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閑話その3 衝撃!エリザベスさんは見た 前編

 愚かしく素晴らしい人間。


 このルイスガルドという世界には多くの種類の人間がいる。人族、エルフ族、ドワーフ族などで獣人族に至っては種類が多くて数えたことがない。


 千年前にはこれほどの種類の人間はいなかったはずだが、神と魔王の戦争を境に今まで見たことのない種族が現れるようになった。


 私はダンジョン内しか移動しないため、当時の戦争についてはあまり詳しくは知らないけど、人族が勇者を召還しようとして失敗を繰り返して違う種族を呼びだしたのだと魔族から聞いたことがある。


 どっちにしろ、私にはあまり関係ない。


 神族でありながらそれを隠し、ダンジョンで人やモンスターの死体を回収して浄化を行い瘴気のバランスを調整する存在、それが私、エリザベスさんなのだから。



 神族のほとんどと魔王が相打ちになり、人間や魔物も壊滅的な打撃を受けてから長い時が経過した。


 依然と魔物は弱体化したままであり、人間も自らの成長する術を失い、争いがほとんど無い時代が続いていた。


 おかげで私の仕事はほとんど無い状態であったが、何処からか迷い込んでくる人間がたまにいたため、その処理くらいで済んでいた。



 更に時が過ぎ、ある時、人語を話すことの出来る魔物から魔王が現れたと聞いた。


 しかし、話を聞いてみると人族の一人が勝手に魔王を名乗り好き勝手にやっているだけだという、本物の魔王が聞いたら大暴れしそうな内容だった。


 とはいえ、今は既に本物の魔王は存在せず、魔王という者が何であるかを知っている者はほとんどいない。生き残りの神々や私くらいであろう。


 名乗りたければ好きに名乗っているといい。このとき私は、その程度でしか考えていなかった。



 私は掃除が大好きだ。


 私の手によりダンジョンが清潔に保たれていると言っても過言ではない。ダンジョンを汚そうものなら、人間だろうが魔物だろうが必ず説教を行っている。


 たまに反抗して襲いかかってくる者もいるが、その時は返り討ちにしてエプロンポケットに収納後浄化している。仮にも神族、人間や魔物程度には負けることはない。



 今日はかつて人族の本拠地であった場所に来ていた。


 かつて戦争で滅んだ後、瘴気の影響を受けてダンジョンになってしまった場所である。


 私はダンジョンの浄化しかしていなかったので、ここがダンジョンになるまではかなりひどい有様だったようだ。


 一通りの掃除が終わるまでは数年がかりになりそうなので、しばらくは本腰を入れてここの掃除に入ろうと思う。



 このダンジョンの中心地、人族の城があった場所にて、危険な雰囲気を放つ死体を発見した。


 死体と言うより、この死体が装備している赤黒く、そして瘴気を発している鎧から危険を感じている。


 神族である私には分かるが、この鎧はこの世界の物ではない。


 この鎧を装備していた人族は、この鎧の危険性を分かっていたのだろうか?


 これは異世界の高位に属する魔族が装備していたであろう物、あるいは、この鎧そのものが魔物なのかもしれない。


 この城にいる魔物に話を聞いてみたら、これが魔王であるらしい。この人族は鎧が何であるのかを知らないままに魔王を名乗っていた訳か。


 一歩間違えれば大惨事だったであろう事を想像して冷や汗をかいたが、幸いにもこの魔王は老衰で亡くなっているようなので、鎧ごとエプロンポケットに収納して浄化することにした。



 非常にまずい事態になってしまった。


 鎧の呪力が思ってた以上に強く、浄化しきれずにエプロンと一体化をしてしまった。


 このエプロンは世界の管理者であるユリアリス様よりいただいた浄化の神器なのに、それでも浄化しきれないと言うことは、この鎧もそれに匹敵するだけの物があると言うことだ。


