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閑話その1 ユリア、悪夢の微睡み前編

ユリア視点の番外編です。

基本はしゃべらず内心を書いているので日記っぽくなっています。

 「どうしてこうなったんでしょう・・・?」


 微睡みに近い状態、身動きできない中で諦めとも絶望とでも取れる表情を浮かべていた。



 始まりは、地球の聖女『志姫』をルイスガルドに招聘したことから始まった。


 最初に感じた感想は、肉体的には普通の人でしかないのに、更に存在力の一部しか引っ張ってきていない割に、既にルイスガルドの一般人よりも強い存在感を放っていたことに大層驚きを感じた。


 形式だけの聖女という肩書きではないのがよく分かる。善良、かどうかはよくわからないけど、悪人ではない。これだけ魂の力があるなら、彼女の発する言葉は多くの人が無意識に従ってしまうだろう。


 私がこの管理者の間に招聘した後、このような感想を抱いている間にあっさりと落ち着きを取り戻して手に持っていた容器から飲み物を飲んでいた。思わずツッコミを入れるハメになってしまった。



 おかしい。


 どうして私の方が志姫に振り回されているんだろう? 会話の主導権をすっかり奪われ、悪戯でBitch等という巫山戯た飲み物を飲まされ、招聘の理由とお願いが終わるまで散々だった。



 ようやくルイスガルドに降りる旨を了承してもらった。


 ルイスガルドの聖女として降りるために向こうで既に用意しているアバターとここにいる志姫を結びつける作業だ。


 あのアバターと言うものも用意するのが大変だった。ルイスガルドにはない電子データという物からアバターを構築する作業なのだけど、私にはその電子データは理解できないので、かの存在の力を使わせてもらった。このときにそのデータが読めれていればと後々どれほど後悔する羽目になったか。


 ああ、いけない。初めて行う作業でトラブルを起こすわけには行かない。もっと集中しよう。


 なかなか終わらない。最初は志姫が嫌がらせのために抵抗をしているのかとも思ったが、作業そのものはちゃんと進行している。さすがに自分の体に異変が起こりかねないような邪魔はしてこないか。と、いきなり力の移動速度が加速してきた。アバター側の情報抜き取りがようやく完了したようだ。それが一気にここにいる志姫に流れ込む。力の・・余波が・・・私まで・・・


 ・・・・・

 ・・・・

 ・・・


 どうやら私は気絶をしていたようだ。志姫の方も気絶をしていたようだが、私よりも先に目を覚まして、気付けにBitchを飲ませたらしい。うう、最後の作業で力を使いすぎたのか、まだ頭がうまく回らない。


 もし作業を失敗していたら志姫に何をされるかわからなかったが、志姫とアバターとをつなぐラインはちゃんと出来ていた。よかった、本当によかった。



 志姫を無事に送り出すことが出来た。


 今となっては、志姫のあの謎のカリスマと口八丁でどうとでも生きていけそうな気がするとも思えたが、モンスターが普通にはびこるこの世界では力はあるに越したことはないだろう。いろいろ破天荒ではあったが別に嫌いなタイプでもないし、時折は様子を拝見するのもいいかもしれない。だが、まずはこの使い果たした力を補給するために数年の眠りにつく必要がある。


 眠りにつこうとしたその時、世界から多数の歪みを検出した。訳が分からなかった。この短時間で何故同時にこれだけの数の歪みが!? 混乱する私をさらに追い打ちするかのごとく、空間に亀裂が走った。見たことのない現象に恐怖しながら、私はその亀裂からのびてきた腕に捕まれて、引きずり込まれた。



 ありえない!


 先程の空間の亀裂を作り私を引きずり落とした犯人は、どうやらこの志姫のようだった。それに、私ははっきりと見た。『”コーリングゴッド”スキルを獲得しました』と志姫の視界に表示されていたのを。コーリングゴッドは私が作り出したスキルだ。聖職者系統の位階を重ねることが取得条件になっていて、儀式を通して自分の宗派の神を顕現させることが出来るというスキルだ。


 呼び出す方法も、呼び出す対象も違うのに何故このようなことが起きたのか。私の混乱はとどまることがなかった。



 1000年経過しているという事実が判明した。しかも世界は一度滅びかけていたようだ。 


 私は世界の管理者であって人族やルイスガルドに生まれた神の味方ではないため、ただ神々と悪魔の戦争が起きて結果がこのようになったとかであればどうこう思うことはなかったであろう。だが、この世界の必須パーツとも言える聖女志姫がいないが為にこの状況なったとすれば・・・・


 苦しい言い逃れをしていたら志姫の目から放たれたビームで焼かれてしまった。衰弱している私には強烈すぎる一撃だった。しかも追い打ちをかけるようにもう一発放とうとしていたため、慌てて罪を受け入れ、必死になって止めた。だって、あの目は本気だったから。




 大変な事実が発覚した。


 志姫には歪みを処理することの出来る管理者権限が一部持たされているようだった。かの存在による物であろうか? いくら位階を重ねたところで世界の歪みは目視が出来るものではない。実際に歪みの対処作業を教えてみたら、見事に消去できていた。


 管理者権限を一部とは言え持っている志姫が、もし先程のビームで私を倒していたら、私から管理者権限を簒奪していたはずだ。言えない。下手なことを教えたら、何か起こるたびにコーリングゴッドで引きずり出されてお仕置きをされて、いつか私の地位が奪われてしまう!!


 とりあえず管理者権限のことは伏せつつ、私が眠りについている間に歪みの対処をお願いすることに成功した。あの腐女子ビームというネーミングはやめて欲しかったが、正直なところ、あれで発動してしまっていると言うことは、聖女の光の発動キーワードとして登録されている可能性が高い。もはや諦めるしかないのであろうか。



 その日の晩は、志姫と色々話をすることになった。


 力を使い果たしたために数年の眠りにつくこと、その間はコーリングゴッドでも呼び出すことは出来ないこと!(重要)、一度は滅びかけていた人類が再興してきていること等の今の私の力で分かる範囲での情報と、歪みの発生していると思われる場所の情報である。


 歪みは全部探し出して消去まではしなくてもいいが、志姫がいる土地に歪みがあって処理をしていないと確実に影響が出そうなので、一つの土地に一定期間以上留まるのならば、調査をして歪みがあった場合処理するようお願いした。最低限これさえやっておけば、残りは私が目を覚ました後からでも何とかなる。


 その後、伝えるべき事を一通りは伝えることが出来たと判断した私は志姫と別れ、管理室に戻り休眠に入った。休眠中でも、世界の状況は夢を見るような感じで覗くことが出来る。覚醒後のことも考えて志姫に視点を当てて世界の流れを見ていくことにした。だって、確実に彼女を中心として世界が回っていくだろうから。


 正直、志姫に視点を当て続けることに多少のリスクを覚えてはいる。志姫に出会ってからこの僅かな時間(+1000年)の間で、管理者である私でさえも影響を受けている。感情といえる物が顕著に出つつあるのだ。世界を見るというのも、理由をあれこれつけてはいるが、純粋に興味が沸いてきたというのも大きい。


 本来管理者には不要な物であるはずだが、もはや手遅れである。もてあまし気味の感情の赴くままに休眠に入り、微睡みの中に落ちてゆく。これから見る夢が素晴らしき物でありますように、と願いつつ。




 その夢がある意味悪夢といえる物になっていくのはこの後すぐからだった。




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