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閑話その2 ユミール編、わたしの相棒は凶暴です前編

評価ありがとうございます。


励みにしてがんばります!

「うう、一人でシルバーウルフの調査とかどんな罰ゲームよ。」


 わたしことユミールディ=パリィは一人でプリライト近辺まで出てきた不安をごまかすかのようにつぶやいていた。


 シルバーウルフは本来、Cランクのパーティーが数人で討伐に来るような大型ウルフの上位種だ。わたしが勝てる分けないじゃん!


 そもそも、近接戦闘ができないわたしになぜこんな依頼が舞い込んできたのかというと、忌々しい守銭奴共のせいだ。


 この国で一番勢力の強いヘルス神殿のお偉いさんがプリライトへの巡礼を行うに辺り、神殿の下っ端が下見に行く途中でシルバーウルフを発見。慌てて神殿に報告をすると、すぐさま冒険者ギルドに討伐依頼が入った。


 だが、その日はCランク以上の冒険者に手空きがいなかったため、こちらの体制が整い次第討伐に向かう旨を伝えると、神殿関係者は激怒。すぐに依頼を処理しないとギルドと契約している神聖魔法の使用料金を値上げするなどと言ってきたらしい。本来、依頼してその日のうちに冒険者が受けることは滅多にないんだけど、こいつらには常識は通用しないわ。


 そこで白羽の矢が立ったのがわたしだ。たまたま依頼を探しにきていたDランクで最悪発見されてもクァグマイアで足止めをして逃げることが出来ることもあって、Cランク冒険者が来次第すぐに討伐にかかれるようにと先行して調査をすることになった。


 せめて、アーチャーとかの目がいい冒険者を連れて行って欲しかったけど、神殿関係者が来た時点で他の冒険者はすぐにギルドから出ていっていた。依頼書漁りに夢中になっていたわたしが呪わしい・・・



 おっかなびっくりで荒野を進むと、驚愕の光景を目にした。


 旅人のような人が標的のシルバーウルフと共に倒れているじゃない! こっ、怖いけど庶民を見捨てるのは冒険者としても貴族の端くれとしても出来ないわね。でも、とりあえず近づきすぎるのはやめておきましょう。


 声をかけてみようかと考えたら、倒れていた人が起きあがってきた。生きている! すぐさまそこから離れるように指示を飛ばしていた。



 いやもう、何がなんだか訳が分からない。状況も、この志姫という女も。


 話を聞く限り、野営と称しつつ、毛布の上で雑魚寝していたら夜中にシルバーウルフに襲われているのを寝ぼけて抱きついて絞め殺したとか。本人は否定しているけど、抱きついた形で見事に骨が砕けている形跡がある。


 そもそも野営で結界も何も無し。装備も見た限り普通の町中で着ているような服装で鎧も武器も無い。激しくツッコミを入れたけど、「まあ、生きてるんだからいいじゃないか」と受け流されてしまった。それに高貴な飲み物と言ってBitchなどというたわけたシュワシュワを飲ませるし、もう、こいつはなんなの、もう!


 シルバーウルフの脅威が無くなった時点で気がゆるんだのか、志姫とはぽんぽん話が弾んだ。でも、このいじられ感がくやっしい! いつかやりかえしたるわ。そんなことを思いながらライテックへ戻ろうとしたが、志姫がシルバーウルフを放置してついてこようとしていた。


 なんでも、志姫もシルバーウルフの討伐証明部類を知らないとのこと。わたしも調査だけと思っていたから聞いてこなかったんだよねえ。悩んでいたら、「分からないなら全部持っていこう」といいつつ腰につけていた小袋にシルバーウルフを収納していた。うっそ、あれアイテム袋なの!? 容量にもよるけど金貨10~50枚はするのに。


 アイテム袋うらやましいなあ。冒険者には上位のアイテムボックスのスキルがあるにはあるけど、取得条件が厳しすぎる。魔法職のわたしにはムリね・・・



 驚愕の事実! わたしのスキル構成、相性がわるかったなんて!


