとしたのだが、虚ろな目をしているにも関わらず明確な拒絶の反応を示した。その為仕方なく腰に巻いたロープを使っているのだった。


 完成したばかりの自宅の方へ歩いていくミールとシャナ。その後ろをテツがリリスに一礼した後付いて行った。


「さて、それじゃあ私も帰りましょうかしら?タナンがちゃんとお店回せているか心配ですしね。」


 リリスがそんな事を考えながらミール達とは違う方向の出口へと向かおうとした時だった。


「!!?」


 急に背中に感じた寒気に振り向いたリリスであったが、その先にあるのはユキナリの墓とゴロツキが詰め込まれている土塊のみである。ちなみに土塊はこのあと魔法使いの業者によって墓地の端っこに運ばれる予定だ。


 気のせいかと首を捻ったリリスは不気味な感じから逃げるように足早に墓地を出て行ったのであった。








 誰も居なくなった墓地は夜にもなると一切の人影も見えなくなった。闇の精霊の活動が活発になる夜はその眷属である【ゴースト】や【スケルトン】といった魔物との遭遇率が高くなる傾向にある。死体や魂といった物が大量にある墓地には好んで訪れる者は少ない。少ないだけで皆無ではないのだが。


「え~、わたしぃ怖いです~。」


「だ、大丈夫でふよ。わっちがついてるですけんのぉ。」


 薄暗い魔法式の街灯の明かりでぼんやりと照らされた墓地内の道を2人の男女が肩を寄せ合いながら歩いていた。


 女性のほうは、頭に小さ目な角を生やしたミノタウロス族の女性で薄い浴衣のような衣服では隠しきれない豊満な胸が大分はだけてしまっている。サウダーレアの風俗街に務めている風俗嬢である。


 男性のほうは、でっぷりとした腹に腰布を押し上げる程に怒張した男性器が特徴のオークであった。性欲豚と言われる程の種族であり、本来であれば人間、サキュバスと並ぶエッチ大好き種族なのだが、他の2種族からさすがにオークと同じ扱いは酷いという抗議が入ったことで、オークはエロ種族選手権での殿堂入りが決まり別個の扱いとなたのである(世界三大性欲獣辞典より抜粋)。


 そんな2人が人目のない夜の墓地に何をしにきたのかというと、勿論ナニをしにきたのだ。オークの男性の今のブームが外でイタス事だったのである。


2人が墓地の中央位にくると開けた場所に出ました。周りに墓石は1つしかなく激しい運動をするには適していると思ったのであろう、オークの男性がその巨体でミノタウロスの女性を押し倒したのだった。


 突然の行動であったが、女性もその道のプロである。さりげなく胸元を開くと男性の唇に濃厚なキスをした。キスによって高められた興奮が最高潮に達したのだろう、男性が自分の腰布の帯を解いていよいよ本番に臨もうとした時だった。


 ドーーーン!!という轟音が、唯一近くにあった墓石から響いた。上半身裸の女性と下半身裸の男性が揃って墓石の方を見ると、墓石の目の前に直径1m程の穴が開いていた。


 さっきまでこんな穴無かったのにおかしいなと2人が思っていると、突然穴の中から人間の手が伸びて来たのだ。


「フンギャーーーー!!!!」


「ちょっ!まっ……。」


 穴から伸びて来た手に驚いたオークの男性は、奇声を発しながらその場から逃げてしまった。女性を置いてけぼりにしたまま。


「なによ!あのクソ野郎!1人で逃げるなんて最低ね!」


 男性に対して悪態をつく女性であったが、穴から上半身全てが出てきていた者に腰を抜かして動けなくなっていた。すぐに穴から這い出してきた影は薄暗さの為に詳細は不明だが人型の形をしている事に女性は気が付いた。


 ゆっくりと自分に近づてくる人影に、ゾンビかグールが誕生して自分は捕食されてしまうのではないかという恐怖心が最高潮に達した。ゾンビ達は食欲という本能しか残っておらず、生者の新鮮な肉を狙って襲ってくるという事を風俗店の常連客である神父から聞いた事があった女性は恐怖に支配されていた。その下半身からは黄金色の水が漏れだし尻餅をついたお尻を濡らしていた。


「やっと戻ってこれたか……。」


 人影はそう言うと、一瞥した女性に闇の中から取り出したシーツを身体にかぶせると立ち去って行った。


 残されたのは半裸の身体に濡れた衣服と真新しいシーツを被った女性のみであった。




ご覧いただきまして有難うございます。

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