第17話 第一章エピローグ
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「ふっ、ふぅざけるな! こんな勝負無効に決まってあんぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃっ」
やるぞやるぞ、絶対にやるぞ! と思ってたら、案の定マッシュがやらかしてしまった。
負けたら無効だなんだとごねてきて、力業で勝負を潰しに来ると思ってたから金貨まで出して魔法契約を用いたけど、流石はバカ貴公子。魔法契約が意味するところを何も分かっていなかったようだ。
「魔法契約は神殿で入手できる高額の契約書だ。神様に対する誓いであるから、反故にしようとすると天罰が下るよ。ちなみに、回数を重ねるほど罰はひどくなって、最悪死ぬこともあるから注意してくれたまえ。」
「なんだってぇ!? それじゃあ僕のユッミ~ルちゃんはんもぐぁごふおっ」
懲りずに暴れようとしたところを、マッシュの取り巻きが押さえつけてご退場していった。まあ、たぶん痛い目を見てもすぐに忘れてしまいそうだし、生き延びるためにはずっと家での監視とかが必要になりそうだ。
マッシュの退場と入れ替わりで、ギルド長が近づいてきた。先ほどの魔法の件について問いただすつもりなのだろうか? 私のことを詮索しないと言うのは前回のことで終了したとでも思っていそうだ。しかし、そこにギルド長を押しのけるようにしてユミールが走ってきた。はっはっはっ、ういやつめ。
「志姫!!」
「どうだい? 完勝だっただろう。私に不可能はないよ。」
「そうじゃない! あんたなんでアコライトなのに火壁つかえるのよ! パワーアップしたわたしよりど派手な魔法使うとかなにかんがえてんのよわたしの取り柄かえしてよおおおおおおおおお!!」
おおう、このギャラリーが大勢の中でとんでもないことを口にしてきた。だが問題ない、我に秘策あり。
「まあまあ、落ち着きたまえ。アコライトがマジシャン系統の魔法を覚えているわけがないだろう。秘密はこの杖だよ。」
そういいつつユミールの前に差し出したのはもちろん、マジカルステッキオブラブリー。そこからはめ込まれている魔石を取り出して、握りしめてみると、粉々になって砕け散っていった。
「この杖の切り札とでも言うべき機能でね、魔石を消費して一発だけ今のを撃てるんだ。魔石を交換しても1ヶ月は使用不能なんだけどね。」
「今あんた、魔石を握りつぶさなかった?」
「魔石がそんな簡単に壊れるわけないだろう? 絞りかす状態だったから脆くなってただけさ。」
私達の会話に聞き入ってたギャラリーがマジカルステッキオブラブリーを注目している。・・・計画通り。でもまだだ、まだ終わらぬよ。
「何その凶悪な杖。マジシャンであるわたしが持った方がきっと役にたつわよ!」
「錯乱していつもより物欲に正直だね。これはヴィエル教の高位の神官にしか使えない専用アイテムだからユミールには使えないよ。持ってみるかい?」
そう言いながらユミールに手渡しする。その瞬間、いきなりユミールがふらふらしだした。
「何これ!? 持った瞬間から力が抜けるというか、わたしの魔力がほとんど無くなってるんだけど!!」
「まあ、ヴィエル教徒でさえないからしょうがないね。ギルド長も持ってみるといい。その事を聞きに来たんだろう?」
先手を打たれて、ギルド長は顔をしかめる。だが、興味はやはりあるようで、手に取ってみてユミールと同じ状態になる。
「これは・・・、先ほどの大技どころか、通常の魔法さえ使うことは出来なくなりそうじゃな・・・」
「ヴィエル教徒で私以上に魔力を持っている人もいないし、実質私専用の装備だね、これは。」
「ううむ、魔石を使い捨てにした上で連続使用も出来ず、派手に見えても基本は単体スキルか。あんな魔法は室内では使えたものじゃないし、実質フィールド戦闘用か。まあ、これならさほど問題は無いじゃろう。」
杖を受け取ってギャラリーに向けてかざす。
「他にも誰か試してみたい人はいるかい? 所持しているだけで魔力ごっそり持って行かれるから戦士系寄りの人でもはっきりと体感できるけど、元々の魔力が低すぎたら気絶はするかもね。」
2~3人チャレンジャーがいたけど、皆受け取った後で顔を青ざめさせてすぐ返却してきた。MPが減る訳じゃないけど、魔力が20分の1まで抑えられたら慣れてないと体調くらいは崩しそうだな、やはり。
「まあ、魔法はあのバカ貴公子を脅すための秘策だった訳だが、トロールを素手で倒したのは純粋な私の実力だ。試合の中で言ったように、私の仲間にちょっかいをかけようとする輩がいるなら、覚悟をしておくといいよ。」
ユミールやその他の仲間達を引き連れ、静まりかえった訓練場を後にした。
「それにしても、あんたとんでもない切り札もってたのね。」
帰宅後、皆で遅めの昼食を取った後、、ユミールが話を切りだしてきた。
「切り札? 一体何のことだい?」
「そりゃあもちろん、志姫がさっき使った奥義でしょ? あのどっか~んって火柱!」
ティアミーが身振りを激しくして火の大きさを表そうとしていた。なんか年齢よりも若干幼い表現をするな、この子。
「ああ、あれか。」