 セティリシア師匠はわたしのスキル構成の取得予定表を見たとき、「なんてロマンがあるんだ!」と褒めちぎっていたのに、現実は過酷。


 これから相性の良いスキルを新たに覚えていくのはレベル的に結構きつい。落ち込んでいたら、志姫がしばらくパーティーを組まないかと誘ってきた。冒険者ギルドには未登録らしいけど、これから町で登録を行うつもりらしい。シルバーウルフの攻撃を無防備で物ともしない程の防御力の持ち主なら、後衛火力のわたしとは相性もいいだろう。自前で回復も出来るそうで、すぐに話に飛びつくことにした。



 驚愕の事実その2! 志姫はアコライトだった!


 聖職者ってみんな守銭奴じゃないの!? 話によれば、志姫はヴィエル教のアコライトらしい。それなら納得できなくはないけど。あのニートが多いヴィエル教徒とは思えないほどのアグレッシブさ、認識を少し改める必要がありそうね。


 とはいえ、アコライトとパーティーを組めるなんて実はとんでもなく運が良かったんじゃあ? 絡んできた冒険者の攻撃を無抵抗ではじき返していたし弁も立つ。反動でトラブルを呼び込みそうな感じもあるけど、きっとわたしに損はないわ!



 うう、自分のあさましさが身にしみる・・・


 ほんとは調査だけだったはずのシルバーウルフ。志姫は完全にわたしが討伐に来ていたと信じて、報酬をわたしにも分けてくれた。アコライトと聞いた時点で金銭面はいろいろと諦めかけていたけど、この対応で志姫に対しての評価を改めさせられた。でも、すぐにからかってくるので反省をする暇もない。こうなったら、とことんのってやろうじゃない!


 でも、かけあいをするにしても、パスタの話題だけは絶対にしてはいけないと身につまされたわ。



 わたしの幼なじみたちを紹介したら心底驚いていた。ブチキレましたよ、マジで。


 とはいえ、志姫はみんなとすぐにうち解けたようでわたしたちのたまり場を住居として勧められていた。Bitchの洗礼も受けてこれでみんなもわたしと同じ穴のムジナね。巻き込まれるのはひとりでも多い方がいいわ、そうでないとわたしの身が持たない、そんな予感がする。



 志姫の謎がまた出てきた。


 魔金貨を10枚ももっているなんて! しかも本人はそれの価値よく分かっていないようだし。浮世離れしたお嬢様って感じは全くしないし、つきあっていくほど混乱していきそう。



 そんなこんなで出会った初日からどたばたしていたけど、志姫が関わるトラブルはこれからが本番だった。


 どこから知識を仕入れたんだろう。近隣のオークを呼び寄せるオークキングの亜種の存在を示し、ギルド長やアカデミー長を口八丁で説得。わたしが何もできずに呆然としている中であれやこれや話が進み、防衛戦を行うことになった。プリーストのスキルのポータルをアコライトの志姫が使用したのには驚いたけど、志姫の謎が増えたところでもう今更だ。ツッコミはあとでしちゃるけど。


 

 ばっかじゃないのばっかじゃないの!?


 志姫は遊撃部隊の中で一人だけで戦場の各地に飛んで回復要因として動くつもりだったようだ。みんな仲良くはなっても大事にされたい訳じゃない。共に戦わなくて何がパーティーだ! みんなも同意している。


 わたしたちのお叱りを受けたにもかかわらず、普段それほど表情がさほど表に出ない志姫が、目に見えて嬉しそうな顔をしている。そ、そんな顔をしてもゆるさないんだからね!



 志姫には武器をなるべく持たせない方向で行こう。


 先日志姫と共にオーガゾンビと戦ったというプリライト山の山道の安全確保依頼を受注中の、B級冒険者のザックさんたちご一行。彼らがいうには、志姫のハルバードを持った暴れっぷりはバーサーカーのようだったと。


 彼らは褒め称えているつもりかもしれないけど、こんな状況でバーサーカーになられたらたまらないわ。志姫に刃物、パーティーメンバーに周知徹底ね。



 防 衛 成 功 !


 ふっふっふ、やったわ! みごとにオーク共を殲滅した!!


 戦闘を終えた遊撃部隊は西門から凱旋をしている。志姫はまだ用事があるからと離れているけど、わたしたちの番までにちゃんと帰ってこれるかしら。


 そんなことを思っていたら、志姫が出迎えの町の住人に混じって万歳三唱している。わたしと目があったら人混みに紛れて逃げ出した。なにやってんのよあいつは!


 ギルドで合流したときに理由を聞いたら、「目立つの恥ずかしい」とかぬかしてきおった。みんなでフルボッコにしてやったわ。





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