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第10話 志姫、遭遇編。ユミールの友達は実在した!

 ユミールに連れられて訪れた場所はアカデミーがある場所からさほど離れていない場所にある、商業地区に入ってすぐにある2階建ての建物だった。外見からは何の店なのか分からない。


「ひょっとして不法滞在かい? 聖職者としては役人に突き出すべきだろうか。」


「違うわよ! この建物は友達の実家の商会でつかってない物を借りてたまり場として使わせてもらってるのよ。」


「無断で?」


「許可取ってるし、たまに依頼された素材納品してお礼したりしてるっての!」


 おお、さすがは自立している冒険者。友達の親にただ甘えてるとかじゃないのか。


「それで、ここに来たってことはその友達(仮)との待ち合わせなのかな。」


「(仮)はいらん! もう少ししたらアカデミーも終わるだろうし、そうしたら暇な人はここに集まるのよ。」


「へえ、アカデミー生ということは冒険者か。もしかしてその子達とパーティーを組んでたりするんじゃないのかい?」


「まだみんなは15歳になって依頼受けれるようになったばっかりだからEランクなのよ。だから、手伝いでたまに組むくらいで本格的なパーティーは組んでないわね。」


「E? 確かランクはFからじゃなかったからかな。」


「アカデミー生は未成年の段階で実習でFランクの依頼を行ったりするから、15歳になった時点でEランクから登録されるのよ。」


 通常は冒険者登録は15歳未満は受けることが出来ないらしい。アカデミー生は何かと優遇されているようだ。だとすると、17歳のユミールは2年でDランクまで上ってきたのか、あのスキルで。スキル構成の割に割と優秀なのかもしれない。


 建物の中に入って応接室のような場所で座って待つことに。女性だけなのかな? 妙に室内の空間が華やかだ。女子力が高いとも言えるけど、冒険者らしくはない。ユミールは貴族出と聞いてるし、建物提供してくれた友達は商会の娘と聞いてる。やはり冒険活動以外の私生活はこんなものなのだろうか。


 私が元の世界で聖女の仕事以外のプライベートでは自室のPCルームでたくさんのモニタに囲まれてネトゲに浸かってたのに、この差はなんだろう。ちい、パワーバランスが向こうに傾いた気がする。


 そんなことを考えていたら、外からきゃいきゃい騒ぎながら女子が数名、この応接室に入室してきた。みんな私より若干若そうだし、この子達が例の友達というわけか。実在、したのか・・・


「あっきたきた、やっほー。新しくできた相方を紹介するよ・・・・って、あんたなにやってるのよ。」


「ふふ・・・ふふふ・・・本当に実在したなんて・・・友達と言いながらテイムしたモンスターでも連れてきて、『友達の、正体見たり、化けものめ』とか言いながら私が成敗するプランが台無しだ。ああ、台無しだ!」


「あんたの中でどこまでわたしは寂しいやつなのよ! みなさいよ、みんな呆然としているでしょうが。いい加減その打ちひしがれたようなポーズやめなさい!」


 周りを見てみると、確かに呆然と言うか、ドン引きした表情で私たちのやりとりを見ている。む、いかんな。対人関係は始めが大事だ。


「君たちがユミールの友人か。私は彼女としばらくパーティーを組ませてもらうことになった志姫という。これからよろしくお願いするよ。」


「挨拶するならそのポーズやめてさっさとソファーに座りなさい、シッダウン!」


 いかんいかん、まだ動揺していたようだ。ユミールの友人達は目をそらして肩を振るわせていた。


「ぷっ、く・・・・・」


「ぶふぅ、あはははははははっ」


「ユ、ユミール、何二人で笑わせてくれるのよ。ぷっくくくっ」


 どうやら何かツボにはまったようだ。ウケが取れたのならまあ問題あるまい。ソファーに座り直し、くつろぎながら改めて自己紹介をしあった。


 友達は全部で3人で、全員アカデミー生の15歳、クラスは当然冒険者。名前はそれぞれティアミー、エリシア、セティリアでエリシアの実家がこの建物の所有者で、セティリアの姉がユミールの師匠だそうだ。全員貴族出身で実家つながりで仲良くしているらしい。


「ユミールはどうしてアカデミーに行かずにセティリアのお姉さんに弟子入りしてたんだい?」


「・・・波長があったのよ、なんとなくだけどね。」


「そういえば、姉さんと志姫さんってどことなく雰囲気似てますね~。」


「ということは、ユミールと志姫さんって相性ばっちり!?」


『きゃ~~!!』


 うむ、姦しい。私やユミールとはジャンルが異なる印象だ。とはいえ、仲良くでき無そうということはないので、うまく交友関係は気づけそうである。だがしかし、私をいじるというのならば反撃をさせてもらおう。


 私は懐からある物を取り出し、ちらりとユミールに見せる。それで理解したようで、ユミールはにやりと笑って頷く。そしてさりげなくティーカップを準備し始めた。


「そうそう、私の故郷の飲み物があるんだが、みんな一杯どうだい? 魔法で冷えてるし不思議な食感が楽しめるよ。」


 私の言葉に対し、さすがは貴族の面々。それぞれ興味を示してくれた。カップにBitchを注ぐと、しゅわしゅわと炭酸の泡が立つ。その様子に3人は大変驚く。


「え、これ沸騰してるんじゃないの? 冷えてないじゃない!」


「いやいや、カップを触ってみるといい。逆に冷たくなっているだろう?」


 セティリアとのやりとりを聞いて、ティアミーがカップに触れてみる。


「あ、本当だ。これ冷えてるよ!」


「ふふっ、ここは前衛の私から飲ませていただきますね。」


 エリシアは3人パーティーの前衛を務めているのだろうか。丁寧なしゃべりと見た目から私よりもプリーストっぽいんだけど。Bitchを口に含んで、その食感にまたしても驚く。


「これは・・・冷たいのに口に含んでもそのまましゅわしゅわしていますね。とても不思議な飲み物です。」


 その反応に、残りの二人もBitchを飲み、同じように驚く。特にセティリアは大層気に入ったようで、2回もおかわりした。


「このしゅわしゅわ気に入りました! 私たちのような淑女にふさわしい飲み物といえるでしょう!」


 その言葉を聞いて、ユミールは顔を伏せて震えている。愚か者め。策が完成するまで油断をしてはいけない。勝って兜の緒を締めよというものだ。


「そうですね。味に関しては食感にまだ慣れていないのでコメントしづらいですが、私たちのお気に入りとして常備するのもありですね。」


「見たこともないほど珍しい飲み物ですし、定期的に入手できればいいのですが。これはなんて言う飲み物なのでしょう?」


「うむ、これの名前はBitchだ。淑女である君たちに相応しい飲み物であるといえよう。」


 三人が一斉にカップを地面にたたきつけて割ってしまった。ユミールは大爆笑である。


 その後、爆笑をしているユミールを締めあげ始めたので、私は巻き込まれないように脱出をした。Bitchハメとユミールの締めあげで一石二鳥である。




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