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第36話 志姫、妖精の樹海に向けて出発する

アクセス数が倍増して若干混乱している今日この頃です。


よろしければ評価をぽちっとおねがいします!

「お帰り、ずいぶんと遅かったわね。」


「ただいま戻ったよ。ちょっと黒竜を討伐したり神事の指揮を執ったり信者に刃物でメッタ刺しにされたりしてたら時間がかかってね。」


「あんた一体なにしにいってたのよ!!」


「特に最後のは理解不能なんですが・・・」


 刃物で刺されたことに関しての心配は一切無いらしい。実際怪我らしい怪我はなかったんだけど。



 ヴィエル教総本山での交渉を終えた私はユミール達と合流するためにライテックへとやってきた。


 こちらの方は黒竜討伐で1日、コミケで2日、引っ越しの会議で1日、森林浴で1日の計5日を向こうで過ごしてきたため、結構待たせてしまったようだ。


「とりあえず、準備が済んでいるのなら早々に出発をしようと思うんだが、みんな行けるかい?」


「行こう、さっさと行こう!!」


 ティアミーが激しく急かしてきた。他の皆も苦笑しながら頷いている。


 今回の最大の目的地であるシーフの転職石がある山はテイデックと言い、町の名前ではなく地方の名称だ。


 シーフの転職石は元々町の中にあるわけではなく、ダンジョンの浅い階層にあったため、実質蓋をされた状態なんだろうか。


 仮に山が歪みを通って流れてきた物だとして、そのまま異界送りの儀で送り返せても、今度は千年間だれも入っていないダンジョンに突入しなければ行けないので、念のためにもMPの回復で1日は間を置かないと行けない。


 その辺の説明を出発前にあらかた説明して置いた。


「でも、ダンジョンならエリザベスさんがわかるんじゃないの?」


「シーフの転職石がある場所というのは地底の王のダンジョンですよね。そこは千年前の大戦で滅んだこの世界の真の魔王が現れた場所で、転移系は魔法でもなんでも全て使用不能になっておりましたね。」


『真の魔王!?』


 エリザベスさんの爆弾発言にみんなが騒然としている。私はその辺の話はゲーム内でのクエストで多少は知っているけど、やっぱりそこで魔王復活してた訳か。


 クエスト中はイベントマップ扱いになって帰還も含めた転移系スキルは一切使用不能になっていたので、その辺に起因するようだ。


「大戦の後で人が好き勝手名乗りを上げたようなものじゃなくて、元々の魔王はこないだ戦ったレヴィアタンみたいな異形で巨大なやつだよ。」


「詳しいですね志姫様。数多の神々と相打ちになるほどの強大な力を秘めた魔王でしたので、ダンジョンの方もその時に変質してしまったのでしょう。」


「あの~、それって転職石は無事なんでしょうか?」


 校長がもっともな質問を飛ばしてきた。ティアミーが泣きそうな目でこちらを見ている。本当に表情がころころ変わる子だ、見ていて飽きないな。


「そこは大丈夫だよ。私がルイスガルドに現れた時にユリアに転職石は全て無事であることを確認してもらっているからね。」


「はあああぁぁ、よ、よかった~。」


 安堵のため息を漏らしているティアミーを放置して、旅の行程を詰めていく。


 ユーデンからテイデックへは距離が離れすぎているため、オークの大襲来の際にちゃっかり確保して置いた、いくつかの都市へのポータルのうちのひとつであるレルゲンからフレイムダチョウで移動しつつ、アーチャーの転職石がある妖精の樹海経由でテイデックを目指すことに。


 妖精の樹海に関しては情報が無いため、実際に行って確かめるということで話は付いてある。もともとはそんなに迷うような場所ではなかったし、地図を見ても樹海のままのようだったので多分大丈夫であろう。


