表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/54

第18話 第二章 志姫、砂漠を快適に旅する

第二章開始です。


緊張感のあまり無い旅が始まります。

「ああ、今日も一日つかれたわ~。」


 お風呂上がりにユミールがだらけている。疲れているのは分かるけど両足開きで団扇のような物を使ってぱたぱたするのはさすがにどうかと思うが。


「砂漠を移動しているんだ。ずいぶんと暑かったことだろう。ここにきんきんに冷えたBitchがあるけど飲みたくはないかい? いまならジョッキで提供するよ。」


「くっ、冷たくてしゅわしゅわ・・・名前さえなければ、あの名前さえなければ!!」


 苦悩しながら悶えだした。さすがに地球での女性が飲みたくない飲料No.1だけのことはある、この状況でも躊躇してしまうらしい。


「あの~。」


「セティリアか、なんだい、Bitchを飲むかい?」


「いえ結構です。そうじゃなくてですね、旅って言うのはこういう物じゃないような気が。」


「ふむ、君は丸一日を砂漠で過ごしたかったというわけかい? 精神修行という意味ではいいのかもしれないけど、明日からそうしてみようか。」


『却下で!』



 ユーデン砂漠


 大戦前は大規模な港町であったユーデンの都市が、いつしか砂漠に飲まれてしまった土地である。


 大戦の影響かそれとも歪みの影響か、普通では起こりえない現象によってほぼ隔離状態の砂漠の遺跡。何時しか住み着いた砂漠の魔獣の驚異もあり、冒険者がここを訪れることはほとんど無い。


 灼熱の砂漠の中では対策がされていないと時間経過でHPが少しずつ消費されていく。冒険者はレベルに対するHPやMPの係数が低いから厳しいだろう。


 我々は、砂漠の横断のために暑さに強い騎乗生物のフレイムダチョウを入手。それと、熱対策の装備を各自に装備させた。一つで完全無効の装備はさすがにいくつもはなかったけど、複数の装備を併用して実質100%無効には出来るので、大きな問題はなかった。ただ、私やユミール以外の年少組は冒険者のままでHPに不安があるため、HP増強系のうち、%で上昇ではなく数値で上昇するタイプのカードを刺した装備も用意して置いた。いつかみたオーガゾンビカードである。


 冒険者にとってはHPが+1000も増える装備は大変魅力的なため、この時代に置いては非常に高額で取り引きされているとのことだった。まあ、レベルやスキルにもよるけど、大抵は倍以上に増えたりするからね。


 ともあれ、人の出入りも少なくモンスターの生体がよく分かっていないこの状況では何が起こるか分からない。最悪でも不意打ちには耐えれる状況にしておくのは必須であろう。


 砂漠の旅の生命線とも言えるべき水の確保に関しては、私のアイテムボックスを使用して解決済みである。念のためにみんなには水を詰め込んだ低級のアイテム袋を渡して置いてあるので、最悪ばらけることがあってもただちに問題はないレベルにはなっているはずだ。アイテムボックスについては皆にうらやましがられたけど。


 しかし、砂漠の恐怖は昼間と夜の気温の変化の激しさだ。熱の耐性を施していても夜は逆に寒くなるため、安全も兼ねて現在地をポータルで登録して、毎日たまり場に帰宅することにしていた。寝ている間にサソリにでも襲われて、朝起きたら冷たくなっていたとかは洒落にならない。



「ああそうだ、私は今夜は外で食事をとってくるつもりだけど、みんなはどうするんだい?」


「あれ、一人で食べに行くつもりだったの? ひょっとしてデートとか!?」


「はっはっは、全ての愛を肯定するヴィエルの使途としては言うのもなんだが、私に普通の恋愛はありえないね。それとも、誰か私にお似合いになるような人でも知ってるのかい?」


「・・・・マッシュとか? いや冗談ですじょうだん、やめて志姫さんおねがいしますううううううう」


 バカ貴公子の名前を出してきたティアミーにバックドロップを仕掛けた。周囲の目も、自業自得と言った表情だ。さすがにあれはないらしい。


「話がそれたね。私はこれからラーメンを食べに行こうと思ってね。貴族出のみんなが食べるのかどうか分からなかったから確認をしているだけさ。」


「いえ、私達も普通に庶民の食事をとっていますよ? 貴族出と言っても裕福じゃない人とか結構いますし。」


「ラーメンですか。オークの骨を出汁にしたものすごく細いラーメン屋知ってますけど、そこに行ってみますか?」


 オークの骨を出汁にって・・・ひょっとして豚骨ラーメン風なのか!? しかも極細!!


