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第41話 志姫、エリザベスさんとヒノミヤの秘密に触れる

「いや、今日も一日魔物を狩りまくったね。」


 ハイエルフの夫婦である二人、サンヨーとサンポーの住居に再びお邪魔して食事をいただいた後、Bitchを飲みながら優雅な一時を過ごしている。


 二人は特にBitchと言う名前に抵抗はないようだったので、黄蜜花から抽出した蜜を混ぜたハニーBitchを提供すると、凄くおいしそうに飲んでいた。


「これがユリアリス様より賜った神器から沸き出す聖水の味ですか・・・、口に含んだ時のこの鼻を突き抜けるような芳香がたまりませんね。」


「それよりも、黄蜜花の蜜って抽出できる人が現存することの方が驚きですわ。本当にこの蜜とカレー粉を交換していただけますの?」


「勿論だとも。私にとってカレー粉は黄金に等しい価値があるからね。」


 錬金術でしか抽出できないこの蜜は、秘術が失われて久しい人類の中で唯一味を覚えているハイエルフ族にとって喉から手が出るほど欲しい物のようだ。


 そこでカレー粉とのトレードを申し出てみたらものすごい勢いで食いつかれてしまった為、またそのうち量産しないといけない。


 とはいえ、材料の黄蜜花に関してはこの村の周辺にも生えているため、材料として結構な分量を提供してもらった。期待されてるなあ・・・・。


「カレーは確かにおいしかったけど、志姫って食のことになると尋常じゃないくらい暴走することがあるわね。」


 同じく食後のBitchを飲みながらユミールがどこか遠い目をしながらつぶやいている。改良型を提供することになってからは諦めたのか、普通に飲むようになってきている。通常のBitchが女性の飲みたくない炭酸飲料No.1なら、ハニーBitchは女性がジレンマを起こす炭酸飲料No.1と言ったところだろうか。


「それにしても、みんなも一日中戦闘をしていたにしては随分と体力に余裕が出来てきたようだね。」


「そりゃあ、ユーデンであれだけ連続戦闘をこなせば慣れるでしょうよ。」


 私が異界送りの儀を行っている間にその場でキャンプを張って延々と魔物討伐を行っていたことが功を奏しているようだ。ユミールはまだまだ余裕があるように見える。


「魔法で志姫に体力を回復させてもらえるというのも大きいですが、ペース配分や連携が随分こなれてきましたからね。」


「弓術が冒険者の時とは別物になっているのを実感できて疲れを感じる暇なんてありませんでしたわ。」


 皆それぞれ理由はあるようだけど、総じてブートキャンプが出来る程度の下地が出来てきたようだ。ティアミーが転職した後は魔王城に行って魔物を狩りまくらねば。


「ところで、みなさんはこの後テイデックに向かわれるのですよね?」


「そうだね、あそこにはダンジョンがあったんだが今は山で塞がれている。ちょうど聞こうと思っていたんだが、あの山はある日突然出現したと言うことで間違いはないかい?」


「その通りです、良く知ってますね。この森からでも少し高い位置に移動すれば見えるんですが、何の前兆もなくある日突然出現しておりました。」


 やはり歪みを通って現れた物で間違いはないようだ。ならば異界送りができる。


 他にもその山に関する情報がないかいろいろ尋ねてはみたが、山から魔物が出てくるなどといったこともなく、特に脅威を感じるような出来事もなかったのでそのまま放置しているらしい。


