表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノーマネー・ノーライフ  作者: ごまだんご
2章 新たな仲間と安住?の都市
27/66

ガンドルフ鍛冶店

宜しくお願いします。



 【ガンドルフ鍛冶店】。自由都市フリーランド中央地区に居を構える店である。


 店主である【ガンドルフ】と、妻である【スーザン】の2人のドワーフが運営しているこの店舗兼工房は、厳つい名前に似合わず繊細な作業での宝飾品やアクセサリー等を製作しているのだ。


 そんな工房に訪れた3人の旅人。ユキナリ一行である。


「お久しぶりです。親方、スーザンさん。」


 先頭に立ってユキナリ達をここまで先導してきたミールが店に居た2人の人物に声をかける。声に気付いてすぐに出て来た2人はミールに駆け寄り抱きしめた。


「おー、おー、ミール嬢ちゃん!無事でよかった。」


「本当ですよ!【アーシア】様が賊に襲われたって噂を聞いてからミールちゃんが心配で心配で!」


「心配かけてしまってすみません。でも大丈夫です、今はこちらのユキナリさんにお世話になっていますので。」


 ミールから紹介を受けた俺は、ぺこりと挨拶をした。俺達の存在に気付いた2人のドワーフは笑顔でこちらにやってくると、俺やシャナの手を取ってお礼を言ってきた。ミールが余程好かれているのだろうという事が分かるようだった。


 立ち話もなんだからと、女性のドワーフのかたに工房の休憩スペースへと案内された。最初は住居の方に案内しようとしてくれたのだが、シャナが入れなくて諦めたのだ。馬の胴体が大きいのが原因だ。


 工房スペースで、出されたお茶を飲みながらミールに2人の事を紹介してもらった。


 この工房の店主であり職人の【ガンドルフ】さん。初めて見た男性のドワーフだったが、まさに王道のドワーフといった姿をしている。人間の半分くらいの身長に、ずんぐりとした体形。もっさりとした髭を生やしており腕は筋肉で膨れ上がっている。全体的には厳ついオーラなのだが、目だけは優しく、性格も温厚なのだとか。ちなみに年は65歳だそうだ。


 もう1人は、ガンドルフさんの奥さんの【スーザン】さんだ。驚く事に御年60になるそうだが、ミールと同じような3歳児にしか見えない姿をしている。というか見分けが付かない位瓜二つだ。スーザンさんの髪が白い為、灰色の色髪のミールとの区別はギリギリつくのだが……。ドワーフの神秘だ。


 仲の良い3人だが、出会いのきっかけはミールの元主人である貴族が、ガンドルフの店にミールを修業に行かせた時期があったそうだ。ドワーフの神童とまで言われていたミールは、細工職人としての見事な才能を発揮した。また、子供に恵まれなかったガンドルフ夫妻も、ミールの才気と愛らしさに実の子供のように可愛がっていたのだという。


 そんな仲だからこそ、国を追われたミールは夫婦に助けを求める為に森の中を彷徨っていたのだ。


 3人の積もる話しも落ち着いてきた頃を見計らって、ユキナリは夫婦にフリーランドにおける居住や商売に関するルールについて質問した。元々それが目的で来訪したのだからミールも恨みがましい目で見ない!シャナはああ!っとか今思い出しました的な反応しない!忘れてたのかこの()は…………。


 この都市に住みたいという言葉に夫婦は笑顔で答えてくれた。住居に関しては役所的な組織があるのでそこに聞けば良いと言われた。そこは建築業も兼任しているらしいのでまずはそこに顔を出してみようと思う。仕事に関しては何をやっても自由らしいのだが、何をやるにしても中央区で最も強い力を持っている【ユウガオ】という人物に挨拶に行った方がいいと言われた。自由都市といえどもヒエラルキーは存在するらしい。


 話しが弾んで何度目かのお茶のおかわりをいただいていた時、男性が1人入ってきた。彼はフリーランドに来てから初めて見た人間の男性だった。


 男性を見たミールが「ルガーノさん!」と驚きながら近づいて行った。スーザンさんからの話しによれば、彼はルガーノというシーナ王国に住む鍛冶師一家の長男で、ガンドルフさんの弟子なのだという。年齢は26歳で、年の近いミールとは兄弟弟子として仲が良かったらしい。


 仲の良かった知り合いに会えて嬉しそうなミールを見ていると、なんか面白くないと思うユキナリであった。


 ミールは二言、三言言葉を交わすと、トテトテと戻ってきた。ルガーノは工房の奥の方に行ってしまったようだ。


 そろそろ御暇しようと夫婦にお礼を言った俺とミールは、空気と化していたシャナに帰るぞと声をかける。


「え?あ、はい。行きましょうかご主人様。」


 シャナは何かに気を取られていたようで、俺の声に気付くのが遅かった。シャナの目線を追うと、ルガーノという男が消えた工房の先を見ていたようだった。


「それでは、まずは役所にいってみましょう。」


 意気揚々と先頭を進むミールに、その後ろを難しい顔をしてついていくシャナ。さらにその後ろでは、ユキナリが不機嫌そうに歩いていた。


 確かに、あのルガーノとかいう奴はいぶし銀なかっこよさがあったけど、シャナまで見とれるなんてなぁ。別に俺はシャナの恋人とかって訳じゃないから嫉妬するのもおかしいんだけどさ……。なんか面白くねぇ。


 対するシャナは、ユキナリが心配している通りにルガーノの事を考えていた。


(あの男、ミールとの再会の時は笑顔も浮かべずに淡々としていたというのに、最後、奥に消えようという時に一瞬見せたにやつき。あれは私を捕まえた冒険者達が浮かべていた嫌らしい笑みに似ている。欲望に支配されている奴等と同じ……。)


 後続の2人がいろいろと考え込んでしまっている時、先頭を歩くミールは、


(お腹すいたです。)


 さっき夫婦の家で大量の茶菓子を食べて来たというのに能天気にお腹を鳴らしていたのであった。




ご覧いただきまして有難うございます。


シャナの空気感がひどい事に・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