「是非、是非ともそこに連れて行ってくれ! おごるから、みんなの分もおごるからそこに行こう今すぐ行こうそうしよう!! ティアミーもなにソファーに頭を突き刺しているんだ、ほら行くぞ!!!」


 目を回しているティアミーを引きずって皆でラーメン屋に繰り出すことにした。



「はあ、幸せってここにあったんだなあ。」


「あんたすっかり店主と意気投合してたわね。」


 ため息と共にラーメン屋を後にした私は、先程のラーメンの味を思い出していた。


 ラーメンの出汁の取り方が甘いような印象を受けたが、元となったオークの骨が豚骨よりも質が高いようで、博多で食べていたラーメン屋に劣らない出来映えだった。


 具材が何もなかったため、店主にチャーシューの作り方や豚骨の出汁の取り方をレクチャーしたらすっかり意気投合してしまった。これからしばらくはラーメン屋通いが続きそうだ。そう言えば、王都のほうではカレー屋もあるとか。そのうち王都に行ってポータルとってこないと。


 この世界に来て、食事のはずれはあまり無いのは非常にありがたい。恐らくだが、この世界自体が日本人の想念を元に出来ているため、食文化への探求心が非常に強くなっていると思われる。過去に歪みを通って日本人が迷い込んだ形跡もあるため、日本で日常に食べているメニューを出す店もちらほらあった。まあ、ラーメンやカレーには敵わないけど。


「故郷の味を旅先で味わえるこの幸せ、君達には分からないだろうね。」


「故郷とまでは言わないけど、実家の料理をたまに食べたくなるときはあるわねえ。」


 ユミールの言葉に年少組も同意していた。そういえばみんな幼なじみだったっけ。


「やっぱり家が恋しくなったりするかい?」


「実家が嫌いな訳じゃないけど、冒険者やめて帰ってきた日にはどこかに嫁がされるからごめん被るわ。」


「苦労がないって言っても自由がないのはわたしたちにはムリムリ。」


「冒険者になると言って実家を出たときは両親に泣かれちゃいましたけどね。」


「それでも私達は自由を選んだことを後悔はしていません!」


 みんななんだかんだで現在の生活に満足はしているようだ。私としては、いつか大きな功績を挙げて実家への顔を立てて大手を振って帰れるようにしてあげたいとは思っているけど。まあ、これを口にするのは少々照れるので言わないで置く。


 

 たまり場の近くまで戻ってきたとき、この時間は人通りがあまり無いのにもかかわらず近辺をうろうろしている人を発見した。向こうもこちらに気づいたようで、用事でもあるのか走ってきた。


「失礼。私はルーム家の執事の者ですが、こちらの建物に志姫様とユミール様というお方が住まわれていると聞き及びまして、どちらにいらっしゃるかご存じないでしょうか?」


 どうやら、私服に着替えているせいで私達を冒険者だとは気づいていないようだ。でも、ルーム家って聞いたことがあるような。・・・ああ、バカ貴公子の実家か!


「おや、ご存じありませんでしたか? 彼女たちは現在、この町を出て砂漠に向かっていますよ。冒険者としての依頼をしようとしても無理ではないでしょうか。」


 私の言葉を聞いて意気消沈した執事は、一言お礼を言って去っていった。姿が見えなくなったのを見計らって帰宅することにした。



 みんなの視線を一身に受けたが、「バカ貴公子にまた関わりたいのかい?」と聞いたら一斉に目をそらした。さもありなん。





志姫がバカ貴公子の再登場のフラグをつぶしたので当分出てきそうにありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