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ノーマネー・ノーライフ  作者: ごまだんご
2章 新たな仲間と安住?の都市
19/66

優秀な奴隷

宜しくお願いします。



 ミールが生まれたのは、大陸で最大の領土と人口を持つ大国【シーナ王国】に仕える人間の貴族の家だった。


 とはいえ、その貴族の娘として生まれたわけではない。いくらドワーフの女性が小さい娘愛好家たちに大人気だといっても、魔物として扱われているドワーフとの間に人間が子供をもうけるのは最大の禁忌とされており、迫害の対象となってしまう。


 ミールの両親は、その貴族に仕える奴隷同士の夫婦だった。


 宝石加工の元締めをしていたこの貴族は、手先が器用で加工や鍛冶の魔法を使う事のできるドワーフ族を大量に奴隷としており、自身の収める領地に専用の集落を作りそこに住まわせていた。この世界の奴隷としては珍しく真っ当な生活を許され、衣食住の安定に自由な恋愛と繁殖も推奨されていた。移動制限がある事以外は、野生で暮らしているドワーフよりも快適な生活を送っていたのだ。


 奴隷同士の夫婦から生まれたミールは生まれながらの奴隷であった。彼女は若くして才能を開花させ、貴族に価値を見出され側付きとして行動を共にする事が多くなった。


 安定した生活が保障されているとはいえ、ほとんどの奴隷達は集落から出る事は許されず、集落内での鍛冶場や細工部屋で仕事をしていく生活であった。ミールの両親もドワーフとしては並の腕であった為、外に出ることは許可されたことはなかった。


 ミールは、シーナ王国の王都にある貴族の別邸で暮らしていた。他にも数人のドワーフが一緒に暮らしており、貴族の家紋の入ったメダルを持っていなければならないが、商店や図書館などの出入りも許されていた。どうやら貴族はかなりの権力者のようだ。


 10歳から15年間王都で暮らしていたミールは、人間の細工師や鍛冶師から技術を学び、王立図書館で知識を得、貴族の共として王都での生活様式を身に着けた。この時に護衛としても貢献出来るように鎧を魔力で操る方法を覚えた。


 最大国家の王族からも信頼厚い貴族。その貴族に重宝されていたミールは奴隷としては考えられないであろう充実した生活を送っていた。


 しかし、突然起きた陰謀により、その生活は脆くも崩れ去ってしまった。


 貴族が、ミーナを王都に留守番として残して、残りの奴隷を連れて領地の視察に行っていた時だった。凶悪な盗賊の集団が貴族の領地を急襲したのだ。大国であるシーナ王国は人口も多く、職にあぶれたり貧困から盗賊に身をやつすものが大量にいたのだった。


 別宅で留守を護っていたミールは、転がるように入ってきた使用人からの報告で事件を知った。使用人も詳細は知らず、貴族や両親、他のドワーフ達がどうなったか分からなかった。


 突然の悲報にくれるミールにさらに追い打ちがかかった。王城からの使いだという官僚が兵士を連れて貴族の屋敷にあがりこんでくると、とんでもない事を言い放った。


「死んだ貴族の所有する奴隷は、王都にて居住権を認められない。即刻王都より立ち去らなければ討伐対象となると思え。」


 ミールの身分の後ろ盾となっていた貴族の安否が不明となり、本来魔物扱いのドワーフを都市に置いておく必要がなくなった。まだ襲撃の話しが届いたばかりだというのにあまりにも早い行動に聡明なミールは違和感を覚えた。


 しかし、いくら怪しくとも、ただの奴隷でしかないミールに抗う術はなかった。


 槍を持って威圧するように睨みつけてくる兵士達から逃げるように、着のみ着のままの恰好で王都を出ると、当てもなく彷徨う事になってしまったのだった。生まれた時からずっと都市内でしか暮らしていなかったミールにとって外は、知識としては知っていても初めての世界だった。


 25歳と大人の年齢であっても、種族特性として子供っぽい感性の強いドワーフのミールは昼間でも薄暗い森の中に入っていったのだった。




ご覧いただきまして有難うございます。

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