第15話 志姫、第二の転職石解放、人外の道を歩み出す
アカデミーの資料室内、そこで私達は地図を広げてうんうん唸っていた。
「私が知っている地図とは地形が違いすぎる・・・」
「志姫さんの見た地図って、適当に描かれた安物だったんじゃないでしょうか。アカデミーの地図はそれなりに正確ですよ。」
「1000年前の地図だったからね。」
「古い! 逆に貴重だわ・・・」
普通はたかだか1000年で地形がこんなに変わるはずがない。昔の大戦でどれだけ破壊が行われたのか、さすがに戦慄してしまう。
ユリアは転職石に関して、全て現存していると言っていた。ならば、プリライトみたいにちゃんと遺跡として残っているはずである。これから旅をしつつ各地の転職石で私の位階を解放しつつ、ユミール達を冒険者から転職をさせる、と。後々の為に転職石周辺の情報もある程度は調査しておかないと、転職石を一般に開放したときにトラブルを招きかねない。
パーティーメンバーにはまだ転職石の情報については話していない。私がどうにもこの都市の中で注目されている気がするから、下手な発言は出来そうにない。シーフ系の位階を解放すればある程度は気配等も察知できそうではあるが、この都市からは離れている。
パーティーの強化を最初に考えるなら、ユミールはマジシャン、エリシアとセティリアは剣士、ティアミーはシーフと言ったところか。たしか空中都市ジーズにはクエスト中にマジシャン転職石に通じる固定ポータルが開いていたはずだが、まだ稼働しているだろうか? いけるのならユミールはすぐなんだけど。
その次に近いのは剣士の転職石か。ここからプリライトの次に一番近い遺跡である貿易都市ユーデンから当時は船で行けたんだが、地図を見てみるとユーデン周辺は砂漠になっている。徒歩で砂漠はきつそうなのでなんらかの騎乗用の動物を入手した方がいい。あとでみんなと相談して決めよう。
問題は、シーフの転職石だ。あそこはダンジョンになっていたはずだが、今はどうなっているのか分からない。地図を見た限りそこは山があるんだけど、ダンジョンの入り口が山の下敷きになってたりしたらどうしょうもないぞ、これ。
これだけの正確な大陸地図は一般には販売されていないそうで、アカデミー内でこの地域周辺と、ユーデン砂漠の地図を購入した。ユーデン砂漠は素材の入手が豊富だそうで、地図と言うよりモンスター等の素材入手関連の分布図だそうだが。これはこれでありがたい。
自宅に戻ってから、みんなと改めて相談をすることにした。
「ユミールには少しだけ話したが、私の旅の目的の一つの各地にある都市の遺跡巡り、そこに君達の強化の秘密がある。」
みんなの目が光った。やはり興味津々だったようだ、今までよく問いただしてこなかった物である。
「それって、遺跡を巡れば巡るほど強くなるって事?」
「いや、そうではない。特定の遺跡に行けば、君達それぞれに見合った強化が一つずつされていくんだ。誰がどの遺跡に向いているか分かっているから、そのための移動ルートと周辺の状況を確認するために、地図を確認していたんだ。」
「そ、それで・・・誰からパワーアップをするのかな、するのかな?」
ティアミーよ、そんなきらきらした目で見ないでほしい、私のせいではないんだ。
「すまないが、ティアミーは最後になりそうだ。現地に行って様子を見てみないと分からないが、ティアミーの強化ポイントは場所が離れている上に、昔は平地だったはずが山になっている。強化するための手段はちゃんと現存しているとの情報はあったので、何とかなるとは思うんだが・・・」
「ええええ、そんな!」
うなだれてしまった。いや、悪いとは思うんだが、私にはどうしようもない。
「それじゃあ、まず誰から強化すんのよ?」
「それなんだが、うまくすればユミールがすぐ出来るかもしれない。不確実な移動手段を取るので、それが出来るかできないかを今から確かめに行こうと思ってるんだが、みんな大丈夫か?」
『いく、行きます!!』
「それじゃあ、ポータルで移動するので準備してきてほしい。」
みんなダッシュで2階に上がっていった。はしゃいでる子供のようである。ここでみんなをいじったりしたら袋にされそうだ、我慢我慢。
準備して戻ってきたみんなが急かしてくるので、さっそくポータルを出す。そんな急いで飛び込まなくても。苦笑して後に続いた。
帰ってきました空中都市ジーズ。
最初に降り立った時点でポータル用位置情報を登録して置いたが、まさかこんなに早く戻ってくることになるとは。とはいえ、本来ポータルは一度出すのに聖石を消費するんだが、位階が高い特典で聖石を消費せずに使えるから気軽にポータルは利用できる。
「ほへ~、遺跡ってはじめてきた・・・」
「何か、雲が低くないですか? 遺跡の周辺も何もないように見えますし。」
「ああ、ここは空中都市だからね。空にぷかぷか浮かんでいるんだよ。」
『空!?』
ふむ、こういうリアクションも悪くは無いな。感情表現豊かな人間は好きだ。このパーティーで良かったと思える瞬間である。
「まあ、みんな観光をしてみたいだろうが、とりあえず調査を済ませてしまおう。」
そう言って図書館の中にはいる。多少朽ちてはいるが、元が魔法で補強してあるのか、比較的遺跡の状態は良い方だ。
当時は人気の無かった魔法史のコーナーの奥にある壁際に隠し扉のスイッチがあったはずだが・・・、ああ、あった。スイッチを押してみるが反応しない。やはり壊れているのだろうか?
