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ノーマネー・ノーライフ  作者: ごまだんご
2章 新たな仲間と安住?の都市
33/66

ゴロツキの恐れる存在

宜しくお願いします。



「俺の服を毟ったんだったら分かるだろう、金なんて持ってねぇよ。飛鼬組に全財産払っちゃったからあとは小銭しか残ってなかったし、南部に来るまでの経費でそれもパァだしさ。」


 予想道理金銭目的の誘拐である事を喋った小男に対して、首を振りながら金を持っていないことをアピールするユキナリ。勿論嘘である。素っ裸にされたユキナリからは金銭の類は一切見つかっていない。風薙ぎの剣や闇駆けのスパイクは高額な装備品であるが、足が付きやすい武具類はスラムで行われている闇取引でも足元を見られる事が多く、扱いやすい現金が需要の面でも高いのだ。


 ユキナリが持っている金貨は、ご存じのようにミールから貰った収納の指輪に入れらている。その指輪は、ミールとの愛の力なのか、盗賊がマヌケなのか、柱に後ろ手に縛られているユキナリの指にはまったままであった。


 盗賊達の中に商人や職人系のアーツの持ち主がいたらすぐに見つかってしまっていただろうが、見るからに脳筋といった男達は、戦士や武闘家といった職業の持ち主ばかりで唯一の武闘派じゃなさそうなゴンゾウは【詐欺師】という話術が上手くなるアーツの職業の為【鑑定】系のアーツを使えるものがいなかったのだ。因みに全員が【盗賊(シーフ)】の職業を持っているが、盗賊の固有アーツは【逃走技術】という逃げ足の速くなるものなので尚更意味がなかった。


 ユキナリの言葉に、小男以外の男達の顔に動揺が走った。彼等は普段から悪事を働いているゴロツキであるが、狙うターゲットは旅人であったり、他国から風俗街を利用しにきたバカな貴族であったりとフリーランドとは関係の薄い人物に限定していた。その理由としては、フリーランドには不法者である彼等でさえ怯える、五つの有力者及び組織があるからであった。通称【五権(ゴケン)】と呼ばれており、北部地域を管轄する【飛鼬組】も五権の1つである。


 昔、スラムで幅を利かせていた犯罪組織の1つが、金目当てで1人の人物を殺した事があった。この世界では殺人なんてよく起きることでもあるし、ましてや治安の悪い南部地区はよくある事でもあった。普段であれば、そのまま闇の中に消えて行ってしまうような事件であったのだが、その数日後スラムに激震が走った。


 総勢150名にも達していた犯罪組織が一夜にして皆殺しにあっていたのである。運が悪かった事に、この組織が殺した人物は五権の中でも最大の影響力を持つ人物の部下であった事が後に分かったのだ。


 この事件以降、スラムの住人が犯罪をする際には、対象が五権との関わりがないかを調べるという習慣が根付いた程であり、この事を調べる為だけの情報屋が複数存在する程であった。


 さて、その前提を理解した上で今のユキナリが捕まっている現場を見ると矛盾があることにお気付きであろうか?


 ユキナリは現在、五権である飛鼬組の顧客である。相場の倍を払って家屋の建築を依頼しており、大事なお客様である。直接、組に依頼にも行っており組長である親父とも面識を持ち、若手有望株として一目置かれているテツと南部の現地を視察に行くなどしていたユキナリを、スラムの情報屋が見逃している訳はなかった。直接の配下というあけではないが、普段であればいくら大金を手に入れるチャンスだとしても、手を出しづらい相手なのだ。


 だというのにゴロツキ共がユキナリに手を出したのには理由があった。ゴンゾウの存在である。


 パリック国の田舎出身のゴンゾウは、体格も小さく学もなかったが口だけは達者だった。人を騙すことに長けていたゴンゾウは、巧みな話術で人を騙し小金を稼いで生きて来た事で【詐欺師】の職業を獲得した。職業は、以前ミールが説明していたように先達に弟子入りして成るのが通常だが、生まれながらに才能のある職業への適正によっては、努力により自然にその職業を得られる人も偶にいるのである。ゴンゾウは【詐欺師】の素質が高かったということである。


 パリック国でドジをやらかしたゴンゾウは、隣国であるフリーランドに国外逃亡を果たすと、持ち前の巧みな詐術によって飛鼬組に入り込んだのだった。


 最底辺の下っ端とはいえ、五権の一角に所属しているゴンゾウが後ろ盾としていることでゴロツキ達は犯行に手を染めたのだ。


「おい、ゴンゾウ!話しが違うじゃねぇか。このガキが大量の金貨を持ってるって事だから態々危険を承知で拉致ったってのによ!1銅貨すら持ってねぇとはどういう事だ!」


 ゴロツキ共の1人が声を荒げて抗議すると、そこかしこからゴンゾウに向けて非難の声が溢れた。危ない橋を渡っているという緊張感に耐えられなかったのだ。


「落ち着いてくだせぇ、皆さん。こいつは街で買い物してやしたんですぜ、それなのに1銅貨も出てこないなんてそっちの方が異常でやんすよ。大方収納系の魔法で亜空間にでも入れてるんでしょう。」


 ニヤニヤ笑いを崩さないゴンゾウは、名前に似合わない鋭い推理でほぼ真実を言い当てて来た。ここまで見通せるなら指輪気付けよコイツ。


「痛い目見る前に大人しく出していただけますかい?アレ系の魔法って当人じゃないと出し入れ出来ないでやんすからねぇ。」


 よく言うよ。トップの姿を現している時点で、もし俺を解放したら正体がバレてお終いだろうに。最初っから金さえ奪ったら殺すつもりなんだろうしな。だったら絶対に金を渡すわけにはいかねぇよ。あの金は俺の物だ!


「誰が渡すか、ヴァーカ。首ククッて死ね!」




ご覧いただきまして有難うございます。

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