「最終調整はこんな物かな。それではそろそろポータルを出して移動しようか。」


「戻ってきてすぐに移動されるのですね。志姫さんのことですからてっきり旅の前にラーメンの食いだめでもしておくのかと思ってましたが。」


 そうつぶやきながら校長が首を傾げている。私の性格を理解してきているようだが、まだまだ甘いな。


「その辺に関しては問題ないよ。」


「そうよね、わたしたちの今までの旅の価値観あんたにぶっこわされたし。」


『ははははは』


 苦笑いを浮かべている年少組をみて不審に思っているようではあるが、特に問題はなさそうだと把握したため、そのままポータルで出発した。



 ライテックで旅の準備は全て済ませて置いたため、レルゲンの町では特に寄るような場所もなく早々に出立した。


 樹海まではまだ結構距離があるため、フレイムダチョウに騎乗しての旅路である。


「一気に長距離を跳んだからライテックとは生態の違う魔物ばかりのはずだ。フィシスはこの辺に出没する魔物の種類は分かるかい?」


 アカデミーでは地形の確認は出来ても魔物に関する生態分布図は確認できなかったので、歴戦の冒険者でもある校長に聞いてみることにした。


「樹海までは魔物と言うよりも魔獣の類が多いですね。樹海の中は巨大な蜘蛛とか他にも昆虫系が多く生息してるようですが。」


 昆虫系と聞いて鳥肌が立ったのだろうか、みんなぞわぞわしている。私も得意ではない・・・


「妖精の森とかご大層な名前ついててなんで巨大な昆虫がわらわらいるのよ・・・」


「私の大戦前の知識ではそんなろくでもない魔物はいなかったはずだし、後から住み着いたんだろうね。もしくは・・・」


「もしくは?」


「ほら、樹海ってテイデックの近くだって言っただろう? 魔王の瘴気に当てられて森の生物が変質したのかもしれない。」


「なるほど、それは考えられますね。」


 仮に樹海がテイデックからの影響を本当に受けていたとしたら、山から広範囲に広がっている可能性がある。


 魔王が倒されたことで影響の拡散が無くなっているとしても、山をどうにかする前に周辺の調査をするべきかどうか悩むところだ。


「何にせよ、魔王自体は既にいないんだ。魔王の影響だと仮定しても、既に変質した昆虫たちはそこで新しく生態を構築しているだけだろうし、普通に魔物として対処していけばいいさ。」


「うげぇ、昆虫とはあまり戦いたくはない。」


「ユミールはまだいいじゃないですか、私やセティは昆虫に斬りかからないといけないんですよ。」


「同意です。返り血ならぬ返り体液とか浴びたくはないですね・・・・」


「あの、既に滅んだ魔王よりも現魔王の私も見ていて欲しいんですが・・・」


 どんよりとした空気がながれていた。あと、最後の私の背中にしがみついているエリザベスさんの台詞が謎だった。昔の魔王に嫉妬でもしているんだろうか。


 ちなみに、エリザベスさんは冒険者ではないので騎乗が出来なく、私のフレイムダチョウで二人乗り状態だ。


 さすがにこの状態では戦闘は無理なので、樹海まではウィンドウォークをかけて魔獣と遭遇してもそのまま引き離しつつ先へと進んでいった。



「なるほど・・・、先程の意味がよく分かりましたわ。」


 ラーメンをすすりながら珍しくジト目でこちらを見ている。


 長期の旅のお約束となりつつある、野営をせずにその都度ポータルを登録してライテックへ帰還という流れで冒険者の旅の常識がぶち壊されたのであろう。アカデミーの校長としてはどうにも受け入れがたいようだ。


「まあ、通常は町から遠く離れたらポータルの位置情報は登録できないし、私達以外ではできない方法だ。問題ないと思うよ。」


「少なくとも、旅の方法とか言って私達のやり方をアカデミーの生徒達に広めるわけにはいけないでしょうね。」


「まったくです。聖女様の旅の記録をいつか本にしようと思っていたんですが、文章にモザイクをかけたくなってきます。」


 モザイクなんて概念がここにもるのか。かなり驚いたけど、恐らくはそれを広めたのはヴィエル教団であろうと予想が付いたのでツッコミはやめておいた。


「それにしても、毎日町に戻ってくるのにどうしてここまで準備を念入りに行っているんですか?」


 確かに長期の旅の準備はしないならしないでそれほど問題があるわけではないけど、念のためという言葉がある。


「そこは不測の事態に備えてだね。テイデックのようにポータルが使用不能状態に陥ったり、パーティーが分断されてまとまって帰還ができなくなったりと不測の事態はいつでも起こりうるからね。幸いみんなにはアイテム袋を持たせてあるし、各自サバイバル状態でも生き残れるように準備はして置いた方がいいだろう。」


 校長はそこで我が意を得たりといった表情で嬉しそうに頷いている。


「素晴らしい! さすがは志姫さん。トラブルが発生した時に生存確率を上げるのは純粋な強さよりもどれだけ念入りに準備がしてあるかにあります。というわけで、明日からは実習も兼ねて帰還をせずにキャンプをしていきましょう。」


『・・・は?』


「自前でポータルが使用できる志姫さんやそれなりに実績のあるユミールさんともかく、私の生徒達の三人は野営の経験は少ないでしょう。なので良い機会です、私と一緒に頑張りましょうね。」


 決定事項のように話を通されて、みんな何とも言えない表情をしている。


「ちょっと志姫、あんたがよけいなこと言ったせいで面倒なことになったじゃない!」


 ユミールが小声で横脇を突いてくる。指ではなくフォークで突くのはやめなさい。


「いや、あの反応を見ただろう、あれは絶対何を言ってもこの流れに誘導する気満々だったぞ。」


「教育者の業ってやつね・・・、やっかいだわ。」


 にこにこしながら旅の知識のあれこれを年少組に話し聞かせている校長をチラ見して、二人でため息をついた。




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