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第42話 志姫、Aはひっくり返さない 前編

なんとか風邪から復帰しました。


再び執筆頑張っていきます!

「あの巨大なのってひょっとしてゴーレムなんでしょうか?」


 遠目から見ても分かるほどに巨大な石像は周囲の樹木でさえ腰ほどの高さでしかなく、その威容を伺わせている。


 さすがにあれほどの巨大なゴーレムはこの世界には存在していないようで、皆は山に近づくほどに見えてくるその石像の大きさに驚愕していた。


「でもあれって材質は石・・・ですよね? さすがにあれだけの大きさだと重さに耐えきれなくて壊れそうですけど。」


 エリシアの言うことは尤もであるが、何となくそれでもあの石像は動くかもしれないと言う雰囲気が漂っており、皆の反応は微妙そうだ。


「まあ、議論をしていても仕方がない。とりあえずあそこまで行ってみようではないか。」


「そうね、虎穴に入らずんば虎子を得ずよ!」


 ユミールが気合いを入れながら叫んでいるけど、そんな諺までこの世界で通用するのかと、そちらの方が気になってしまった。



 たどり着いた山の麓からその山の全容を改めて見上げてみると、やはり昔アニメで見た山にそっくりだった。


 考えられる事態としては、私が見たそのロボットアニメを元に出来た異世界からの漂流物と考えられるのが無難なところではあるが、問題は流れてきたのが山と言うところにある。


 原作の方ではあの石像だけではなく、あの山の中に様々なロボットが埋没しており、しかもそれがそのまま動き出す可能性が出てきた。


 確か設定ではそのロボットは、その世界に存在している架空の粒子により発達した技術を元に造られているはずなので本来なら動かないとは思うんだけど、流れ着いたのは山のため、ある程度の量はこの世界にも存在してしまっているはずだ。


 結果として、この山からある程度離れたら動かなくなるだろうとは思うけど、短時間でも動き出したら危険きわまりない兵器が誕生してしまう・・・・


「ちょっと、志姫ってば! あんたやたら顔色が悪いけど大丈夫なの?」


 ユミールに鈍器でごんごんと殴られて我に返ったけど、普通は揺さぶる所じゃないだろうか。今までが今までだったために文句も言いにくいけど。


「今は顔色が悪いどころか流血で赤くなってしまったけどね、まあとりあえずは大丈夫だよ。ちょっとこの山に心当たりがあったんで。」


「この山のことで何か知っているんですか? ではひょっとしてあの石像のことも・・・!?」


「やっぱりあれ、動くのかな、動くのかな?」


 他の皆はあの石像がゴーレムとして動き出さないか戦々恐々としている中で、ティアミーだけは一人目をきらきらさせている。いや、実際に動き出したらみんな死んじゃうからね、多分。


「私の知っているのと同じであれば、あの石像の中にはこの世界にはない金属で出来たロボットという種類のゴーレムがあるんだ。そして、そのロボットは中に人が入って動かすものでね、正直生身だと誰もあれには勝てないかもしれない。」


「誰もって・・・志姫でも?」


 ユミールがごくりと喉を鳴らす。いや、いくら何でも生身で巨大ロボットと戦闘するのは無理が・・・、あれ? そういえば、同じロボットアニメのシリーズで生身で闘っていた人もいたような気が・・・。


 さすがにビームやミサイルの直撃を受けたら死にそうだけど、当たらなければ案外行けるかもしれない。そうだ、レヴィアタンに比べたら倒すのは簡単そうだ。


「戦闘をしてみないことには分からないけど、攻撃や踏みつぶしをうまく回避できれば戦えなくはないかな? そうだ、そもそもあれは人が動かさなければただの鉄のかたまりだし、きっとなんとかなるか。」


 一人で納得していると、みんながジト目でこちらを見ている。


「どうせ、どれだけ強いとか言っておいてもあんた素手で殴りかかるつもりでしょ?」


 ユミールに武器使用禁止令が出てからは素手で戦ってはいるけど、さすがに巨大ロボット相手に素手はどうかと思うんだが・・・


「私の知る限りはあそこにいる巨大ゴーレムはどれも10~20Mクラスはあるんだよ。それを素手で倒すというのかい?」


 私の反論に対して今度はみんな呆けた視線を向け来た。何を今更とでも言いたげな表情だ。


「志姫ならやれるでしょ。」


「志姫ならそのゴーレムの弱点とか知ってそうですし余裕じゃないですか?」


「むしろ、倒すことよりも全員の防御周りの方を優先して考えた方がよろしいかと。あれだけの巨体なら通常攻撃でも私達にとっては範囲攻撃と同じですわ。」



 みんな好き放題言い放つが、校長が言うのは尤もだ。レヴィアタンの時と同様にまずは戦闘中、私が防御に手がかかりきりになる事態を回避しないといけない。


 ビームにしろミサイルにしろ、一番の問題は避け切れても熱による二次被害で即死してしまうので、レヴィアタンの時と同じように耐火装備をベースに物理防御は範囲ではなくパーティー全員にかける保護魔法をかける方針がいいだろう。