「あんなの持ってるならもっと早く教えなさいよね。なんかいろいろあって混乱して物欲丸出しになっちゃったじゃない。」
ユミールが若干拗ねた状態でこちらを見ている。先ほどの光景はやはり自分でもあり得なかったらしく、かなり恥ずかしいようだ。
「いやまあ、話すも何も、さっきの話、あれは嘘だからね。」
『はぁ!?』
「ほら、魔石だってこの通り」
魔石を取り出して、テーブルにごんごんぶつけて強度を示した後、握りしめて粉々にしてみせる。みんなの目が点になっている。
「志姫って握力一体どれくらいあるんですか? 魔石は立派な鉱石ですよ。それを握りつぶすなんて・・・」
「女の子に握力いくつとかあまり聞くものではないね。エリシアの頭くらいなら握りつぶせそうだけど試してみるかい?」
「いいえ結構ですもう聞きません!」
うむうむ、素直でよろしい。Strが514ということは、通常の人間の限界値の4倍以上。ミスリルゴーレムとプロレスしても粉砕してしまいそうだな。さすがにこっちもダメージは受けるだろうけど。
「でも、筋力でも私より遙かに上とか、純粋な戦士を目指す私としてはさすがにちょっとへこむんですけど。」
セティリアまでがっくりしてきた。私のように人間やめた方がへこむ気がするけど、冒険者が力を求めるのは普通のことだしそのままにしておこう。貴族の子女として彼女たちの思考が脳筋寄りにかたむきつつある気がするのはどうかとおもうが、私の責任ではない。
「筋肉の話なんてどうでもいいのよ! 嘘って何が嘘なの、どこからどこまでが嘘なのよ!?」
筋肉談義をしていたら、ユミールが再起動してきた。目を血走らせて首を絞めてくる。私には効果がないが、これが癖になって他の人にまでやってしまったら絞殺魔女とか呼ばれそうだな。
「・・・・なんかリアクションとか考え無しの行動がバカ貴族っぽくなっていってる気がするな。」
私がぼそりとつぶやいたら、その手を離し、絶望の表情をして崩れ落ちた。ああ、やはりそれほどいやだったんだ。
「興奮する気持ちは分かるが落ち着きたまえ、これでも飲んで一息いれるといいよ。」
「あ、ありがとう。いただくわ。ってBitchじゃないのよこれ! あんたどうしていつもいつも人の心の隙間を的確に突いてくるのよ私に安住の地はないのおおおおおお!?」
「さて、ユミールが錯乱している間に皆に先ほどのことを説明しようか。それでだね」
「聞いたのは私でしょうが肝心の私をのけものにしてもうあんたはもうっもうっもうっ!!」
とりあえず、収拾がつかないので全員でユミールをなだめにかかることにした。
「・・・位階、ですか?」
「そう、君達の冒険者カードにも記載されているだろう? あれのことだよ。」
「あれって聖職者の称号かなにかかと思ってたんだけど違ったんだ。」
どうやら、位階についてはこの時代は広まっていないらしい。冒険者だとなれないのか、冒険者だと高レベルにはなりにくくて位階を重ねれなかったのか。クラスとしてアコライト系列はありそうな気がするけど、腐敗してLv上げとかしてなさそうだし。
「位階は、自分のついている職業を極めたら、Lvもクラスもリセットしてやり直す事の出来るシステムだよ。以前のスキルや能力を所持したままでね。」
「それじゃあ、私達もその位階を重ねると言うことを行ったら?」
「理論上は私みたいにどこまででも強くなれるね。まあ、今のペースじゃ永遠に無理そうだけど。依頼を受けて討伐とか繰り返している程度では到底職を極める事なんて出来ないよ。狂ったようにモンスターをひたすら狩って狩って狩りまくらないとね。」
「・・・バーサーカーいたいいたいいたい!」
ぼそりとつぶやいたユミールの横脇をつんつんと突きつつ、位階について詳しく説明してあげた。私のカードは絶望どころの話ではないので見せなかったけど。
私が情報を皆に開示しなかったのは、現時点では教えたところでどうこうできない上に無茶をしてモンスターを狩って死にかねないからと説明をすると、思うところがあったのかみんな納得顔だった。クラスチェンジのことだけでさえあれだけ豹変していたから、しょうがない。
「ともあれ、私が黙っていたからと言って君達を強くする気がないと言うことはないからね。位階を重ねるにしてもちゃんとしたクラスについてからのほうが上げやすいし、皆をクラスチェンジや位階を重ねさせることにより、この時代の先駆者としてがんばってもらうつもりだよ。」
「そう、先駆者、先駆者ね。ふうん、わたしって有名人になるのかな?」
ユミールがにやにやしながらつぶやいている。最近は悪い意味で有名になってきていそうな気がするが、やぶ蛇になりそうなので黙っていることにした。
「そのような理由で、我々は当初の目的通りの旅をこなしていけば位階への道は開けるというわけだ。理解できたかい?」
『はいっ!』
旅の支度も整ったし、いよいよ次の転職石に向けて砂漠越えである。この地では歪みは観測されなかったけど、海が砂漠になるほどの地形の変化が起きている場所ならありそうな気がする。気を引き締めていこう。
私達の旅はこれからだ。
打ち切りエンドではありません。
1章はこれにて終了です。
閑話を挟んで2章に入りますのでよろしくお願いします。




