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ノーマネー・ノーライフ  作者: ごまだんご
2章 新たな仲間と安住?の都市
34/66

譲れない意地

宜しくお願いします。

今回は前半に暴力シーンなどがありますので、苦手な方は最後の方だけ読んでもらえれば大丈夫だと思います。





「かはっ!……ゴフッ」


 蹴られた腹部から響くような痛みが脳を駆け巡る。圧迫された胃から胃液が逆流して来ようとするのを気合で押し留める。


「意地を張ってないで、とっとと吐いてくだせぇ。金さえ手に入れば解放してやりやすぜ。」


 猫なで声で、蹴りつけたユキナリに語りかけるゴンゾウだったが、痛みと恐怖に屈するはずのユキナリからなんの反応もない事に苛立ちが増す。ならばと、先程と同じ個所に更に強い蹴りを入れた。たまらず前かがみになるユキナリ。


「こっちも暇じゃないんすよ。いい加減に、うぎゃ!」


 いきなり顔面に酸っぱい匂いのする液体をかけられたゴンゾウは、悲鳴と共に尻餅を付いた。


「やらねぇっで言っでるだろうが、ゴフッ、首ククッで死ね、チビ野郎。」


 吐き出した胃液によって焼かれ、ヒリヒリする喉でそう言い捨てたユキナリ。その胃液を掛けられたゴンゾウは運悪く目に入ったことでジンジンと痛む片目を抑えながら顔を真っ赤にして激昂した。


「てめぇ、優しくしてやってれば調子こきやがって、おい、おめぇら!構う事ねぇ、死なない程度に痛めつけろ!」


 ゴンゾウの命令に最初に動いたのは【トパージ】というナイフを握った柔和な顔の男だった。


「それなら僕に任せてくれるかな?拷問っていうのは最初が肝心なんだよ。」


 そう言ってトパージは、握手を求めるかのような自然な手つきで腕を伸ばすと、躊躇することなくユキナリの左肩にナイフを突き立てた。


「がっああああああああ!!!」


 自分の身体に異物が侵入した恐怖、神経が伝えてくる猛烈な痛みにユキナリの口から苦痛の咆哮が発せられる。


トパージは刺さったナイフを一度引き抜くと、再度左肩の傷口にナイフを当てると、今度はノコギリのように前後させ、ギーコギーコと擦切っていく。


 最初に刺された時のような強烈な痛みではなかったが、神経を一本一本撫で斬りにされるような継続する痛みに歯を食いしばって耐えるユキナリ。そんな反応にトパージはニヤニヤと笑みを濃くする。


「いいね、いいね、いいねー。気絶しそうな程の痛みのはずなのに気丈に我慢している表情、すっごくセクシーだよ。もうね、本当滾って(たぎって)きちゃったじゃないか。」


 うっとりとした表情でユキナリを見るトパージの股間は布を押し上げるように盛り上がったいた。変態である。


 楽しそうにナイフを突き立てていくトパージ。他人を傷付けるという忌避感が生まれる行為ではあるが、楽しそうに行為に及んでいる先駆者がいると、人間は真似したくなるものである。


 トパージやゴンゾウの後ろで傍観者と化していたゴロツキの中から、1人、また1人と前に出てくると、ある者は拳で、またある者はトパージのようにナイフを使い、無抵抗で動けないユキナリに対して暴力をふるっていく。その熱は次第にゴロツキ達に広がっていく。当初の目的はユキナリを脅して金を出させる事だったはずなのに、本来行き過ぎた行為を止めるべきゴンゾウも参戦しており、執拗にユキナリの頭を殴りつけていた。


 もはや止める者のいない暴力の渦に飲み込まれたユキナリは、痛めつけられすぎて感覚のなくなった身体と、朦朧とする頭で、自分の難儀な性格に心の中でため息をついていた。


 戦闘力のないユキナリは、ゴロツキに捕まった時点で自力での脱出に期待は持てなかった。本来であれば、助けが来るまで何とか交渉を伸ばし少しでも時間を稼ぐことがユキナリが唯一生き残れる道であったのだ。幸い聡明なミールと直前まで行動を共にしていたので、状況は分かってくれている筈だ。仲間たちが来てくれるまで持ちこたえれば良かったのだが、ユキナリはそうはしなかった。


 理由はとても簡単だ。ユキナリは自分の金を1銅貨すら他人に奪われる事を嫌ったからだ。普通の人であれば【金<命】の式が成り立つのだろうが、前世での過酷な人生から【金=命】、いやむしろ【金>命】の式がユキナリの常識となってしまっている面が影響しているようだ。


(あ……、もうヤバいかな……。)


 とうに麻痺してしまっていた痛覚に加え、体温すら感じられなくなり唯一聞こえていた心臓の音も徐々に小さくなっていくように感じたユキナリは、一際大きな胸への衝撃を最後に意識を失った。









「あー、くそ。ついキレちまったぜぇ。結局金は出さなかったでやんすね、コイツは。仕方ねぇからこいつの装備を何とか捌いて金作らねぇと後ろのゴロツキ共がうるせぇですからね。」


 ゴンゾウはユキナリの装備品であった【風薙ぎの剣】と【闇駆けのスパイク】を持つとトパージの姿を探した。

「おや?トパージは何処に行ったでやんすか?」


「あいつなら興奮しすぎて爆発しそうだって出て行ったぞ。たぶん家畜小屋にでも行ってるんじゃないか?」


 ゴンゾウが動かせるゴロツキ達の中で、最も戦闘力の高いトパージを闇市場までの護衛にしようとしたのだが、人を痛めつける事で性的興奮を覚える体質のトパージはユキナリへの拷問で案の定発情してしまったらしい。


 因みに、彼が向かったとされる【家畜小屋】とは、スラム街にある非合法な奴隷市場である。奴隷商の所での売れ残りや、口減らしの為に捨てられた貧村の子供等が世界各地から掻き集められ、劣悪な環境に押し込められている場所である。彼らに人権などはなく、銅貨数枚程度の値段で売られたら、痛めつけられるのも、犯されるのも、殺されるのも買い手の自由という無法地帯の筆頭のような場所である。


 トパージは興奮するとこの家畜小屋をよく利用しており、若い男、特に10歳位の男の子を数人買うと、子供たちの後ろの穴を犯しながら首を刈り取っていくという凶行を行っているのだ。性的興奮と殺害の興奮によって高まっていくと、最後の子供の首をはねると同時に射精され、子供の血しぶきによって赤く染まった空間に白い汚れをつけていくのである。


 家畜小屋に行くと数日は帰ってこない事を知っているゴンゾウはため息をつく。仕方なく残ったゴロツキからまともそうな者が残っていないか探していると、今いる教会の入り口から騒音が聞こえてきた。


「まったくなんだ!見張りがなにか騒いでんの『バキュンッ』グホッ!」


 入口の近くにいたゴロツキの1人が外から聞こえる騒音に苛立ったように怒鳴ると、外で見張りをしている下っ端ゴロツキに文句を言いに行こうと向かった。しかしその途中に『バキュン』という何かが破裂するような音が聞こえると、入口に向かったゴロツキが脳天に開いた穴から血を吹き出しながら倒れる『ドサッ』という音が教会内に響いた。


「テツさん!どうして……。」


 教会の入口に立っていたのは、無表情のまま銀色の筒のような物をゴロツキ達に向けているテツ君であった。






ご覧いただきまして有難うございます。

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