 魔物が出てきた形跡がないと言うことは、元々は魔物がいない異世界からの漂流物ということだろうか。さすがに今は魔物くらい棲みついていそうだけど。


「山そのものは驚異は無さそうだし、早速行ってみようか。問題なければ山をさっさとどかしてしまおう。」


「そのようなことが可能なのですか。流石は聖女様と神様の御一行ですね。」


「神様? 聖女は分かるけど神様って誰よ。」


 ユミールが不審そうな表情をサンポーに向けている。うちのパーティーで自称神を名乗りそうな人はいなかったと思うんだが。


「え? ですからエリザベスさんと向こうの小屋でお休みになられているヒノミヤ様ですよ。お二人とも神族ですよね?」


『え?』


 サンヨーから当たり前のように語られる言葉に皆の視線がエリザベスさんへと向くと、どこか困ったような表情を浮かべていた。


「・・・ええ、私は一応は神族ですね。」


「え? まっじで!? 私は神様をテイムしてしまったのかい?」


「あんたやっていいことと行けないことがあるでしょうに・・・。とはいえ、神様とは言え拾ってきたんなら最後までちゃんと面倒見なさいよ。」


 ユミールは神様と分かっても犬か猫のような扱いをやめない。このブレのなさは尊敬出来る物がある。


「ええと、エリザベスさんはそれでもよろしいのですか?」


 校長もどこか戸惑ったような感じでエリザベスさんに聞いている。さすがにユミールほど割り切ることは出来ないようだ。


「正直申しますと、テイムから解放されてダンジョンのお掃除に戻るよりは、志姫様と人として見て回る世界の方に興味がありますので、出来ればこのままでお願いします。」


「まあ、志姫はエリザベスさんをペットの魔物としてではなくて家族みたいに扱ってたし、それでいいんじゃないかな~。」


「ティアミーの言う通りですね。お二人は仲がよろしいのでわざわざ引き裂くような真似をする必要はないと思います。」


「それでいけば、ヒノミヤちゃんも同じですね。神様と言っても中身はまんま普通の子供みたいでしたので。」


 満場一致でエリザベスさんは現状のままということになった。


 私達の会話を恐る恐る聞いていたエリザベスさんは、その結果に安堵したようで嬉しそうにしている。一緒にいたいというのは本心だったようだ。


「とりあえずは現状のままにしておいて、数年たってユリアが復活したらエリザベスさんがダンジョンに縛られることがないよう交渉しよう。もちろん一緒にいるのがいやというわけじゃなくて、人として自分の好きなことが出来るようにしてあげたいからね。」


 魔物としての習性でダンジョンの掃除をしていたわけではないのなら、ユリアと交渉すればきっと何とかなるに違いない。


 もし難を示したら歪みの消去の報酬とでもしてもらおう。


「神様みたいに力を持った人が自由を手に入れるとどうなるのかという懸念はあるのですが・・・、それ以上に力を持っている志姫さんがこれですからねえ。」


「これだものねえ。あちこちに散らばって好き勝手されるよりはみんな一緒に目の届くところにいた方がいいんじゃない?」


『いえてる。』


 失敬な。私はそんなに自由人では・・・あるなあ。


 ある程度は節度を守っているつもりだけど、最近よくその辺の認識の違いからかユミールにぼこぼこにされるから少しずつ自覚が出来てきた。


「そんなことより! 今まで通りでやっていくときまったんならさっさとテイデックにいこう! そして今度こそ私の転職を!!」


「え~、どうしよっかな~?」


 ユミールが意地悪く焦らすような真似をしている。普段人をいじる機会がないからかものすごく楽しそうだ。


「・・・そんなこと言ってると、昨日の志姫とのゆりゆりな主従プレイの会話をあちこちに言いふらすよ。」


「ほら志姫なにやってんのよ、さっさとヒノミヤを回収してテイデックへ出発するわよ!」


 思わぬ弱点を作ってしまったユミールは一瞬で手のひらを返して私を急かしてきた。この反応の良さがいじられる原因だとわかっているんだろうか? でも、ユミールはずっとこのままでいてもらった方がおもしろいので言わないけれど。


「森に入る前につくった野営地にポータルを登録してあるから目的地はすぐだ。準備してさっそく出発しようか。」


「是非またいらしてくださいね。こんな森の中に住んでいると外部からの刺激がとても楽しみですので。」


「これからは人もたくさん来るようになるさ。私個人もカレー粉を仕入れにちょくちょく来ることになるだろうし。」


「はい、お待ちしていますね。」


 挨拶を済ませた私達はヒノミヤが起きてくるのを待ってからポータルで目的地へと向かって出発した。



 森に入る前に最後に張った野営地から再びフレイムダチョウに騎乗をした私達はテイデックへ向けて出発した。


 私のウエシマにはエリザベスさんが一緒に乗っているため、ヒノミヤは騎乗になれている校長と一緒になった。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・転職、転職ぅ・・・!!」


 目を血走らせながらぶつぶつとつぶやいているティアミーと誰もが目を合わせないようにしながら、遠くに見える目的地のテイデックの山を見据えている。


 それにしても、あの山なんだけど何故か見覚えがあるんだよね。どこで見たんだろう?


 実際に地球で見たわけではなくて写真でもないし・・・、アニメとかゲームでだったかなあ? たぶんここと同じようにして作られた異世界からの漂流物だと思うけど。


「それにしても、あの山って変わってますわね。」


 校長が私と併走しながら話しかけてきた。やはり創作物の世界は自然環境も違和感を感じるのだろうか? でも、この世界ではそんなことはなかったし、どうなんだろう。


「どの辺が変わっているんだい? 山のことはあまり詳しくはないんだけど。」


「一見すると鉱山に見えなくはないんですけど、実際には違うような、そもそも自然物でさえないような・・・違和感だらけでなんだかうまく説明が出来ませんね。」


 なんか昔、似たような台詞を聞いた気がするんだけど。


 あの山、不自然、・・・・頭の中で警鐘が鳴り響いてくる。早々にあの山は元の世界に送り返さないと行けない、そんな気がしてきた。


「志姫さん、見えますか? あの山の中腹あたり・・・、少なくとも人の手が入っていることは間違いが無さそうです。」


 校長の指を指している場所をみると、山の中腹あたりに見え隠れする巨大な石像があった。あの石像は・・・・!?



 私の脳裏にはAがひっくり返る様子が浮かんでいた。




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