 攻撃に関しては、通常の物理ダメージは私以外はまず通らないので有効属性、この場合は雷属性で統一しよう。


 ティアミーと校長は雷属性の矢を、エリシアとセティリアは投擲後手元に戻ってくるタイプの手斧と手投げ槍に雷属性簡易エンチャント用のスクロールを、そしてユミールには雷魔法と、泥沼のスクロールを渡すことにした。


「大体こんな感じかな。あらかじめ言って置くけれど、これはこの山に現地の人が住んでいてそのロボットを使い襲ってきた場合の最終手段だからね。私達のやることは、この山を調査してこの世界の人がいたら待避させた上で異界送りの儀を発動、そして山ごと全て送り返すことだ。」


「あのゴーレムは石像になるくらい昔から動いていないんでしょうから、後は山の中にいる他のゴーレムが動いていないことを祈るだけですわね。」


「まあ、あんたと組むようになってから、こんなのばっかだしいい加減慣れたわ。悪魔に魔王に異世界の巨大ゴーレム・・・、一体どうしてこうなった!?」


 ユミールはぼやいているが、それに関してはみんなそれぞれ思うところがあるようで微妙な表情をしている。いろいろと波瀾万丈ではあるからね。


「それを言い出したら、私達アカデミー組は冒険者になってほとんどたってない初心者ですよ。」


「ん~、でもさ、その分他の誰よりも冒険してるって実感しない? 私はわくわくするけどね~。」


 なんだかんだで、生活が困窮しているわけではない私達にとっての冒険者としての本質は冒険をたのしむところにある。


 なのでティアミーのこの一言は私達の真理といえそうだ。皆も同意見のようで、顔を見合わせた後で楽しそうに笑い出した。


「ティアミーさんのおっしゃる通りですね。冒険者歴がこの世界に置いてトップクラスである私でさえも経験したことがないほどの濃密な体験をみなさんされてますよ。あとはそれを楽しめるかどうかが冒険者としての資質に関わってくるでしょうね。」


「い、いや・・・・まあ、楽しくないわけじゃないのよ?」


 ユミールの微妙に言い訳臭い反論に、周囲がにやにやし出して本人は気まずそうにしている。みんなが何を考えているのかよく分かるだけに私も少し気恥ずかしい物がある。


「うふふ、ユミールは志姫と組んでから次々巻き起こる騒動を愉しんでいるのを面と向かって言えないだけですからね。」


「うんうん、ツンデレだからしょうがないね。」


「ツンデレいうな!! てぃあみ~?、この志姫専用の鈍器でお仕置きに尻叩きするからこっちに向けなさい!!」 


「ぎゃー! お尻が三つになるからやだ!!」


 また今度も結構な命がけになりそうなのに、緊張感がまるでなくなってしまった。私達はこれでいいか。



 装備の準備も整い、決めた戦法で軽く連携を確認した後、山登りを開始した。


 アニメで見た時のように石像への一本道が続いているので、道なりに進んで石像を確認した後一度頂上を目指し、そこから人が住んでいるような場所を確認した後で詳しく調査していく方針だ。


 この山には洞窟があったはずだが、そこに関してはダンジョンのエキスパートであるエリザベスさんに任せることにした。


 異世界からそのまま持ち込まれた洞窟はエリザベスさんの移動範囲外だったようなので、ここは入ったことがないらしい。


 しかし、未知のダンジョンと言うことで潜ることが嬉しいようだ。最近細かい表情の違いから感情に機微が分かるようになってきたぞ。本人にそれを告げたら何故か仏頂面されたけど。


 私達は石像までの道を進んでいるが、見る限りではここ最近、人が通ったような形跡は見受けられなかった。


 山から崩れ落ちてきていた岩や倒木を肉体労働担当の聖女である私がどかしつつ、校長とティアミーで周囲の警戒に当たってもらっている。


 私が前衛に来ているのでエリシアとセティリアは最後尾で背後からの敵を警戒し、ユミールは体力の温存をしておきたいと言った時からエリザベスさんに担がれている。なんかわめいているけど、エリザベスさんは無反応のままだ。


 ヒノミヤは正直連れてくるのはどうかと思ったが、私達とは離れたくないと駄々をこねられたので随行してきている。


 さすがに危なすぎるからユーデンで待機させようとしていたんだけど、エリザベスさんが言うには神族は同種族か魔族、もしくは同レベル以上の位階を重ねている者から討伐されない限りは復活が可能なので問題ないと言われた。


 MVP系のボスは倒しても時間で復活するのにも関係しているのだろうか? それなら、私がその辺のを倒してしまったらもう復活しないと言うこともありえる・・・


 ゲーム的な思考をしているうちに、石像の足下までやってきた。このシルエットは、やっぱりそのまんまだ。


 好きなアニメだったから乗ってみたい欲求はあるけど、私の大好きな剣と魔法の異世界でロボットは暴れて欲しくない。このまま眠っていてもらおう。


「ねえねえ、あの石像、頭の崩れているところから白いヒゲがみえてるよ?」


「しっ、ティアミー、・・・あれは見ちゃいけません!」



 本っ当に、動き出しませんように・・・・!





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