 幸いにも、エプロンは鎧に浸食されるなどと言うことはなかったので、装備をはずそうにもできない呪われた装備とでも思って放置することにした。


 この時から私の立場は神族でありながら魔王と呼ばれる者になってしまったが、私の業務を遂行する上で特に問題はなかったので気にすることはなかった。



 今日も世界一の広さを誇るこのアセトアのダンジョンにやってきた。


 ダンジョンの自体広さもあるが、ダンジョンが発生した時の瘴気の影響か、魔物の数も多いので掃除のしがいがある。


 そこに、ダンジョンの壁を破壊する音が聞こえてきた。巨人系の魔物がぶつけて破壊してしまったのだろうか? 説教をするために現地へと跳んだ。


 そこには、武器を構えて破壊した壁の前で雑談をしている人族の5人組がいた。


 周囲には破壊した壁の残骸が転がっている。生きている人族に会ったのは久しぶりだが今はそれどころではない。


 転がっている残骸を回収した後、その者達を正座させて説教に入った。大抵の人族は逃げ出すか暴れるかするのだが、聞き分けが良くおとなしくしていたため、2時間程度の説教で勘弁してあげた。



 人族のうちの一人が私にこのダンジョンを案内して欲しいなどと頼んできた。


 今まで私にそのようなことを頼んできた者はいなかったので興味に駆られたが、神としても魔王としてもダンジョンを徘徊する魔物的な立場としてもあり得ないことだったので断った。


 その人族は少し考えた後、私に一本の箒を差し出してきた。これを私に差し出す代わりに案内をして欲しいとのことだった。そんな箒程度で私が言うことを聞くとでも・・・でも・・・



 気が付けば、私はその箒を手にとって魅入ってしまっていた。


 私の中では、従うべき存在はユリアリス様だけとなっていたのだが、その意義が書き換えられていくような感覚、最優先の命令と付き従うべき人物は目の前のご主人様であるとなってしまった。


 どうやら、私は過去の人間達の冒険者が行っていたテイムというものをされてしまったようだ。


 神である私がテイムなど出来るのであろうか? と疑問を覚えたが、手に持っている箒は私を従える事の出来る可能性がある神器であることが判明した。


 とはいえ、この程度の神器で私を従えるのは無理があるはずだ。私と同格の神々で多少可能性がある程度。ユリアリス様でなんとかいけるといったところのはずだ。この目の前のご主人様は一体・・・。




 ご主人様の名前は志姫様とおっしゃるそうです。


 志姫様は私に大神殿へと案内させた後、私に掃除を命じられました。この区画は結界が張られてダンジョンと区別されていたため、掃除に入れなかったのでちょうど良かったです。


 掃除を開始してさほど経過しないうちに、この神殿が大きな光に包まれました。


 この光はユリアリス様が行使されるだけの力さえも上まりかねないものです。一体何が起こったのでしょうか?


 志姫様のお仲間と合流した後、志姫様を探したら床に倒れられているではありませんか!


 慌てて駆け寄ろうとすると、ユミール様がわき目もふらずに飛び出して、抱き寄せた後必死に呼びかけ始めました。普段どつきあいをしている関係のようでしたが、根っこの部分は深い信頼で結ばれているようです。


 ユミール様が抱きしめた状態のままで私が診察した感じでは、特に体には異常無いように見受けられました。お仲間のみなさまに説明をした後、時間を置きつつ定期的に声をかけてみることで様子見となりました。



 やがて、志姫様は目を覚まされましたが、そこで私は驚愕してしまいました。


 志姫様から感じられる神聖力が溢れていたからです。これは私などよりも遙か上・・・いえ、ユリアリス様さえも上回っている気がします。


 私のご主人様は一体何者なのでしょうか? 悪意は感じられないため、邪神などではないと思いますが。


 これからお供として付き従うのはかえって都合が良かったかもしれません。


 問題が発生した場合は、私がお諫めするか、最悪の場合ユリアリス様を頼ることにいたしましょう。




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