風俗街とYARANAIKA?
宜しくお願いします。
「お兄さん、遊んでいきませんか~?」
「ねぇ、ぼくぅ。お姉さんとイイ事していきましょうよぉ。」
「少年。………やらないか?」
フリーランド南部に位置する【サウダーレア】に入ったユキナリ達を出迎えてくれたのは、元気っ娘から妖艶な美女、はては作業着を着てベンチに腰掛けた男達からの、えっちなお誘いだった。
サウダーレアの最大の産業は風俗である。
自由都市フリーランド自体が、国家や集落に馴染めなかったはみ出し者が集まってくる避難地のような都市なのだが、そんな自由都市でさえ居場所を作ることのできなかった所謂落ちこぼれが最後にこの南部に流れてくるのだ。
彼ら、彼女らは、能力であったり意志であったりといった何かしかの問題点を持っていた為、他の都市内で職に就けなかった者がほとんどであった。大半の者は都市の奥に発生したスラム街に住み着き、盗賊やゴミ漁りとして生き、都市内から流れてくる僅かな物資を奪い合いながら暮らしていた。
南部に住む8割の住人がスラム街に引っ込んでしまっている中、残りの2割の住人は中央地区との境に作られた街で暮らしていた。この街に住む住人は、容姿やスタイル、会話術などに優れた者ばかりであり、他の地区の住人や旅人を相手に身体を売ることで生活をしているのだ。
風俗を生業とする彼女達の1番のカモは人間の男性である。魔物扱いされている他の種族と違い、世界に君臨している人間は総じて多くの金銭を持っている可能性が高いのだ。特に多様な種族が揃うサウダーレアの風俗街は、各国の貴族に常連を持つ高級娼館もあり、貴族に気に入られた娘等はメイドや愛妾として引き取られる事もある。
人間族は、全ての種族の中でも淫魔として有名なサキュバス族と並ぶほどの性欲の持ち主であるというのも人気の秘密である。
さて、そのような背景のある風俗街に入って行ったユキナリ達一行のメンツを見てみよう。
美少女であるシャナには勇気のある男娼が必死に声を掛けているのだが、一切の関心を向けないシャナは冷たい視線で無視している。教育に悪いとシャナのささやかな胸に顔を挟まれたミールには周りの状況が分からないのでなすがままにされていた。
先頭を歩くテツ君は、高身長に加え少々お堅いが真面目なイケメンフェイスの持ち主であるので、とてもモテそうなものなのだが近づいてくる女の子は皆無であった。どうやら【飛鼬組】には手を出さないというのが風俗嬢達の暗黙のルールとなっているようだ。やっぱりヤ○ザだろ、あの組は。ロープを首に巻いて引っ張られている3メートルのダッシュラプトルがいるので、暗黙のルールが無くても話しかけづらいだろうけどね。
そんな訳で、狙われているのは人間で男、そこそこ整った顔にシャナを従えている事から貴族かもしれないという可能性により、ユキナリ一択となっているのであった。
道を進んでいく度に、美女、美女、美少女、男が挟まって、美女と連続で誘われるユキナリ。
ユキナリは愛想笑いを浮かべながら受け流していく。彼女達は仕事なのだから金が目当てだという事は分かっているのだが、多くの美女、美少女、たまに男に囲まれている状況は嬉しいのだろう、愛想笑いのはずが本当に口元がにやけてしまっている。
前世でのショタ好きお姉さんとの爛れた関係からも分かるように、ユキナリは朴念仁という訳ではない。むしろ無駄に経験豊富な為そっちの興味も強かった。野宿の時など寝ているシャナに襲い掛からないように鉄の精神力で抑えつけている程である。
それでもユキナリは我慢した。後ろから突き刺さるシャナの凍えるような視線が怖かったからじゃないよ、ないからね!大事な事なので2回言いました。
「ここが目的の土地だ。色街からも近く中央地区までもそのケンタウロスの脚なら半日で着ける。サウダーレアでは一等地だ。」
さっきまで人気者だった風俗街から少し離れた、大きな樅ノ木が立っている土地に案内されたユキナリ達。
「良い所だな。川の近くにあるし、何より吹いている風が気持ちいい。」
「ええ、隣人は付き合いが難しそうですが、私も賛成です。風の精霊の声が良く聞こえるようです。」
「ここは魔力を強く感じられますね。最初は余程の僻地に追いやられたのかと心配しましたが、良い場所を紹介していただけたようですね。テツさん有難うございます。」
3人共この場所を気に入ったようだ。ミールのお礼にテツ君の額から冷汗が垂れたような気がするんだけど気のせいかな?
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