「どうやら、隠し扉のスイッチが壊れているようだな。」
「ええ!? じゃあ、私の強化はどうするの? 偉大なるマジシャンへの道は!? なんとかしなさい志姫いいいいいい!!」
必死の形相で私の首を絞めにかかる。ユミールの力程度では私の首を絞めるのは不可能だが、表情が怖い怖い!
「ええい、落ち着きたまえ。とりあえず、修復してみよう。」
マジカルステッキオブラブリーをアイテムボックスに収納し、小ヒールの準備をする。あれって装備して無くても魔力が制限されるのに気づいてしまったからな。
プリライトの遺跡の時と同じように小ヒールをかけると、図書館内が白く輝き、収まる頃には新築みたいな状態になっていた。まあ、一部穴があいてたりしたけど。
「い、いまのなに? ぶわーって光ったら周りきれいになってるんだけど!?」
「これは凄いですね。ヒールって建物も直せるんですか?」
「まあ、これが出来るのは私だけだよ。普通は無理だね。」
みんなは驚いてあちこちを見渡していたが、気にすることなくスイッチを押すと、『がこんっ』と音がして奥の通路が開けた。私が入るとみんな慌てて付いてくる。奥にはポータルが光っていた。良かった、ちゃんと移動できるようだ。
私がポータルに入ろうとしたら、ユミールが真っ先に飛び込んでいった。いや、これは私が先に入っても消えたりしないんだけど。なぜかみんなも次々に駆け込む。
転移した先は、ゲームの時と同じ転職石の置いてある転職の間だった。これも状態は問題ないな。帰りのポータルも開いたままだし、往復は問題なさそうだ。まあ、調査は後にして転職を済ませてしまおう。
「ユミール、これから君を本物のマジシャンにしようと思う。」
「本物! いい響きね、おねがいします。」
「この石に触れるとマジシャンへ転職するかどうかを聞かれるから、了承するんだ。」
私の話を聞いて、躊躇無く石に触れる。石が淡く光り、すぐに収まった。ユミールは呆然としている。
「ねえ、強くなるどころか、体がだるいんだけど・・・」
「単純な話だ。今の君のHPやMPが消耗している状態になるほど、最大値が大幅にのびているんだよ。”小ヒール”」
小ヒールを受けて、ユミールは目を大きく見開く。その状態でこっち見ないで、怖いから。
「冒険者カードを見てみるといい、違いがわかるさ。」
ユミールは慌ててカードを取り出し、みんなに見せた。
名前:ユミール=ディ=パリィ
種族:人族
クラス:マジシャン
クラス・位階:無し
所属クラン:無し
冒険者ギルド発行:ランクD
ステータスやスキルに関しては他の人には見えないが、クラスはちゃんとマジシャンになっている。成功だな。
「凄い・・・HPやMPが倍以上にふえてる。それに、く、クラスが・・・」
「マジシャン? 冒険者からマジシャンになってる!?」
「驚きましたね、ひょっとして、私達も同じようなことを?」
「もちろんだとも。エリシアとセティリアは剣士、ティアミーはシーフにクラスチェンジしてもらうよ。」
みんな大興奮である。特に転職したてのユミールはカードを眺めながらにやけが止まらないようだ。さて、私もさっさと済ませてしまおう。
私が転職石に触れると、ユミールの時とは比べ物にならないほどの光が発せられる。とはいえ、アコライトの時ほどの衝撃はなく、気絶しないうちに光が収まってくれた。
「志姫!? あんた一体なにしたのよ!」
「ああ、気にすることはない。さっきの図書館みたいに壊れないように補強をちょっとね。」
「そうでしたか、驚かせないでください。」
「はは、済まない済まない。それでは、ここを少し調査してから帰ろうか。」
『了解!』
みんな転職に夢中でジーズの観光のことをすっかり忘れてしまっている。まあ、いいか。
名前:志姫
種族:人族
クラス:アコライト
クラス・位階:マーチャント アコライトx15 マジシャンx7
Lv:70
HP:合計40541 内訳1834(+879+27510+10318)
MP:合計16010 内訳644(+169+9660+5537)
Str:合計514 内訳20+1(+53+300+140)
Agi:合計743 内訳30+1(+52+450+210)
Vit:合計696 内訳30+2(+4+450+210)
Int:合計1751 内訳76+1(+2+1140+532)
Dex:合計484 内訳20+1(+23+300+140)
Luk:合計464 内訳20+2(+2+300+140)
装備・武器
マジカルステッキオブラブリー
装備・防具
退魔のローブ
非破壊のオーガ製レザーブーツ
装備・衣装
アコライト基本僧服
スキル
固有スキル:聖女の光
旅人スキル:1+位階23
アコライトスキル:1+位階15
マーチャントスキル:所持重量限界値上昇Lv10 アイテムボックスLv10 売買交渉Lv10 露店開設許可Lv9
ヴィエル教スキル:コーリングゴッドLv1
マジシャンスキル:位階7




